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「ジョリッツ登場」セルフライナーノーツ

サエキけんぞう、泉水敏郎、吉田仁郎、亀、オカジママリコからなるバンド、ジョリッツは2015年末にハルメンズXのプロジェクト内バンドとして結成。その後ハルメンズXプロジェクトが終了以降もジョリッツの活動は独立して継続。
2017年10月、1stアルバム「ジョリッツ登場」発売。

アルバムのセルフライナーを書きたいなと思っていたのですが、なかなか書くことができないまま年が明けてしまいました。
ようやく落ち着いて書けそうなのでじろうがバンマス、サウンドプロデューサー的な視点で全曲解説するよー。
(コンセプト的な解説とか詞とか世界観に関してとかはサエキさんに聞いたほうがいいです)


全体的に。
サエキさんの作詞とボーカルは特別なので置いとくとして、それ以外でジョリッツというバンドを考えた時に、サウンドでガツっと前面に出すべき音は間違いなく泉水さんのドラム、その次にマリコちゃんのベースです。
泉水さんの過剰にドコドコいうドラムサウンドはもはやジョリッツの記号みたいになっているし、そこにマリコちゃんの流れるようなベースが絡むと、それだけである程度バンドのサウンドキャラクターが保てるんですよね。(じろうの作る曲がベースのリフが主軸の曲が多いのもその一因かも。)
じろうは高校生ぐらいの時から、泉水さんがドラムを叩いておられる音源を多数聞いてきました。でも、ライブでの泉水さんのタムのあのドコドコ感がストレートに録音されてる音源って意外と無いような気がして、なんとかあの感じをそのまま音源に出来ないかなと、そういうことをすごく意識して作りました。

あと、ハルメンズXの内部バンドだったときは、シンセがいっぱい入ってる他の楽曲群へのカウンターとしての役割がありました。なのでツインギターで70年代風でサイケでパンクっぽいロックやってればバンド的なアイデンティティが保てたのです。
それが単体でアルバムになった時に、ハルメンズから離れた場所でサウンド的にどうバンドとして自立するかみたいなのは結構問題でした。
付加的にシンセを入れるにしても、ハルメンズ的なものはなるべく入れたくないなーとか。ハルメンズという名前からできるだけ独立させたかったのです。

ちなみに各曲、シンセとかバイオリンとかピアノとか、バンド編成以外の音が入ってる場合は100%じろうが弾いてるorじろうの打ち込みです。
レコーディングは、サエキさんのボーカル以外のベーシックトラックを全員同時に四谷アウトブレイクにて録音。それ以外のボーカルコーラス録り、オーバーダブ、差し替え等はすべて日吉のじろうゆスタジオです。
録りのエンジニアはアウトブレイクの録りだけ佐藤店長。後はミックスも含めて全部じろうっす。
マスタリングは中村宗一郎せんせー。

というわけで一曲目からくわしく。

1.すり砕く
アルバムの収録曲の中ではかなり新しめの曲。ジョリッツで一年ぐらい活動してきてハルメンズXも終わったし、次どんな曲作りましょうかってサエキさんと二人で考えてできた曲です。
その思案中に90年代から00年代のダンスミュージック、クラブミュージックみたいなものを二人でいっぱい聞きました。その結果、PCでやるとすぐできちゃうような、一定の反復のビートを突然カットアウトする気持ちよさとか、違和感のあるものが唐突に挿入される気持ちよさとか、そういうものとバンドならではのライブ感をうまく融合できないかなと試行錯誤の末に産まれた曲です。
あと、この曲ができた頃にはサエキさん以外の人もできるだけコーラスしたほうがバンド感でるし良いねという感じになっていて、イントロみたいなとこはじろうとサエキさんで歌ってますね。

