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子供部屋おじさんのままでは婚活はうまくいかないよと散々アドバイスしているのに「親孝行の何が悪い!」と逆ギレしてきたアラフィフ友人の話【中村淳彦の名前のないコラム】

婚活の第一関門は「プロフィール」。顔写真や年齢、年収はもちろん、交際条件や生活環境まで女性はすべてチェックしています。なかでも最も敬遠されやすいのが「親と同居」、いわゆる「子供部屋おじさん」です。コドオジは婚活では圧倒的不利な状況が事実としてあるのですが、なかなか実家を離れられない中年男性も多いようです。

自分の結婚より親孝行を優先する人生でいいんですか?

 ノンフィクションライターの中村淳彦です。
 アラフィフの福祉関係の友人がいるけど、僕とまるで反対。控えめな僕でも、まあ彼よりは僕のほうがモテるかなって感じのレベル感の方です。その彼と僕は、たまたま同時期に婚活を始めたわけですね。福祉の仕事は本当にやばい仕事だなって彼を見て感じるけど、物事の優先順位が全然、違う。これめちゃめちゃやばいことで、それがこう結果に出てしまった。
 現状を言うと、彼は婚活まったくうまくいってなくて、失敗続き。『中年婚活』を買って読んだらしいけど、Twitter上で、僕に逆ギレしている。彼にうまくいってほしいから、あの君、これとこれ間違っているって、ガチでかなりの助言とかアドバイスを散々したけど、逆ギレ。そうくるかっていう。もう、どうしようもないね。

 その福祉おじさんは子供部屋おじさん(コドオジ)なんだけど、コドオジは婚活で絶対に許されないスペック。そういう当たり前のことを当然伝えるわけですね。
 彼が実際やったのは、まず婚活をやったこと。実際に動いたこと。結婚相談所に入ってちゃんとした服装で、ちゃんとした写真を撮った。それが唯一やったこと。まあ、結婚相談所に言われたからやっただけだろうけど、それはやったわけです。
 プロフィールも結婚相談所の人の添削が入って、プロフィール上は彼の最大公約数というか、よく見えているものを作れている。単純にコドオジが決定的にまずいんです。

 彼はもう50年間も親と住んでいるから、高齢者の古い日本の習わしみたいなことを叩き込まれて、もう無茶苦茶なんですね。
 僕と彼が婚活始めたのがコロナ禍。コロナ禍になって2020年、2021年の初めぐらいに日本中がヤバイことになった。その頃に婚活を始めたけど、彼は「親孝行しなきゃいけない」とか「高齢者がいるからコロナを伝染しちゃいけない」とか、あとお父さんが死んだ。「お父さんが死んだから喪に服さなきゃいけない」とか、そういうことをもう徹底的に守る。
 僕の場合はコロナでみんな自粛自粛とか騒いでいるから、みんなが動かないんだったらチャンスと思って、2020年の混乱しているときに婚活を始めた。マスクは一応表面上するけど、人に会いまくった。もう毎日毎日外出するような感じで、趣味濃厚接触みたいな感じで自粛一切しなかった。自粛一切しない方がいいなと思ったのは、彼を見て反対のことをするのが正解だろうと思ったわけです。

 彼は「婚活なんかしている場合じゃない」みたいなことで、鬼の自粛生活に突入した。それで家に籠って、福祉会社にも慎重に通勤したりして、もう絶対になにもしないことを決定させていた。本当に何にもしなくて、暇な時間はTwitterとかFacebookで自粛警察みたいなことやっていましたね。「高齢者の命がかかっているんだぞ。外出するな!歩くな!」みたいな感じで。
 僕は反対のことをするので、すかさず今日あれ行った今日どこ行った、濃厚接触しちゃいました、みたいなことを投稿するわけです。逆の手を打って婚活をしまくったんですね。それですんなりうまくいった流れがあります。

 僕が入籍してしばらく経ってから、お父さんの喪が明けたのと、コロナがやっと終わったみたいな感じで、僕がもう入籍して、もういろんなこと山ほどあった後、彼は婚活を再開させたわけです。
 僕はうまくいったから、とにかく時間を無駄にする彼の姿勢に対して心を入れ替えたほうがいいというアドバイスをしたわけです。さすがに婚活を控えて50歳49歳はやばい年齢だから、彼のためになるようなことを一応アドバイスするわけですね。めちゃめちゃためになる話のみを厳選してお伝えしたけど、もう、逆ギレだからね。呆れちゃいますね。

 それで彼が何を言っているのか。SNSで逆キレしているわけです。簡潔にいうと、

福祉で社会貢献している俺は立派な人間で、実家で暮らしているのも親孝行をしたいから。しかも、家事もしているからコドオジじゃない! そんな親孝行をしたい素晴らしい俺様をコドオジ扱いしている底辺のライターがいるけど、けしからん!

