新木場STUDIO COAST

新木場STUDIO COASTが閉館する。

とても寂しい。この一言に尽きる。

訪れたうちの半分以上、ステージに向かって右最後方のエリアに陣取っていた。だから、そこから見た光景は、誰よりも鮮明に残っている自負があるし、忘れることはないだろう。


そして、言葉にならない様な、色々な想いもある。

それらは今すぐには、もしかすると生きている間にも、言語化出来るか分からない。だから、せめて思い出をここにしたためておこうと思う。


前提として、私はライブに行くにあたって、記憶に残そうといういう試みを捨てている。

目の前の事象、一つ一つの瞬間とぶつかり合うこと、これを第一としている。何度か、ライブの感想を残す事を念頭に臨んでみたが、思い出を前提としない姿勢の方が、私としては楽しめたからだ。

その空間を全力で楽しんだうえで、記憶出来ていたことを思い出として持っていれば良い。そういった姿勢である。だから、全てを詳らかにすることは出来ない。むしろ、STUDIO COASTに足を運んだ回数を考えれば、今から書くのは、そのほんの一部である。

残っていてくれた記憶たちを、詳細はインターネットに残った資料で補完しながら、バンドごとに書き残していこう。


・藍坊主

忘れもしない。

2008年末、私は初めてライブハウスに足を踏み入れた。

藍坊主は毎年末にイベントを行うのだが、この回は振り返り的な意味を持つ回だった様で、開演前に過去の映像が流れていた。

今振り返れば、なかなか珍しい状況である。しかし、この日の珍しさはそれだけではなかった。

フロアが暗転し、メンバーがステージに立つ。1曲目に演奏されたのは、THE BLUE HEARTSのリンダリンダであった。度肝を抜かれましたね。逆にこれが初めてで、とても良かったのかもしれない。全くもって王道ではない始まり方!

後に、年末イベントではカバー曲が演奏される、という慣例も知ったが、ど頭に演奏されたのは私が知る限りこの回だけだ。

一度しか味わえない、初めてのライブハウスという経験が、このライブで本当に良かったと思う。


もう一つ。

私が今まで数多くのライブに参加した中で、唯一、途中で体調を崩して一時撤退を余儀なくされたライブがある。

それが、2012年に同会場で行われた、藍坊主の年末ライブである。2曲目に演奏されたサンデーモーニングのイントロに合わせて、普段使わない左腕を振り上げたところ肘に激痛が走り(膝の内側を打ちつけた際に起こる感覚)、視界が徐々にブラックアウトした。当時働いていた本屋は年末が激務であるため、1曲目の段階で右肩に上げにくさを感じていた為にこうなった。同行者に付き添われ、一応自分の足で退出することが出来た。

その回は、普段やらない曲が多く演奏されるといった演目であり、開演前に私は、「深く潜れ」と「ベンチで手紙を読む老人」という2曲が演奏されるはずだと豪語していた。そして見事、外で私が座り込んでいる間に、両曲ともに演奏された。曲が聴こえた瞬間に戻ろうとしたが、医務係の人より、「死ぬぞお前」と止められ、泣く泣く断念し、30分ほどを外で過ごした。

当時はね、悔恨とも憎悪ともつかない感情が渦巻きましたよ。それもまた、今となっては良い思い出ですわ。セトリ当てで、こんな的中のさせ方させたやつは、そうはいないでしょ。

この出来事以降、それまで以上に周りに気を配るようにしている。


・THE BACK HORN

マニアックヘブンや、ツアーファイナルといった比較的でかい公演が多かった。

その中でも、運命開花というアルバムのツアーファイナルであっただろうか、初夏か梅雨ぐらいの時期の公演。私がいた辺りの空調が死んでいたのか、過去体験したことのない暑さだった。終演後、フロアの床が人々の汗で水浸しになっていた光景は、今でも思い出せる。


・the band apart

このバンドも、コーストで多く見たバンドだ。THE BACK HORNとどちらが最多だろう。

忘れもしないのは、2019年11月。その日は珍しく、わりと前の方にいた。しかも左。普段とは逆のエリアだ。いつもの様に、特に出囃子などもなくメンバーが登場し、楽器を持つ。私は、周囲にいたロングスカートとの位置関係に神経質になりながらも、曲の頭のタイミングを伺う。一番緊張する瞬間だ。

そして!まるで曲終わりの合わせかの様な轟音から始まる!これは何の曲だ!まさか?

そう!私が狂うほどに好きな、「light in the city」!イントロ1音目が鳴り響いた瞬間に消し飛ぶ、歓喜以外の全ての感情!曲間、10秒ほどクラップする部分があるのだが、左手の腹が真っ青に腫れ上がった。


・凛として時雨

RADIO FISHって覚えてますか?オリラジの人達がやってたユニット。

それとの対バンがあることを知り、興味本位でチケット申し込んだら取れた。

時雨のライブはとても久しぶりであったが、相変わらずの化け物じみたパフォーマンスは圧巻だった。

RADIO FISHは曲については覚えていない。ただ、やはりと言うか、MCは本当に凄かった。喋りのプロの人達、というのをライブハウスという空間で見られたのは、貴重な体験だった。


・BUMP OF CHICKEN

2019年、aurora arkツアー中のライブハウス公演のチケットを豪運で当てた。まずライブハウスの公演であんなにキッチリとした入場が組まれていた経験がないので、それにビビった。

この公演はとても貴重な体験で、私は世の中の全てのバンドはライブハウスでこそ最も映えるものだと考えていた。

しかし、そうではないのだ、ということを教えられた。BUMPに関しては、間違いなくアリーナやドームでの方が様になる。

それがどういう理屈なのか説明できないし、そもそも理屈の話ではないのだろう。もちろん、公演自体に不満があったわけではないし、何より私は楽しんでいた。そして、一つひとつの楽曲に対して、ライブハウスでの聴こえ方があり、それを心地よくも感じていた。それでも、同じツアー内で、西武ドーム・東京ドームと参加していて、その事を強く感じた。

得難い体験をさせてもらった。


思いつく限りのことを書いた。

訪れた回数を考えれば、やっぱ全然覚えてないもんですね。ただ、後悔はしていない。


改めて、ライブハウスがなくなる事は寂しい。

東京だと、zepp TOKYOや赤坂BLITZ、遡れば渋谷AXなど、大きめのキャパを誇るライブハウスが無くなった。2〜3000ぐらいのキャパであろうか。

この規模のライブハウスが減ることに対して、危機感がある。しかし、今の私にはライブに参加して金を落とすことしか出来ない。他にあるとすれば、クラファンなどがあれば参加することだろうか。

何にせよ、早くライブハウスに、気兼ねなく参加出来る日々が来ますように。


STUDIO COASTで過ごした時間は、これからも私の中に、深いところに残り続ける。

思いや言葉として表層化しないものも含めて、その全てが私を構成し続ける。

本当に感謝の思いしかない。そして、上手くそれを表せたのかと、不安しかない。

最後に一つ。


ありがとうございました!


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