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キッチンポーター

四日目、いよいよドーバー海峡だ。情報で、税関では観光目的で入国すること。観光が終わったらすぐ出国すると説明すること、と入智恵されていたので、その通りにしたら、半年間のビザをもらえた。その当時、イギリスは外国人労働者で溢れていた。イギリス人の職場を外国人が脅かしていた。斜陽の国、イギリス、【黄昏のロンドンから】と、言うエッセイが日本でベストセラーになるほど。地下鉄のストライキ、飛行場のストライキ、消防士のストライキと、イギリスは病んでいると言われた。その当時のロンドンの人口の75パーセントが外国人と言う、大国の国際都市の問題も抱えていた。そんなところへ私のような、潜りで働こうと言うやからが入って来るからたまらない。ロンドンに着いた日にまんまと、ホステルへの就職を決めた。安くても、きつくても、部屋付き、食事付きで明日から働ける。アテネで知り合った日本人からの情報で生き延びることができた。半年間のビザがあるから不法滞在にならない。しかし、働くことは、労働許可証がないと働けないはずだ。ここに、裏がある。ここで、労働許可証を申請する。申請に約半年かかる。申請中は法律に触れない、と言う仕組み。ホステルの、方も安い賃金で人を雇える。日本人は評判がよく、即、採用だった。結局、半年後、労働許可証は降りず、日本へ帰国した。一年七ヵ月の旅は終わった。

その頃だったと思う、鉄の女サッチャーがイギリスを立て直したのは。

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