流入都市・渋谷の帰属意識について 〜ハロウィン問題と、代々木公園バスケコートという成功例

渋谷ハロウィンはどうなる?

渋谷ハロウィンでさまざまな問題が起きた。渋谷区の住民で、外からやってきた人が問題を起こしてる、迷惑だ、という人も多い。

渋谷で道端にゴミを捨てるひとは果たして自分の親戚の家の前でゴミを捨てるのだろうか。捨てないと思う。

もちろん根本的にブレないモラルがしっかりあって、人のことを思いやることができる人は捨てないはず。でも現実にはゴミで溢れている。他の誰かも捨てているから、といって安易にゴミを捨ててしまう人がたくさんいるのが現実だ。

なぜか。渋谷という街に対して帰属意識を持っていないから。愛着がないから、というのが大きいと思う。自分の大事な場所ではないのだ。

来年はどうする?

渋谷という大きな空間で、ハロウィンというイベントにおいて、流入者に対していきなり帰属意識をもたせるのは難しい。

来年は渋谷ハロウィンは中止、という声も聞かれるが、そもそもイベントではなく勝手に集まってくるのだから、区が中止だ!と言ったところで効果はないと思う。

かといって、渋谷をハロウィンのとき封鎖すればよいか。1週間も夜中にあの付近を人が入れないよう封鎖するのがよいのだろうか。中心地を封鎖しても結局付近に集まるだけで警備が薄いところに集まってしまい、悪化するだけだと思う。現在のように集まる場所がわかってるというのは警備を集中できるので好都合だ。

来年のハロウィンでは、帰属意識がある人たちが集まるようなイベントを街全体で企画することが大事と思う。

現在、渋谷に愛着のある人たちはハロウィンで交差点やセンター街など渋谷の中心に行くのを避けることが多い。結果、帰属意識の薄い者ばかりになり、無法地帯になってしまった。要所でイベントを開催することによって、帰属意識が高い人を集める。 大事なポイントは、有名人・芸能人を呼ぶのではなく、渋谷という街に根ざした活動を普段からしている人がオーガナイズ、出演することだ。すでに人が山ほどいるので、これ以上人をむやみに集める必要はない。それよりも渋谷に愛着がある層を集めたほうがよい。


代々木公園バスケットボールコートという成功例

(photo: Nobuhiro Fukami)

帰属意識が強い場所

ハロウィンでの渋谷中心地とは反対に、ここ渋谷にも外からの流入者がほとんどにもかかわらず、強い帰属意識を持っている場所がある。

代々木公園バスケットボールコートだ。

2005年にナイキジャパンにより寄贈されたこのコートには人種・国籍・年齢さまざまなバスケット好きが多方から集まってくる。平日は学校帰りの中学生がプレイしたり、朝は誰もいないので熱心にシュート練習にはげむ地元の人もいる。特に週末はプロ選手も来るくらいハイレベルなゲームが行われている。

日本の公園においてこの場所がユニークなのは、ここが管理された施設ではなく、あくまで公園の砂場やすべり台と同じ存在であり、オープンな場所だということだ。コートの管理人はいない。

管理人がいない場所に、たくさんの人が集まって真剣勝負のストリートバスケをやっている。外国人も多いし、タトゥーががっつり入った若者もいる。

常に誰かがいて管理しなくて大丈夫なのだろうか。

それが大丈夫なのだ。この場所は、このコートを何よりも愛するバスケットボーラーたちが誰に頼まれるでもなく、守っている。例えば、ゴミをそこらへんに捨てるやつがいれば、注意する。ケガしてしまうような危険なファウルをするやつがいれば、注意する。ゴールのネジが緩んでいるな、と思えば、この場所でトーナメントを開催している主催者にメッセージする。そういう意味では、ALLDAYというイベントを通じてセーフティネットが確立されている、といえる。

このコートを大事に思う(=帰属意識のある)バスケットボーラーたちによってうまくいっている。

違うカルチャーを体験できる場所

たまに、一部の人たちが占有してるのでは?という心配の声も聞かれるが、そんなことはない。

このコートは、老若男女すべての人にオープンだ。まず、2面あるので自分のレベルにあった方のコートでプレイできる。さらにいうと、初心者でもレベルの高い方のコートでプレイしても全然OKだ。初心者であってもリバウンドやディフェンスをがんばったり、活躍の場があるのがストリートボールの面白いところだ。全力で走る、飛ぶ、守る。とにかく一生懸命やっていれば、それに文句言うやつはいない。中途半端に上手いのに、力抜いてやってるやつよりよっぽどリスペクトされる。

