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親知らずをプチ手術で抜いた

タイトル通り。
これは親知らずを抜くまでと、抜いてからの記録。

親知らず抜歯が決まるまで

長らく歯医者に通っていなかったのだが、常に(今の自分には自覚していないだけで虫歯があるのでは……?)という恐怖に苛まれていたため、思い切って歯医者に通うことにした。
歯医者の初診でまずレントゲンを撮り、その写真を見せてもらったのだが、どうにも気になる点があった。

筆者の歯のレントゲン写真

下顎の親知らずがどう見ても真横に生えている。
尋ねてみると、「真横に生えている上に、歯の根が神経が通っている部分とかなり近いように見える(レントゲンは2Dなのでちゃんと調べると根と神経の前後の間隔が離れていることがあるらしい)ので、もし詳しいことが知りたいのならCT検査ができる大きな病院に行って、CTを撮らないとわからない」と言われた。

せっかくだし……と思い、紹介状を書いてもらい総合病院にCT撮影をしに行った。
そこで検査の結果歯科口腔外科の先生に歯の根と神経がもろかぶりしていることが伝えられた。
こうなるともう普通の歯医者では抜けないので手術をせざるを得ないとのこと。
ちなみにその神経が傷付くと、今後唇に痺れが残ることがあるらしい。

検査結果を手に通っていた歯医者に行き、見せた。
「うーん……これはこの歯科医で抜けないし、もし抜くとしたら他院の歯科口腔外科の先生に来てもらわなきゃいけないですね……抜くのが大変なので、すぐには抜かなくていいかもしれないですかね……」と言われて、へ〜そんなものなのか!と安心したら、その後のクリーニングで歯科衛生士さんに「親知らずを抜く予定はありますか?親知らずの歯茎が腫れているので、できれば早めに抜いた方がいいかもしれません……」と言われた。
やっぱ抜いた方がいいんじゃん!

抜歯の説明と葛藤

抜歯するにあたって説明を受けなきゃならないので、電話で予約を取り付けて説明を聞きに行った。
そこで「歯茎を切って、骨を削って、歯を砕いてから根を抜きます。そして縫合します」と説明を受けて帰ってきた。
今拷問の話をされている?と思った。お会計は230円だった。

怖い。
でもその場で先生に「早ければ来週抜けますけど、どうしますか?」と訊かれて、「じゃあ来週お願いします」と言ってしまった。

ちなみに抜歯は局所麻酔一択だった。全身麻酔だったらどんなに良かっただろう。

そんな、歯茎を切って、骨を削って、歯を砕くなんてしてもいいのか?それは本当に治療なのか?そんなことをして痛くないのか?痛くないわけなくない?
震えながら過ごしていたら、あっという間に抜歯当日。

〜抜歯〜

やや急がなければ間に合わないくらいの時間になってしまったので、競歩くらいのスピードで10分ほど歩き病院へ。
着いた時には若干汗ばんでおり、息も上がっていた。

看護師さんが血圧や体温を測ってくれた。
手術の説明で前もって「空腹で局所麻酔をすると気分が悪くなってしまう可能性があるのでごはんを食べてきてくださいね」と言われていたので、その日看護師さんに「ごはんは食べてきましたか?」と訊かれて「はい!いっぱい食べてきました^ ^」とわんぱくアピールをしてしまった。

ちなみに慌てて走ってきたのと緊張で血圧は上が140、体温は37.3度という数字を叩き出してしまい、かなり心配された。本当に申し訳ない。
皆さんは病院には余裕を持って行った方がいい。

手術は説明を受けた歯科口腔外科の部屋だった。
手術室みたいな場所でやるのかと思っていたので少し安心。
そこでもう一度その日に行われる手術の過程の説明をされた。1時間もあれば終わるらしい。

歯医者にあるような椅子に座らされて、口周りや口内を消毒し、まずは塗る麻酔。バナナ味。
塗った後の唾液を飲み込んだら喉の方まで麻痺したような感覚になってややしんどかった。

そして注射針の麻酔。これが意外と痛い。
耐えられる痛みではあるが、骨を削っても痛くないようにしなきゃならないので、かなり深いところまで刺しているっぽかった。
マイルドになった鋭い痛みが奥の方からくる。
この間麻酔の針が怖くて目を閉じていたら「大丈夫ですか……?」と心配された。

麻酔が効くのを待ってから、いよいよ手術開始。
実はこの時点まで麻酔の効能を疑っていた。
だって骨を削るのに注射のみで痛くなくなるわけが無くない?
そんな不安と恐怖心を抱えていたら「顔の上を鋭い器具が行き来するので顔を覆いますね〜」と言われる。
正直器具は見たくないので助かった。
顔にマスクと同じような素材で、口周りがぽっかりと開いている紙(顔をすっぽり覆うくらいには大きい)をかけられる。