2.カピバラ座
サエキさんと亀ちゃんが二人でベーシックなメロとかコードを作っていて、なんかアイデア出したりまとめたりしてほしいって言われて途中から呼ばれて3人で作ったのがこれです。
イントロのリフとか、いきなりサビで雰囲気変えましょうとかそういうアレンジ的な部分はみんなで一緒に作ったんじゃないかな。
ピアノとかコーラスとかはその後レコーディング始めてから亀ちゃんがウチにきて二人でアイデア出したりして。
じろう的には超難産な曲だったし、未だに難しいです。

3.ジョリッツ登場
ライブの登場SEみたいなのを作りましょうってサエキさんと相談してて、方向性だけ一緒に決めてだいたいじろうが勝手に作りました。
亀ちゃんとマリコちゃんにそれぞれ1日ずつじろうゆスタジオに来てもらってオーバーダブ。泉水さんは未参加かと思いきや、実はここ二年間ぐらいでじろうが録音した泉水さんドラムブレイク集が結構な量ありまして、所々のフィルとかスネアはそういうのを利用しています。ずっと鳴ってるキックももしかしたら元は泉水さんかも知れないす。

4.STAPトゥギャザー

ジョリッツのキラーアンセムとして君臨してるこの曲。作ったのはまだハルメンズX「35世紀」の収録曲をサエキさんとガンガン作ってるころ。サエキさんがじろうゆスタジオに着くなり「小保方さんの応援ソングを作ろう!タイトルはSTAPトゥギャザー!もういまタイミングを逃したら作れないから今作るしかない!」。その日のうちに大体構成とメロは決まって、ふたりともすごく満足したのを覚えてます。
次の週にはもう歌詞がほぼ出来ていて、すぐに仮のボーカルを録音。めっちゃ面白くて録音中もずっと笑ってましたねー。サエキさんの歌詞はすごいなーとこの日改めて再確認。
コーラスは泉水さん以外全員でやってんのかな。この曲で帝子ちゃんの声が入るとサエキさんの声や歌詞と相まってすごく気の抜けた感じに聞こえて、それがまたユーモラスで面白いんですよね。帝子ちゃんの声は本当に最後の最後に入れてもらいました。
あと、マリコちゃんが思った以上にノリノリで自由にコーラス入れてくれたんで、かなりそれをフューチャーしました。ディレイで回したりして。
最後まで残ってる「あーー!」って声はマリコちゃん。

5.ジャム草原 
6月に泉水さんがお休みのライブがありまして、それにかこつけて一度だけフォークジョリッツというのやりました。で、いい機会だからそれのために曲を作ろうということに。
とはいえフォークというのは名ばかりで、アコースティックでやりたい感じのアイデアを自由にポンポンサエキさんと出し合って、まりこちゃんや亀ちゃんとも合流して4曲ぐらい作ったのかな。そのなかで「フォークトロニカっぽいやつ一曲やりましょう」ってじろうが勝手に作っちゃってサエキさんに後から詞をつけてもらったのがこれ。なので一番最初のデモはじろうがデタラメの英語で歌ってるんです。
大体サエキさんの歌詞世界みたいなコンセプトが先にあって曲を作り始めることが多い中で、この曲は完全に曲先。新鮮でした。
そういう経緯があって出来たので、この曲は泉水さんの音は入ってないのです。

6 あたしヴァージン(ジョリー・バージョン) 
これはもともとハルメンズの未発表曲。81年だか82年だかにサエキさんと泉水さんの二人で録音したドラムだけのテイクが残っていて、2016年夏にサエキさんの記憶を元にじろうがコードを付けたりアレンジしてサルベージしたのです。既に「ハルメンズXの予言」というミニアルバムに既に収録されていますが、今は完全にジョリッツのレパートリーになっているので入れることに。
最初は完全新録の予定でベーシックトラックをバンドで新たに録り直したんですが、いまいちしっくりこない。それでこちらのバージョンのベースだけをマリコちゃんに差し替え、ミックスをやり直したり尺を調整したりとマイナーチェンジを経てこのバージョンになりました。
そういう経緯で、アルバム中この曲だけはハルメンズっぽいローファイなアナログシンセがいっぱい鳴ってるのです。