 みたいなことを言っているわけです。子ども部屋おじさんの定義は「親と同居しているおじさん」という意味なので、彼が福祉の仕事をしていようが、親孝行しようが、家事をしていようがコドオジなわけです。

 彼は人生で一番大切なことは親孝行みたいな感じなので、たぶんマザコンなんでしょうね。アラフィフのコドオジでマザコンで、しかも親孝行マニアだから親の介護をする気満々で、福祉おじさんだから低年収。そんな人と結婚したい女性は日本全国、1人もいない可能性が高いんですね。
 だから婚活をキッカケにマイナスを一つ一つ消していかないといけない。だけど、親孝行マニアだからコドオジだけは譲れない、コドオジは素晴らしい、親孝行しているコドオジを悪くいう奴が狂っているみたいな感じなのです。

 あなたが子供部屋おじさんを続けて、全国の全ての女性から相手にされない結果を生んで、それでもお母さんが心配だから寄り添うって、もう三代に渡って壊滅じゃないですか? なんでそんなことを選択するんですかってことを何度も何度も何度も何度も言ってるのに、彼は「俺はコドオジじゃない。親孝行な素敵な男だ」ってキレて、子ども部屋おじさんを続ける決断をした。
 日本全国の女性がNGをだしているのに、どうして子供部屋おじさんを続けるんですか? いやいやいやいやいや、まずいですよ。
 あなたね、<「子供部屋おじさん」って位置づけなんだろうか?>って疑問符投げているけど、超コドオジですよ。コドオジはもうダメ絶対。ダメだってことをもう散々説明した上に、書籍まで出版してあそこまで念入りに説明したのに、どうしてわからないんですかね。もうね、いやー、まずい。

 それでこの友人の方、数日後のツイートで婚活を休止することを宣言した。そこでも僕なんか名前出されて、

<素朴な疑問なのですが、婚活界隈で中村淳彦さんの最近出された「中年婚活 50歳、年収450万円からの結婚に必要な30の法則」の中身はどうなのか、ちょっと評価して頂きたい。どうも感想出す方々が、意識高い系の人ばかりでなんというか上から目線というか、ちょっと食傷気味。実際の相談所に携わってる人からの、率直な感想とかも有れば、スッと飲み込めるところもあるかもしれない。ターゲットの40後半以降の人からの感想とかも有ると。>(Xより)

 婚活を中止する宣言をして、僕が上から目線だとか、逆ギレが始まってるのが今なんですね。逆ギレするのはまあいいや。まあいいんだけれども、もうこうなってくるとね、もうあなたの人生の未来予想図がね、おおよそもう読めるわけですね。
 今50歳ですよね。50歳でお母さんが介護で倒れてちょっと精神的にまずいっていうので、健康状態が良くないってことだとすると、7、8年以内に亡くなっちゃうみたいな想定ですね。
 それでもコドオジを続けるわけですよね。で、コドオジを続けて婚活も休んで、またやろうか、寂しいからやろうかなと思ってやるけど、女性が現れる度にこの調子だと、コドオジであることとか、お母さんが大好きで親孝行したいんだとか熱弁して、そんなこと言ったら女性は一気に呆れるので、まあダメですよね。こういうことを続けてまた病んで、誰かに逆ギレして、また休むとか騒ぐのでしょうね。

 それで7、8年経った時にお母さんが具合悪くなって、介護を2年ぐらいやって、それで「介護しなきゃ! お母さんの介護しなきゃ!」とか騒ぎになって、もう介護離職しちゃったりしますよね。
 貧困に陥りながら、お母さんの介護して、まあ亡くなってですね、葬式のお金も介護離職したから無くて、でもお母さんに世話になったから、親孝行だからってなんか借金したりして、葬式を挙げたりしてですね、それで借金しながら第2の人生が始まる。
 大好きなお母さんが亡くなったから、これを心に刻むために喪に服さなくちゃってことで、「喪に服すのも半年じゃダメだ、3年やらなきゃ」って言って、それで3年間喪に服しますよね。3年間の喪に服している間に、婚活したい、寂しい、婚活したい、寂しいと思っても、「ダメダメダメ喪に服さなくちゃダメダメ」みたいな感じで、1人の家に閉じこもるでしょう。
 で、寂しい。寂しくてイライラするからまたなんかSNSで誹謗中傷みたいなことも始まっちゃって、ネット右翼か左翼かわかんないけど、福祉だから左翼みたいになっちゃって、「政治が悪い、国が悪い」みたいなことを叫びまくってストレス発散する。

