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【2021年度第46問】行政書士試験の記述対策はどうすればいいの?

行政書士試験を受験される方へ

記述式試験が苦手ではありませんか?
今回も記述式の過去問を見ていきましょう。
毎回書いている決まり文句です。
<ここで書いているのはあくまで「考え方」であって「正しい知識の習得」ではありません。ですから、試験のあった年の条文に基づいています。法改正後の条文だと回答できなくなる可能性がありますので、どうかご了承ください。>
<過去問の問題文は著作権が絡んでくる可能性がありますので書いていません。行政書士の試験センターから見れると思いますので、そちらからダウンロードしてください。>
さて、2021年度の問題46です。なんとなくでも解答を作れるイメージがわいてくれると嬉しいです。よろしくお願いします。


| 行政書士試験の民法検討(問題46)


1 問題の整理

記述式の3問め、民法からの出題です。問題文の整理をします。今回は問題文を簡単にまとめてみました。

(1)債権者Aは債務者Bに対して譲渡禁止特約のついた債権を持っている。
(2)債権者Aは第三者Cに本債権を譲渡し、債務者Bに通知・到達。
(3)第三者Cは債務者Bに履行請求。
(4)債務者Bは履行を拒みたい。

以上を前提に考えていきます。
問題文には債権者A、債務者B、第三者Cと3人出てきますので、まずは図を書いて頭の中を整理しましょう。

2 問われている内容

債権譲渡された債務の支払いを拒むことができる場合を問われています。債権譲渡は、民法改正で改正された箇所です。2019年度の第46問には債権譲渡と紛らわしい問題が出題されています。あのときは「第三者のためにする契約」でしたが、今回は正真正銘の「債権譲渡」の問題です。

3 事案の分析


(1)債権譲渡手続きの有効性
まずは条文を見てみましょう。試験の時は思い出してください。

民法 第466条
(債権の譲渡性)
第四百六十六条 債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 以下、略

民法 第467条
(債権の譲渡の対抗要件)
第四百六十七条 債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 略


債権は、原則として、性質上認められない場合を除いて、譲渡することができます。また、債権譲渡を債務者に対抗するためには、譲渡人が債務者に通知をするか債務者が承諾する必要があります。基本的事項ですので、受験生は十分に学習されていますね。
本問では、債権者Aは債務者Bに対して債権譲渡を通知し、債務者Bはその通知を受領しています。
債権者Aから第三者Cへの債権譲渡は、手続上の問題はなさそうです。


(2)債権譲渡が認められない場合
債権譲渡の手続きに問題はないとして、次に、そもそも債権を譲渡することができたのかを考えてみます。先ほど見たように、民法第466条では“性質がこれを許さないときは、この限りではない”とありますので、性質上、債権譲渡ができるのかを考えます。
従来は、債権の性質上債権譲渡が認められない場合の典型例として、債権譲渡禁止特約付きの債権の譲渡がありました。つまり、「債権を第三者に譲渡できませんよ」という特約が付いている債権の譲渡です。
ただ、民法の改正で、債権譲渡禁止特約が付いている債権であっても、原則的に譲渡ができるようになりました。ここが本問を考えるうえで重要なところです。
では、どんな場合に債権譲渡禁止特約付き債権を譲渡することができるのでしょうか。
また、条文を読んでいます。試験の時は思い出してください。

民法 第466条
(債権の譲渡性)
第四百六十六条 略
2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。
4 略


民法第466条第2項では、債権譲渡禁止特約付きの債権も譲渡できることが明記されています。また、第3項では、そのときの要件が書かれています。
(ア)譲受人または第三者が譲渡制限の意思表示を知っていた場合
(イ)譲受人または第三者が譲渡制限の意思表示を重大な過失で知らなかった場合
この2つの場合には、債務者は譲受人に対して債務の支払いを拒むことができます。問題文に債権の消滅原因はないと書かれていますので、第3項の後半部分は本問では関係ありません。
法改正されたところがそのまま出題されています。知っていれば簡単な問題ですし、知らなければ点数を取れない問題でした。

解答例
「本件代金債権の譲渡制限の意思表示をCが知っていたかまたは重大な過失で知らなかった場合」(42字)


| まとめ


1 民法でも改正部分を出題!
2 債権譲渡は形式的な手続き上の不備からチェック!
3 手続きに不備がなければ譲渡の内容をチェック!


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