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外山恒一合宿の日々で、ぼくは少し救われた気がしたんだー合宿レポートという名の壮大な自分語りー

 第24回外山合宿に参加したので、そのレポートをつらつらと書いていきます。淡々とした語り口で書くつもりがねっとりした壮大な自分語りになってしまった......


カリキュラムについて



 合宿2日目から10日目にかけての9日間、9:00〜13:00、14:00〜18:00の合計8時間の詰め込み教育、20:00から約2時間ほどの映像作品の鑑賞が毎日行われる。詰め込み教育で扱われる内容はマルクス思想、左翼運動史、ポストモダニズムについてなど。指定されたテキストを1章ずつ黙読し、その後外山さんが詳細な解説をしてくれる。使われたテキストを具体的に上げると(ググればでるが)、外山恒一『人民の敵号外 マルクス主義入門』、立花隆『中核vs革マル(上)』、笠井潔『ユートピアの冒険』、絓秀実『1968年』、または別途配布された資料などを読みながら授業が進められた。
 前半はノートを取りながらまじめに受講していたため内容についていくことができていたのだが、後半については後述する夜通しの議論に熱中しすぎて、午前は睡眠時間になっていたためほとんど授業についていけない状態だった。これは後悔している点だが、だからといって深夜の時間を棄ててちゃんと睡眠時間を確保していればよかったなどと言いたいのではなく、深夜に議論の時間もとりつつ、授業にも這いつくばってでも出るべきであったと思っている。せいぜい10日間なのでそれくらいの無理なら何とかできた。反省。


メンバーについて



 集まったメンバーは、ファシスト主催の教養強化合宿という字面から想像されるイメージと反して、全員が穏当なリベラル、といった感じだった。大学の自治に関わる人間も数名いたものの、運動に熱心に取り組む活動家といった感じではなく、みな一様に、人文系に関心を持つ穏やかな若者だった。そこがぼくにとってはこの合宿が居心地の良いものになった要因のひとつだったが、人によっては刺激が足りないと思うかもしれない。どういったメンツになるかはガチャなので、自分が参加するときに自分の思うような雰囲気の合宿になるかどうかは運次第。いいタイミングで参加できるといいね。


ぼくについて


 関西の某2流私大の理系学部でコンピュータサイエンスを学んでいる4回生。人文系の学問に興味はあり我流で文学や哲学などを学んでいるものの、周りにそういった分野について関心を持っている人が誰一人おらず少し寂しい思いをしていた普通の大学生。鬱病と発達障害を患っており、Twitterでメンヘラムーブをかましたりツイキャスでリスカ配信を行なって永久BANをくらいなどして日々鬱屈と生活を送っていたが、外山合宿にて真の仲間と打ち解けあい、内面の感情を吐露することによって救われ、己の内なるメンヘラとメサコンに前向きに向き合っていくことになる。
 あとなぜか知らないが、合宿中ずっと「お兄さん」と呼ばれていた。


生活について


8:50
起床
洗面や歯磨きをさっと済ませながらコーヒーを淹れ、授業を受ける準備を行う
もっと早く起きて朝ごはんを作って食べる人もいたが、ぼくは朝食は摂らない派なのでぎりぎりまで寝ていた。

9:00〜13:00
授業

13:00〜14:00
食事係のOGであるMさんが作ってくれた美味しい昼食に舌鼓を打つ

14:00〜18:00
授業

18:00〜19:00
自由時間
この時間帯になるとヘビースモーカーであるぼくのタバコはストックが切れるのでコンビニに買い出しに行く

19:00〜20:00
昼同様、Mさんが作ってくれた美味しい夕食を食べる

20:00〜22:00
映像鑑賞
外山さんがセレクトした映像作品を視聴する
他のnoteでは具体的な作品名は挙げられていなかったため軽く述べると、大川興業『自由自』、鴻上尚史『僕たちの好きだった革命』などの演劇作品や映画『ブルワース』、ドラマ『ダーマ&グレッグ』など。

22:00〜
自由時間
宴会、うたごえ、討論など、各々が好きに時間を過ごす。ほとんどが3時までには寝るが、一部(ぼく含む)は外が明るくなるまでずっと騒ぎ続けていた。