 それでやっと3年間、お母さんの喪が明けて、もう寂しいと思って62歳ぐらいでまた相談所に入会する。結婚するぞみたいなことで。
 49歳、50歳の時は同年代ぐらいのパートナーがいいって地に足ついてたけど、62歳でお母さんの喪が明けて入ったら、同年代がなんかおばあさんばっかりになって、「なんだおばあさんばっかりじゃないか、これは嫌だ」みたいなことになるでしょう。
「俺は女性のことわかっているから、同い年のおばあさんはさすがに無理だから48歳にいこうかな」、みたいなことで48歳の人に申し込みまくる。けど、また結婚相談所は最低料金の月に10人しか申し込めないコースかなんか選んで、48歳49歳、超妥協して56歳ぐらいに毎月毎月申し込むけど、1年間で1人しかお見合いできませんでした、みたいなことが続くでしょうね。
 その年一度しかないお見合いの場でも、またお母さんの話とかしてしまって、「お母さんが7年前に亡くなって、3年間喪に服してようやく、これで親孝行したって区切りがついて婚活頑張っているんだ」みたいなこと言って、それでお母さんの思い出とか語って、たまになんかやっている時お母さんの声が聞こえるみたいな。
「何かが聞こえてちょっと心が温かくなってハッピーになった」みたいなわけのわかんないことをお見合いの場で言って、「親孝行な俺って素敵でしょ!」「親孝行な俺ってなかなかすごいでしょ!」みたいなことをまあ言うわけですね。自分の魅力を女性に熱弁するわけです。
 まあ、相手の女性は呆れつくして、もう即日断られるわけですね。

「なんで親孝行の俺がそんなに嫌われるんだ。信じられない!」みたいな感じでまた逆ギレが始まって、「親孝行の俺がそんなに嫌われるなんて、この国はおかしい!」「この国の女はおかしい!」「女はおかしい!」みたいなことになって、最終的に国と女性と全てを恨みつくして、だんだんね、なんかもう手に負えない左翼ジジイみたいになってきて、「政治のせいで俺がこんなに不幸なんだ!」みたいなことをSNSでね、なんかどうでもいいことつぶやきまくって、それで体がおかしくなって、内臓系のなんかがおかしくなってですね、2年間ぐらい苦しんで67歳で、まあ亡くなってしまうっていうことなんですね。

 で、彼は67歳で亡くなって、親孝行に捧げた人生だったけど、もう誰もいないわけですよね。友達もいないし、親族もいないし、子供もいないし、妻もいないから、無縁仏じゃないかもしれないけど、誰かがね、非正規の区役所の役人かなんかが火葬してね。面倒くさそうにしながら、その墓に入れてくれるかもしれないけれども、葬儀もないし、何もないわけですよね。
 それでちょっとした知り合いが電話で、「あの彼死んじゃったらしいよ」みたいなことを伝えると、「えー残念、ご冥福をお祈りしていまーす」とか言って、それで電話切った2分後ぐらいには、あなたの存在忘れてしまう。また新しい時代が、時が流れていくみたい感じになるでしょうね。
 この調子だとね。なんか、寂しい人生ですね。コドオジをやめなかったってだけで、こういう寂しいことが待っているわけですね。

 親孝行とコドオジにこだわり尽くした揚げ句、まあ、そういう人生となって、その家もね、兄弟いるのかな? 兄弟いるって聞いたことないから家系も途絶えて、墓じまいにもならないのか、だから放置ですね。100年も200年も放置されて、カビだらけ苔だらけみたいな感じになって、そうやって忘れ去られるみたいな人生なんでしょうね。
 忘れ去られるなんてみんなそうだから別にいいけど、今コドオジにこだわって、そんな人生でいいのですか?ってことは、まあ、友人として伝えたいわけですね。

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<著者プロフィール>
中村淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター。無名AV女優インタビュー『名前のない女たち』シリーズ、『東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか』、『悪魔の傾聴』などヒット作多数。花房観音との共著『ルポ池袋 アンダーワールド』(大洋図書)が絶賛発売中。Voicy「名前のない女たちの話」日々更新中!https://voicy.jp/channel/2962