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地獄谷の露出女子と温泉サルでウキキのキ!┃ヤスデ丸の1万逃歩日記 #15

なかなか運動する機会もないため、毎日1万歩は歩くように心がけている編集部員ヤスデ丸(27歳)。健康増進というだけでなく、散歩は日々の現実逃避にうってつけ。その道中で見たもの聞いたものは、こんなもの──


 中学時代の友人カップル(学生時代は冬季に30回以上通うほどのスノボー好き)と、志賀高原スキー場へ滑りに行った。

 スノボー自体私は数年ぶり、友人たちも久しぶりということで、案の定すぐ疲れてしまい、4時間滑ってすぐに旅館へ。

 泊まったところは「渋温泉 炭之湯」。1万4000円で、朝・夕食付き、近所にある9つの無料温泉も入り放題、部屋も広くてキレイ。温泉や旅行好きの人って、旅館選びホント上手いよなぁ~。

夕食。友人彼氏は運転疲れで、翌日の朝食には現れなかった。運転ありがとう…

 翌日は友人の希望で「地獄谷野猿公苑」へ。なんでも、冬季は野生のサルが温泉に入っている様子も見れるらしく、野沢温泉や渋温泉エリアに宿泊した人のお決まり観光スポットらしい。

 しかし友人にはある懸念点があった。なんとこの野猿公苑、車を停めて約35分の山道を歩かねばたどり着けないという……!

近所のお土産エリアには、サルたちの勤務状況を確認できるライブカメラが。湯に浸かっただけでこんなに人を集めてしまうサルたち。すごい

 この友人とは15年近い仲になるが、彼女が1キロ以上の距離を自ら選択して歩いているところを見たことがない。

 高校生の頃、徒歩10分で着く駅までもバスで通う。
 大学3年生の冬、共に山形県へと合宿免許へ行き、免許を取ってまもなく軽自動車を、その後すぐ600万円近いJEEPを親に買い与えられた友人はさらに歩かなくなる。あまりに歩かない、それどころか必要最低限しか動かないので、私は彼女を「山」と呼んでいたいたこともあるくらい。「ねえ山、Wiiやろうぜ」と。

 しかしそんな彼女から「それでも行きたい」という言葉が……。なぜサルは彼女をそこまで突き動かすのか。サル、そして山──、そう彼らは運命共同体……!

 ということでレッツゴー!

歩ところどころに、やけに語りかけてくる立て看板が……

 「地獄谷野猿公苑」が設立されたのは、東京オリンピックが開催された1964年。パンフレットには設立に至った背景が書かれていた。以下、全文。

 1950年代、志賀高原を源流とする横湯川の下流周辺に、農作物へ被害を与えたことから駆除される予定のニホンザルたちがいました。
 しかしそれは、戦後の林業や開発によって、すみかや食料を失ったサルたちでした。
 当苑の初代苑長・原壮悟は〝サルたちを山中に留め、人間とのトラブルをおこさないようする〟ため、3年がかりで餌付けを成功させ、人里離れた地獄谷に当苑をつくりました。
 ──それから50年以上。
 地獄谷野猿公苑は〝サルと人間の共生〟を目指すとともに、訪れる方々に自然な姿のサルたちを観察していただけるよう環境を整えてきました。
 間近でサルたちの様々な生態をご覧いただき、少しでも興味・関心をお持ちいただければ幸いです。

 昨今のクマによる被害、キョンの大量発生などで駆除・殺処分される野生動物たちのニュースが脳裏に浮かぶ。
 もちろんすべての動物が自然環境下での餌付けや管理に成功するわけではないだろうけど、これは結構すごくない?
 小さい頃、海外旅行が好きな母親からアフリカ国立公園に行ったときの話を聞いて、子供ながらに感銘を受けたことを覚えてるけど、そのときみたいな気持ち。原さん、ナイスファイトすぎるぜ……。

もし滑落しても木がせき止めてくれるかしら

 道中、左右を見渡すと麓まで果てしなく続く木々に囲まれており、足元に目をやるとなかなかの断崖絶壁であることに気づく。滑落防止のレーンなどはなく、サルを見終えて折り返す観光客たちとすれ違うとき、全然余裕で落下しちゃいそうなエリアも。
 遊歩道は整備されているため、足元自体が険しいわけではないが、アイスバーンでズデンッ! と転倒する人もいる。
 足の指先はもう感覚がない。こんな寒いところいたら、そりゃおサルだって温泉入りたいわな。

ふと立ち止まって見上げたくなるくらいキレイ。人間はちっぽけだな~!