深夜について


 この合宿で一番ぼくの心に残ったのがこの時間帯に行われた議論である。最初の数日はただ歌ったり騒いだりするだけだった。それが4日目頃だっただろうか、白熱した議論が起こった。それはぼくではない他のメンバーの内面的な話になるためここでは詳しく述べないが、大変面白い、刺激になる議論だった。知的水準の高いコミュニティで集団生活を行うとこんなにも楽しい時間を過ごせるのかと深く感動した。
 議論の中心にいて、さまざまな意見をぶつけ合った彼を羨ましく思ったぼくは翌日の朝方(例によって例のごとく太陽が昇りだす時間まで起きていた)、自分の内面についての話を滔々とし始めた。メンヘラとメサコンの話だ。
 ぼくにとって、ぼくの人生において最も重大なことは「愛される」ことである。無償の愛を知らないぼくは、比較的恵まれたルックスで惑わせ、救われたい女性を「救う」ことで、有償の愛を得た。ぐちゃぐちゃな恋愛をした。こういう構造の恋愛は、必ず共依存に陥る運命にある。小さな成功体験を得たぼくは、そういう愛のやりとりに、それはもう依存した。共依存は、関わる両者を傷つける。愛し合えば愛し合うほど、互いにどんどん苦しくなる。愛されないのは苦しい。しかしぼくの愛は相手を傷つけるし自分も傷つける。どうすれば苦しまなくて済むだろうか。死ぬしかない、そう思った。
 そんな話をした。みんな真剣に聞いてくれた。メンヘラメサコン加害者男性の聞くに堪えない戯言を。どうすればいいのか一緒に悩んでくれた。「自立した大人の女性と付き合いなさい」とアドバイスをくれた。「私はお兄さんに死んでほしくない」と悲しんでくれた。初めて内面を曝け出して、周りがそのことを真剣に考えてくれて、本当に、本当に嬉しかった。すぐ横でうたごえ運動をしている人がいなければ、きっと泣いていたと思う。死ぬまで忘れない思い出ができて、本当によかった。


居残りについて


 合宿10日目の8月31日、半数以上の同期が昼ごろまでに帰ってしまっても、ぼくはまだこの心地よい空間に少しでも長く居たくて、1日だけ居残りをすることにした。OGのMさんも混じってだらだらと雑談をしていた。食事係の任はもう解けたのに昼食に残りの材料を全部使ってすき焼きを作ってくれた。本人が暴力的な味付けを施したと称していた通り、味が濃くてとても美味しかった。夕食は外山さんと一緒に弁当を取って食べ、その後はボキャブラリーX(出題者が辞書の解説部分を読み上げ、それが何の単語かを推測して当てるゲーム。YouTubeで見られる)で遊んだり、お酒を飲みながら『仁義なき戦い』を鑑賞したりした。見終えた後は同期4人で散歩に出て、近くを流れる那珂川の川辺でタバコを吸いながら語らうというエモちらかしたイベントも楽しんだ。翌日は、その日帰る5人で博多駅に行き、ラーメン屋をハシゴしようとして2店目で断念したり、天神の空気だけを吸って急いで福岡空港に向かったり、朝起きるのが遅れたために結構忙しい観光になった。最後はみんなと1人ずつハグをして別れるという青春の1ページを数ページ刻みながら涙を飲んでお別れした。

最後に


 今ぼくは元のつまらない日常に戻って、くだらない労働に勤しんでいる。Twitterにも書いたが、魂が外山邸に取り残されているような感覚がある。南福岡でのあの非日常は、これまでの何とも比べ物にならないくらい刺激的で楽しかった。我々24期生は卒業し、もう同じメンバーであの地に集うことはないという事実が、ひたすらに寂しい。本当に、本当に楽しかったから。
 深夜の討論会で浮き彫りになったぼくの内面の問題点と向き合いながら、当面は生きていこうと思う。そのきっかけをくれた、ぼくの話に付き合ってくれた人たちに、ありったけの感謝を。

 そしてこのような素敵な場を提供してくださった外山恒一さん、合宿中の生活を支えてくれた食事係のMさん、本当にありがとうございました。Mさんとは今度の大阪文フリでお会いする約束をしましたのでそのときはよろしくお願いします。

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