「少しでも痛かったり、口を開けているのがしんどくなったら手を挙げてくださいね、すぐに止めて麻酔を追加したり、休憩したりしますからね」と言われる。
もし顎の骨とかが露出している状態だったらむしろ休憩する方が怖くない?と思ったけど、「はい」と返事をする。

術中は疲れや恐怖で口を閉じないように、体感6〜7センチほどある縦長の物体を手術する方とは逆の奥歯で噛む。見えていないのでどういう形状かは不明。

まずは歯茎を切る。
「ガチ、ゴリ、ミヂ……」というどの部分に何が当たっているのかわからない謎の音がしていたのでおそらく切られているのだろうなというのはわかったのだが、全く痛く無くて驚いた。
それにしても嫌な音。

歯茎が切れたら次は親知らずが見えるようにするために顎の骨の表面を削る。
見えないのでわからないが、レーザーのような、ドリルのようなものを使っているらしかった。
これが凄まじい音で、みんなが想像する歯医者の嫌なギュィーンという音を10倍にしたような爆音が鳴り響く。
しかもそれが顎に当てられるので振動が頭に伝わるし、頭の中で音が反響するので骨が削られるゴリゴリという感触があまりにも鮮明に伝わってくる。
手術前はしんどかったら寝てしまっても良いんだし……と思っていたが、これは寝るどころではない。

そしてもっと凄いのが削った下から見えた歯を砕く過程だった。
横になった歯の頭を砕いて、それから根っこを引き抜くのだが、この歯を砕くときも上記の轟音と振動がし続ける。

その上爪やすりで爪を削ったときのような、粉っぽいタンパク質系の匂いがする。
自分の歯が粉末になる匂いを嗅ぐ時がくるとは思ってもいなかった。
その匂いに加わって、何がどうなっているのか不明だが焦げているような匂いまでしてきた。
この時点が恐怖のピークだった。
その状態が10分くらい続いた気がする。
永遠に感じられた。

その後「少し力加わりますね〜」と言って顔付近をやや抑えられたり、「少し嫌な音がしますよ〜」と言った後に「ゴリ……ガリ……ゴリ……バキッ……」という音がしたりしたが、先生の「抜けましたので、あとは縫合していきますね」という言葉で全身の力が抜けた。

この縫合も体感的に結構長かった。15分くらいかな。
事前説明によれば4、5針は縫うらしかった。
たまに唇に引っ張られた糸が当たるので、本当に口の中を縫われている!と感動した。
この辺りからはもう終わるという余裕で結構元気。

糸を切った気配がしたと思ったら手術完了!
脱脂綿を噛まされて止血。
ポケットからスマホを取り出したら暑くもないのに自分の汗でスマホの画面がぐちょぐちょに濡れていて笑ってしまった。
尋常じゃない量の汗をかいていた。

手術中は5分に一回くらい先生や看護師さんが「大丈夫ですか?」と様子を確認してくれるのだが、祈るように固く握った手の震えは止まらないし、大丈夫ではなかった。
痛みがなくても音や振動が凄いので、怖いものは怖い。
でもお医者さんや看護師さんが気遣ってくれているのは感じていたので頑張った。

「すみません、分割されてしまったのですが……」と何に対してかわからないが謝ったお医者さんの手に親知らずがのっていた。
3分割ほどされていたものの、きちんと奥歯の形をしていた。
信じられないくらい血まみれだった。
これが体内に埋まっていたのか……と思って見ていると「持って帰りますか?」と言われたので断った。
血まみれで分割された親知らず、いらないです。

その後は脱脂綿を入れ替えて30分ほど噛んでおいてくださいねと言われ、薬局で痛み止めや抗生物質を貰って帰宅。
帰宅するまでけっこう時間がかかったのでこの時間まで噛んでいてくださいと言われた時間を超過しても脱脂綿が口から出せず、やや気になった。

麻酔が効いている間は唇や顎に触れても感覚がなく、自分の身体の一部がブヨブヨした塊になってしまったのは面白い体験だった。
家に着いたらホッとしたのか、ちょうど麻酔が切れるタイミングだったのか、切った部分が涙目になるくらい痛み出したので慌てて痛み止めを飲む。唾液を嚥下する瞬間が一番痛い。
麻酔が切れる前に簡単にシャワーや洗顔などを済ませておいた方がいい。
皮膚感覚としてはまだ麻酔が残っていたので、こんなに早く痛みが来るのは意外だった。

痛みに怯えていたら痛み止めによって麻酔の違和感とほんの僅かにある鈍い痛み以外はほぼ綺麗さっぱり消え去った。
現代医療の凄さに感動したと同時に、こんな痛みすらも消せる痛み止めって……と少し怖くなった。