 地獄谷近くのとある旅館のホームページによると、温泉に投げ入れたリンゴを追いかけた子サルが湯に入ったのを機に、いくら温泉客が呼び寄せても入ることのなかったサルたちが、湯に浸かるようになったとか。
 それ以降、このエリアではサルたちの越冬術として「温泉に入る」という選択肢ができたのかもしれない。

山道を抜けると旅館や民家が出てきた

 徒歩でしか来れない旅館もあるという地獄谷エリア。目的地まで残りわずかとなり、少しずつ旅館らしき民家が見えてきた。

 おや? と思い目を凝らして見てみると、超開放的な温泉を発見。

 湯に使っているのはサル……ではなく人間。しかも若い女の子2人。その子らに話しかけ、カメラでテイク・ア・ピクチャーしている白人のオッサンを私は見逃さなかった。露出女子、地獄谷に見参! 視力1.5あって良かった……。
 さすがに拡大写真は色々とまずそうなので、遠くからの写真を載せときます。

右下がその温泉。女の子、めちゃくちゃノリノリで写真に映ってる。白人オッサン、ジャパニーズカルチャーを満喫中。"Oh, this is THE KON-YOKU!! "

 そんなこんなでようやっと到着。確かに30分はかかった。街中と違って、冬山の景色はずっと見ているとやや飽きてしまうと思ったが、喋る相手がいるとあっという間よね。

 お目当ての「スノーモンキーパーク」なるエリアを見渡すと、いるわいるわ、おサルと人間がたくさんおるぞ!

ふさふさの毛のサルたちがそこかしこにいる。苑の管理者が撒いたらしき餌をほじくり懸命に食べている
川をわたったり、眺めるサルたちも
自然の座椅子に鎮座するサル。何を考えているんだろう

 餌付けこそしてはいるが、この地獄谷野猿公苑は柵などを設けずにサルが自由に山を行き来できる環境にしている。人が好きでないサルたちは、開苑時間中には人の足ではたどり着けない山肌で日向ぼっこをしたり、山奥を散策しているはずだ。
 なかには人間なんかお構いなしに、突然喧嘩をはじめるサルたちもいる。ウキ―! ギャーギャー! と声があがると、観光客たちはそちらの方向へ釘付けになる。そのため、サルより人間の動きの方が面白かったりする。

 そして名物の温泉に入るサルたちがコチラ。

 え、これ完全にグラドルのプール撮影会じゃん! 各国のカメコが大集合しているぞ。夏の撮影会の聖地が川越水上公園(かつては、ね…)なら、冬の聖地は地獄谷だ!

湯に浸かる姿は人そのもの

 各自土産物をいくつか購入し、徒歩30分の帰路へつく。おかげさまでこの日の歩数は《12,148歩》。

 友人もよくこの道のりを歩いてのけたなぁと感心していたが、聞くと、最近は犬の散歩中に「モンハンNow」や「ピクミンブルーム」といったゲームアプリをプレイしているらしい。いわゆるAR的なやつかわからんけど、実際の道を歩いてゲームキャラクターを倒したりゲットしたりするっぽい。そのためならあんなに億劫だった徒歩移動も全く厭わないんだとか。
 思い返せば、「ポケモンGO」が流行ってたときも一緒に深夜徘徊につきあわされたことがあるな……。

 友人を突き動かしていたのは、どうやらゲームだったらしい。

<著者プロフィール>
ヤスデ丸(やすでまる)
「実話ナックルズ」の女編集部員。埼玉生まれ中東ハーフ。いよいよアラサー。YZF-R3を手放して、車検のないニーハンに乗り換えたい今日このごろ。好きなプロテインは「ウマテイン」ミルクティー味。最近は篠笛に演奏に再燃している。「1万逃歩日記」「裁判傍聴ファイル」など不定期で掲載中