一つだけこのコートでプレイする条件がある。それは自分から手を挙げて表現することだ。黙って見ていても誰も誘ってくれない。プレイしたい!と勇気を持って手を挙げてみよう。レフリーがいないので、ファウルも自己申告だ。ファウルをされたら自分で言わなければいけない。

謙虚に、声をあげないことが美徳という文化が日本にはあると思う。そういう意味では、この代々木コートは完全にアメリカのストリートボールカルチャーが根付いている。自分で自分を表現しなければいけない

どっちが良いとかそういうことではない。日本にいながら、そういった違う文化を体感できる希少な場所なのだ。


ひとが集まる街、渋谷

脱線してしまったが、なぜ代々木公園のコートが聖地となり、大事な場所となったのか。

はじめに、渋谷区の状況を説明したい。渋谷区はそもそも外からの流入が多い区だ。区民が20万人であるが、昼間人口が約55万にもなる。渋谷区に住みながら区外に働きに出る人は約5万人なので、40万人が流入していることになる。流入のおかげで経済が潤い、税収も上がるということはあるものの、そもそも20万人の区民で成り立っているので、すごく単純化すると20万人で60万人を支えている形になる。

特に先祖代々渋谷に住んでいる人からすると、気づいたら人が増えてしまい、昔は静かでよかったのに、と思うかもしれない。

既住民、新住民、そして流入者(区外から流入してくる渋谷区在勤・在学者、そして買い物や観光など遊びにくる人)。

この3者。さらには、昔からの文化と新しく生まれる文化。これらがどうやって共存していくか。

ナイキジャパン、そしてあのマイケル・ジョーダンによって美竹公園ではそれらの問題が露出した。MC MAMUSHIのコラムを引用したい。

ただ、このジョーダンコートは随分と苦労したプレイグラウンドだった。というのも、ジョーダンコートは渋谷の喧噪から一本外れた比較的閑静なエリアにあり、当時は周りに住宅が多かった。近隣住民からの苦情というやつは言葉以上に破壊力がある。ドリブルの音がうるさい、声がうるさい、そもそも見た目が怖い(当時BBOY全盛時代、みんなサイズは5XL)など自分よりも倍以上も歳上の渋谷在住者にどやされる。上裸になるな、裸になっていいスポーツは相撲だけだとも言われた。理由はなんでもいい、とにかくここでプレイするボーラーは近隣住民から全力で嫌われた。コートの管理を担当していたのは現在のALLDAY 5ON5 BASKETBALL TOURNAMENTの主催でNPO法人のKOMPOSITION。FAR EAST BALLERSを中心としたボーラーたちと管理者のKOMPOSITIONとで共同して、渋谷区の子供向けのワークショップを毎週末開催したり、積極的に公園のゴミ拾いをするようになった。BLOOPERS REWIND -バスケバカMAMUSHIによる今週の大バカ野郎- vol.45より 


代々木コートの誕生、そして聖地に

しかし、この問題は完全に解決することはなく、そうこうしているうちにナイキジャパンが代々木公園にバスケットボールコートを2面寄贈した。

このとき、ナイキジャパンと渋谷のNPO法人KOMPOSITIONは、ただコートをつくっておしまい、とはしたくはなかった。オープンでいつでも誰でも使えるコートだからこそ、利用者みんな一人一人がこのコートを自分の大事な場所と思って使ってほしい、と考えた。

そこでできたのが、ALLDAYという5on5バスケットボールトーナメントだ。人種・国籍・年齢・性別一切不問。8チームではじまった東京No.1を決めるこのトーナメントは現在14年目、40回を超え、参加チームも60チームとなり、日本を代表するストリートボールトーナメントとなった。

今年8月には、NBAのラッセル・ウエストブルックが来日し、富樫勇樹、竹内譲次など日本代表選手たちがALLDAYオールスターチームと対戦。日本バスケの歴史に残る日になったと個人的には感じている。

このALLDAYというイベントを通じて、このコートの利用者みんながまるで自分の庭のような、帰属意識を持って使ってくれている。

だからゴミをそこらへんに捨てないし、そういう行為を注意する。

代々木公園バスケットボールコートは世界中から人があつまる流入都市・渋谷区のなかのひとつの成功例であり、そこには、ハロウィン問題などこれからも東京が直面していくであろうさまざまなことへのヒントがあると思う。


ALLDAY

ALLDAYのヒストリー



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