見出し画像

乞食とハト


厄介な奴はどこにでも存在をする。今、働いているコンビニにもそんな客はよく来る。ビーチ目の前という立地上、店内には日焼き止めやサンクリーン、タオルや海パンなどビーチで楽しむためのアイテムを揃えている。
「サンクリーンある?」
このような質問には慣れているので指を指して
「向こうにあるよ」
と伝えれば彼らは大抵買っていく。
ただ、こんなやつもいる。
「サンクリーン貸してくれない?買わないけど」
果たして世の中に無料レンタルできるサンクリーンを置くコンビニが存在するのだろうか。バービー人形みたいなティーンエージャーであっても同情はできない。
また、物の値段を見ないのも、ここオージースタイルと呼ぶべきなのだろうか。
「これいくら?」
タオルを抱えたオージー。タオルにタグがついているだろう。なぜ確認しない。なぜ見ない。不思議で仕方ない。さらに、
「サッカーボールいくら?」
君の指を指している方向にサッカーボールとその値段が書いてあるじゃないか。なぜ見ない。値段が見えないものか。これらはおとぎ話では。現実なのだ。
ただ、彼らなんて可愛げのあるほうだ。許そう。なぜなら、他に最も厄介なやつがいるからだ。
それは乞食である。
ここシドニーには物乞いをする者が多い。大きな交差点の脇でせがむ彼ら。まるで、人並みという川の流れを阻む大きな岩ようだ。そして、彼らの目はいやらしさでいっぱいだ。これがいけ好かないのである。
「お金をください。お金をください、お願いします。」
お辞儀みたいに頭を上下に何度も動かし、低姿勢な態度とりながらも顔を上げた際に、ふっと周りの様子を確認する姿はなんとも哀れな瞬間である。うん。いけ好かない。ただ、ぼくもそんなに冷たい人間ではない。情はある。だから、一つだけアドバイスを乞食のあなた達に言葉を送りたい。
それは長時間、頭を振り続ける必要はないという事だ。そんなに頭をたくさん振ったところでお金は増えないだろう。だから、彼らには「頭の振り方に緩急をつけたほうが良い」とアドバイスしたい。
それは「小刻みに震えるように振る」ことと「ヘドバンのように大きく激しく速く振る」この二つの振り方を織り交ぜ緩急をつけた方が良い。また、ヘドバンの際にあ少しだけ、頭に回転んを掛けると良い程よく髪の毛が乱れ、狂気が伝わりやすい。そして、どの乞食もこんなことマネしないだろう。ナンバーワンじゃなくてもよい。オンリーワンの誰からもマネされないことが大切だ。
だが、ヘドバンの回数を多くするのは勧めない。それは通行人が
「なんだ、元気な奴じゃないか」
と思われては元も子もない。そのため、七対三の割合で「小刻み」と「ヘドバン」を併用することを勧めたい。
あと、気を付けなければいけないのが、小刻みに頭を振る姿は、どこか、餌を求め彷徨うハトのように見えてしまう。そのため、パンの耳を貰う回数がドッと増えるかもしれない。でも、忘れてはいけない。あなた達がほしいのはパンではなくマネーなのだから。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?