7 ほら穴ガール
これ、実はジョリッツで最初期に作った曲。まだじろうが泉水さんと一度も演奏したことない頃にサエキさんから「泉水さんはこういうドラムが実は得意だし似合うんだよ」というお話があり、16ビートのディスコっぽいやつというテーマで二人で作りました。ん、1人で作ったっけな?なんか覚えてないな。
音源化する時にどんな音を足すかで一番悩んだのはこの曲ですが、一番成功したのもこの曲のような気がする。70年代はじめの泥臭い頃のアースとかを参考にしてカリンバっぽい音入れたり、民族っぽいパーカッション入れたり、サエキさんの歌詞のイメージに沿う形でアレンジしました。

てか、サエキさんがこれとかSTAPとかを「35世紀」に入れないのは何故なのか当時はよく分からなかったんですけど、バンドとしてのメッセージ性の強い曲はあえてアルバム用に外してたんだろうなと後からようやく気づきました。

8.フリー・トーキング

唯一のハルメンズカバー曲。みんな大好きな曲ですよね。ハルメンズバージョンやら戸川純さんがライブでやってるバージョンやら、色々他のバージョンがありまくるので、それらと被らない雰囲気になるといいなあと思って作りました。
バイオリン入れてみたり、アコギをじゃかじゃか弾いたり。とにかく最初にいろんな音を入れまくってMIXの時にミュートしました。マンドリンとか笛とかトイピアノとかシンセもとか、もっといろんな音が入ってたんですが跡形もないですね笑。
踏切の音から始まるのはただの思いつきです。「インスピレーションこそアートの基本です。遊びは大事ですものね。」

ちょうどアレンジしたりMIXしたりしてる頃に、森友学園が国会で問題になっていて、教育勅語とかそういう単語が出てくる歌詞なので、改めて歌詞をまじまじと読んだりしました。あらためて泉水さんのこの歌詞すごい。曲もすごい。

ちなみに、このサイトにこの曲に関する泉水さんのコメントが載ってます。

9 亀のロマーン(帝子さんバージョン)
ハルメンズX「35世紀」にも入っていて、現在もライブのハイライトチューンになっているこの曲ですが、新アレンジで収録しようということになりました。でもマイナーチェンジだとつまらないので、できるだけ大胆にアレンジし直そうかと。
もともとサエキさんと帝子ちゃんのデュエット曲でしたが、サエキさんのボーカルはこの際全消し。それどころか帝子ちゃんのボーカルテイクだけを残して他の音は全消し(笑)コードも全取っ替え。ぜんぜん違う曲に仕上がったと思います。**
こういうアレンジで聞くとメロの良さとか歌詞の良さが浮き彫りになって、「あ、この曲すごくメロも歌詞もいいんだな」って改めて思いました。亀ちゃんサエキさんに拍手。

じろうが完全に一人でリアレンジの作業をしたので、帝子ちゃんの声以外は全部じろうが担当です。ベースもじろうが弾きました。

10 スワイプメン(リアル3区インセインバージョン)
これもハルメンズX「35世紀」世紀に入っていた曲です。「35世紀」の特典でリアル3区の声をコラージュしまくったリミックスを勢いで作ったのですが、そのこと自体すっかり忘れてました。それを今回作ってる最中に思い出したんですよね。で、聞いてみたら思ってた以上にかっこいい。
もともとの「35世紀」に入ってる音源でもベースはマリコちゃんが弾いてくれてるし、リアル3区には亀ちゃんが居るんで亀ちゃんの声も入っています。あとは泉水さんってことで、泉水さんのドラムをガシガシ波形で足していく作業をしてリズムにエッジを立てていった感じです。

「スワイプメン」も「私ヴァージン」と同じくベーシックトラックを新たに録音していたんですが、それよりこっちのほうがいいですよねとサエキさんと相談してこちらを収録することになりました。

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すごい長くなってしまったけどこれで。

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