意外と親知らずを抜かなかった方の口の片側だけを使えば、手術当日でも固形のごはんを食べることができた。
筆者の食欲が凄いだけという可能性がある。
ただし時間がかかる。

食事で1点やらかしたのは、あたたかいものを食べると信じられないくらい傷が痛むということ。
ほかほかの煮物を食べてしまってしばらく痛みで悶絶していた。
こればかりは痛み止めでもどうにもならないらしい。

1回目の痛み止めを飲んでから5時間くらい経ったらまた傷口がジクジク痛んできたので、慌てて頓服でもらっていたカロナールを飲んだ。

歯磨きをして傷口にブラシが当たるのが怖かったので、夜はイソジンのうがいで済ませた。
うがいも強くしすぎると傷口が開く可能性があるらしい。怖すぎる。
それ以外は特に問題なく1日を終えられた。

抜歯後日(2日目)

腫れるらしいという話は聞いていたが、目が覚めて鏡を見たら自分の顔半分が太ったようにパンパンになっていたのには少し笑ってしまった。
本当に腫れる。

体感として頬の表面が腫れて出っ張っている感覚がある。
加えて、親知らずを抜いたところの皮膚にゴルフボールが埋まっているような違和感があった。
唾液を嚥下する際に筋肉が動くせいなのか、痛みではないひきつれるような感覚がある。
咀嚼時もこのゴルフボールを感じるのでやや大変。

食事も相変わらず片側&少量ずつ口に入れないといけないので異常に時間がかかる。
食べても食べても食事が終わらないのでキレそうだった。無限炒飯地獄。

ちなみに時間的に痛み止めの効果は切れているはずなのに傷口の痛みはもうそこまでなかった。
人体って本当に凄い。

夜になるとゴルフボール部分を皮膚の上から触れると熱を感じるようになる。炎症している。
そして親知らずを抜いた側の顔半分も重さを感じるような痛み。鋭い痛みではなくて、鈍いタイプ。
こめかみ部分までなんとなくズキズキする気がする。

この日は流石に歯を磨かなければ!と思ったので磨いたが、歯ブラシが当たると自分でも想像しなかった部分が痛んだので、どこまで切って縫っているんだ!?とか、どこまで腫れているの……?とかなり恐怖しながらの歯磨きになった。
器用な方ではないので時々口内にコツンと歯ブラシをぶつけてしまうのだけど、それが本当に恐ろしかった。縫われた肉が裂けて大量に出血する妄想が脳裏をよぎる。

抜歯後日(3日目)

朝、頬がパンパンに腫れている感覚で目が覚める。かなり熱を持っているように感じたので保冷剤で腫れている部分を冷やす。

痛み止めには炎症を抑える成分が含まれているので、とにかくお腹にものを入れて痛み止めと抗生物質を飲む。

夜には腫れや熱っぽさが引いて過ごしやすくなった。
その代わり歯が生えてくる時のような微かな痛み?チクチクソワソワを感じるようになる。おそらく縫合によるものっぽい。
腫れが治ったらこんどは糸で引き攣れるような感覚があるので、常に口内に違和感がある。
こればかりは痛み止めでどうにもならないらしい。

頬を膨らませるという動作ができなくなっていることに気づく。
どうやら膨らませたら皮膚が伸びる部分も切って縫合しているらしく、少しでも頬の皮膚が伸びると脳内で危険アラートが鳴り響く。
水を口いっぱいに含めないので気を使う。

抜糸

3日目以降は糸由来のチクチク感が残るだけだったので割愛。

手術からちょうど1週間経ったので抜糸をした。
5分もかからずに終わる。とはいえ粘膜と粘膜を縫い合わせているので抜糸時はチクッチクッとした痛みが走る。
終わってからはその日カレーを食べに行こうと思っていた決意が揺らぐくらいには傷がチクチク痛んだので結局うどんを食べることにした。

傷口の感触としては、口内を間違えて噛んでしまった時にその部分がやや固くなるけど、それが縫合していた箇所で起こっている感じ。
やや痛いけど、特に気にならないレベル。
それよりも糸がなくなったことによる痛みや引き攣りが無くなった解放感のほうがすごい!
ご飯を食べるときに気を遣わなくていいって最高!

ちなみにこの傷は2日くらいでほぼ気にならなくなったけど、親知らずの箇所の粘膜側?に謎の窪みができた。骨を削ったからかな?

おわりに

レントゲン写真を見た人はお気付きかもしれないけど、実は全く同じ問題のある親知らずが下顎にもう一本埋まっている。

ということで12日抜歯決定!
もう一本分今回と同じ体験ができます!ホホホ……勘弁して……

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