その日、オットは思い出した。前にも同じ光景を見たことを。

いつものカフェが満席だったためルノワールで仕事をしていたオットは、隣の席の人の行動に釘づけになった。隣人はテーブルの上いっぱいに、履歴書を広げていた。次に5円玉を取り出した。さらにヒモのようなものを5円玉に結びつけた。そして

履歴書の上でダウジングが始まった。

実は数年前にも、オットは「履歴書の上でダウジングする人事部長」らしき人を見ている。
まあ気持ちはわからんでもない。最終選考に残った人たちの経歴というのは、ほぼ横並びだろう。どれも良さそうだし、どれもダメそうだ。年齢や出身地まで似ていたら、あとはもう「名前が好き」とか「顔が気に入らない」とかの、仕事と関係ないところでしかジャッジできない。

そこで、ダウジングだ。ダウジングとは「土の上で道具をかざし、地下に埋まってる水脈や貴金属の鉱脈などを発見する手法」である。履歴書の上でやれば「弊社の金脈となる能力をもつ人間」を発見することができそうだ。なんとなく神の御告げっぽさもある。仮に失敗しても自分の責任ではなく、ダウジングのせいにもできる。いいことづくめではないか。

素人目にはこっけいに見えるものが、業界では常識だったりするものだ。履歴書ダウジングもバカげた笑い話かと思いきや、人事の世界では「あるある」だったりするかもしれない。そろそろ「5円玉を揺らすサムシングを練りこんだ履歴書」を開発する頃合いなのかもしれない。スタートアップを考えている人はいませんか。今、時代はダウジング履歴書だぞ。

さてダウジングといえば、土の下。土の下で育つ根菜が美味しいことは、みなさんもご存知の通りだ。特に冬を代表する根菜といえば、大根をおいて他にはない。

そこで今日は私のライフワークである「野菜の解体新書」から、大根のやり方をご紹介しよう。家庭の構成人数が減っていることと、重い荷物を持ち帰りたくないことから、大根はせいぜい1/2本、もしくは「買わない」という選択肢も多いと思う。うん、疲れてる時は、私だってあんな重くて長いものは持ち歩きたくない。

だが1本丸ごと買っちゃえという勢いがつく日もあるだろう。そんな時は、こうやって大まかに解体すると、キレイに食べつくすことができる。

葉っぱに近い方から、ざっくり1/4ずつに分けて考える。1番上の1/4は筋っぽいが辛味はなく甘いので、大根おろしにしてしまうのがいい。肉や魚などを焼いたのに添えるだけでもいいし、この季節は汁ごと鍋にしてしまうと「みぞれ鍋」「雪見鍋」などと風流な料理になる。

次の部分は1番みずみずしく柔らかい。大振りに切って煮物にするならこの部分。おでんに入れたり、スペアリブ等の骨つき肉とスープにすると最高だ。もちろん生でも美味しいので、野菜スティックにしてポリポリかじろう。

その次の部分も、みずみずしく美味しいところ。こちらも煮ても生でも美味しいため、上と同じような使い方をするといいだろう。強いて言えば少し筋が強くなり始めるので、歯ごたえを生かした漬物にするのが私の定番だ。

シッポの部分は、最も筋が強いところ。こちらは千切りや薄切りにしてキンピラ、味噌汁にするのが向いている。薄切り肉とさっと炒め煮するような時も、こちらを使うといい。

うちは大根解体日には、大抵2種類の漬物を作る。どちらも大根を干してから漬けると、ポリポリ感がまるで違う。レシピはこんな具合だ。

【白の大根漬け】

砂糖　大さじ5 ／ 塩　大さじ1 ／ 昆布、唐辛子、ユズやカボス（皮と絞り汁）少々

砂糖と塩を合わせておく（大根の大きさにもよるが、これで1~2回分）。大根は縦半分（太いものはさらに縦半分に）にカットし、ジッパー付き保存袋などに入れる。大根に「砂糖塩」をまぶしたら、昆布、唐辛子、ゆずやカボスなど好みのものを一緒に入れ、冷蔵庫でほったらかしにしておく。2日ほどで食べ頃になる。大根をひと口大にカットして重石をかければ、翌日から食べられる。カボスなど柑橘類を入れてちょっと酸っぱみがある方が私は好きだが、なくてもいい。

【茶色の大根漬け】

醤油　大さじ3 ／ 酢　大さじ3 ／ 砂糖　大さじ2 ／ 昆布、唐辛子

白の漬物と同様、ジッパー付き保存袋にすべてを入れ、冷蔵庫でほったらかしにしておく。こちらはやや漬かりが悪いので、ひと口大にカットする方が早く食べられる。

また材料を
醤油　大さじ3 ／ 酢　大さじ1 ／ 砂糖　大さじ2 ／ 紹興酒　大さじ2 ／ 山椒の粒
にすると、中華料理屋で出てくる大根の漬物になるので、好きな人はこちらもお試しあれ。

＜追記＞
大根を漬けると水分がたくさんでる。干し大根にしてもかなりの水分量なので、うっかりすると冷蔵庫を水びたしにしてしまうことも。なので冷蔵庫に入れる際は深さのあるバットやタッパー、皿などに乗せておくといい。ジッパー付き保存袋から汁漏れしても、これで安心。

数年前、コンビニで立ち読みしていたら背中を突かれたことがある。立ち読みを注意されるのかな？　と振り返って見ると、そこには店内でダウジングしている青年がいた。東京はダウジングの街なのである。知らんけど。