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2022.01.04 the band apart "SMOOTH LIKE GOOD-BYE STUDIO COAST"

人生で初めて足を運んだライブハウスは、2年ぶりの復帰を飾る場でもあった。
そして、ライブのタイトルにもあるように、STUDIO COASTは今月をもって閉館する。
正直なところ、開演前どころか開催の1週間ほど前から様々な感情が混ざり合い、どう気持ちを作っていけばいいのかと苦労した。

2年前、足繁くライブハウスに通っていた頃のルーティンを思い出し、可能な限りそれをなぞった。地元の喫茶店で大サイズのコーヒーを飲み、煙草を3本吸う。行きの電車は座らない。音楽プレイヤーで、その日のバンド・演者の曲をシャッフル再生する。
そして、そのライブで演奏されたら嬉しい曲を何曲か思い浮かべる。私がこの日リストアップしたのは、

light in the city
stereo
BOOSTER

の3曲だ。結果は、見事に全外しであった。それもまた醍醐味である。

新木場に到着し、会場に向かう。
会場に到着し、ロッカーへ直行する。2階建のロッカーゾーンの1階部分が閉鎖されていた。
必要最低限のもの以外をロッカーにしまい込み、喫煙所を見つけ煙草を吸う。強風で火が点かずにいたところ、近くにいた黄色ニット帽のお兄さんがターボライターを差し出してくれた。喫煙所ならではのやり取りが懐かしい。改めて感謝したい。
吸い終わるとちょうど呼び出しも始まっていて、少しの間待った。七分袖のシャツ一枚でいるのは私ぐらいのものだった。中に入ってもそれは変わらず、あれこんな感じだったっけ?、と違和感を覚えもした。それだけ冬の新木場は寒いということだろう。トイレではいつも通り、コンドームの自販機がこちらを見ていた。
フロアに入ると、一気に懐かしさが襲い来る。番号が良かったのでどこに陣取るかを決める。ステージに向かって左側、一段登ったテラスのような場所。10年通って初めて立つ位置だった。見える景色が違うだけで、とても新鮮に感じた。
開演までの数十分、これも今まで通り、時折水を飲み軽く体を動かしながらBGMを楽しんだ。その頃には、不思議と平常心だった。

開演。
いつも通り入場のSEはなく、ステージに4人が立つ。
聞き慣れたイントロが流れ、Still Awakeから始まった。全ての楽器が入ってくる瞬間、決壊しそうになる思いを堪え、それを楽しむための燃料に変換するイメージを整える。そこから、free fall→I love you Wasted Junks & Greensと続いていく。定番の曲から始まってくれたのは本当にありがたく、これによって曲への乗り方の感覚をほぼ完全に取り戻すことが出来た。3曲目で川崎さんのギターのストラップが外れていた。大事なライブでトラブルが起こる、と以前話していたのを思い出す。4曲目は知らない曲だった。O.Bongという曲らしい。月並みな表現になるが、バンアパ!って感じの曲だった。
そして、曲順まで含めて流れを覚えているのはここまでである。これ以降は、のめり込んだ中での断片的な記憶だ。
強く印象に残っている曲を並べていく。
・Mercury Lampe
とても好きな曲。久しぶりにライブで聴いた。淡々と進んでいき、一気に激しくなってからのギターソロ。ギターフレーズを泳ぐ感覚が楽しい。歌詞の中の、「Indifference is not a virtue.」というフレーズは、今なお私の人生において大切にしている言葉だ。
・MTZ
リリースされた音源を聴いて以降、この曲をライブで聴いた際に全力で楽しめるようにと聴き込み続けてきた曲。洪水がごとく流れていく音。変則的なリズムが心を昂らせてくれる。
赤々とした照明も素晴らしく、歌詞を見事に映えさせていた。
「燃える 赤く 鋭く 輝く」

密度の濃い時間は終わってしまえば早かったように感じるが、過ごしている間はそうは感じないという不思議さがある。今回のライブもまさにそれであり、それでも、夜の向こうへという曲を最後に本編が終わった。
アンコールは、K. and his bike。いつ聴いても素晴らしい。ラスサビからアウトロにかけての部分は、眼鏡を外して頭を振った。バンアパの特筆すべき点は、特にこの曲の、曲が終わった後に全ての楽器で合わせる部分だ。呼吸の合い方が素晴らしく、それに伴って轟くような音に飲み込まれる時間がある。私はこの短い時間に立ち会うためだけにだとしても、お金を払う価値があると思っている。曲自体はもちろんのこと、それだけ素晴らしい表現がそこにあるのだ。
ダブルアンコールは、When you wish upon a star。星に願いを、のカバーである。当時ライブで聴いたわけでもないのになぜか、ダブルアンコールといえばこの曲というイメージが強い曲。アウトロの盛り上がりよ!大袈裟でなく、ライブを通して受け取った大いなる活力を、確信に変えてくれた。

そして、終演。
名残惜しい。そして、その感覚すらも懐かしい。
バンアパは、ステージからはけるとき、川崎さんがギターをスタンドではなくステージに置くことが多い。その後に残る音を、音響の人がしっかりと聴かせてくれる。その音がまた、耳に残るのだ。ライブ終わりのあの、よく聞こえなくなった耳に。久しぶりのライブがバンアパで、本当に良かった。


MVなど

02.free fall


03.I love you Wasted Junks & Greens


05.photograph


07.ピルグリム


09.誰も知らないカーニバル


12.Eric.W


15.Can‘t remember


16.MTZ


17.ZION TOWN


18.DEKU NO BOY


en1.K.and his bike



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