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娘の同級生をストーカー、娘を連れて強盗に入り、娘と一緒に人を殺した|八街放火殺人事件・平野重治

2010年5月11日、千葉県八街市の民家で起きた強盗殺人および放火事件。男性を殺害し現金を奪い、火をつけたとして、平野重治は15歳の娘とともに逮捕された。裁判員裁判の判決は無期懲役。裁判長は「反省の態度が見られず、更生の見込み薄い」と断じた。
週刊誌記者として殺人現場を東へ西へ。事件一筋40年のベテラン記者が掴んだもうひとつの事件の真相。報道の裏で見た、あの凶悪犯の素顔とは。

不良父娘の奇妙な日常

 2010年6月11日午後2時半頃、落花生で有名な千葉県八街(やちまた)市の民家から火の手が上がった。焼け跡からは中村行夫さん(76)が発見され、遺体には背中の刺し傷が右肺にまで達していた。辺りには灯油の臭いが漂っていた。中村さんは、長男(46)と2人の孫娘と同居していた。犯人は殺害後現場に数時間とどまり室内を物色、食事をした形跡があった。捜査本部は一家の事情を知る人物の洗い出しを行った。県警担当記者の話。
「高校1年生のM子がストーカー行為を受け、4月中旬に地元警察署に相談していました。ストーカーを行っていた男は、M子の小中学校の同級生A子の父親でした。A子は中村さん宅に出入りしていて、一家の事情をよく知っていた」
 現場近くに乗り捨てられた2台の盗難自転車からはこの親子のDNA型が検出された。強盗殺人および放火の疑いで逮捕されたのは八街市内に住む土木作業員の平野重治(47)と無職の長女A子(15)だった。平野は容疑を否認したが、A子はあっさり容疑を認めた。

 県警担当記者が続ける。
「供述によると、室内を物色しているところを中村さんに見つかり、A子が鉄パイプで殴りつけ、平野が用意していた包丁で殺害。犯行当日の夜は盗んだ20万円でスナックやパチスロで遊び、翌日には滞納していたアパートの家賃5万円を振り込んでいた」
 娘の同級生にストーカーする父親。友達の祖父を襲う娘。この親子の日常を追った。半年前まで住んでいたアパート近所の話。
「平野は土方のような仕事をしていたがブラブラしている方が多かった。娘は中学に入ってから茶髪にして、学校にはほとんど行っていないようだった。いつも4、5人の生徒が屯していて自転車でいっぱいだった。子供のタバコの不始末だと思うが、2回も火を出されわれわれ住民が大家に交渉して昨年の暮れに転居してもらった」
 アパートに入り浸っていたA子の友人が2人の生活振りを語った。
「おじさんを俺たちはシゲさんと呼んでいた。シゲさんはキレやすく、みんないるのに平気でA子を殴っていた。A子の頭が壁に当たり穴が開いたことがあった。部屋には万引きしたカップ麺やお菓子がいっぱいあった。食べる物がなくなるとシゲさんの運転でスーパーやコンビニに出かけ万引きしました。街で弱そうな奴を見つけると『あいついいじゃん、いけー』とカツアゲを命令された。A子が万引きで捕まった時には『俺だったら絶対捕まらない』と心配する様子はまったくなかった」
 こんなバカ父に育てられたA子も被害者の1人かもしれない。

平野は土木作業員だったがあまり
働きに出ず、
カネに困れば万引き、
カツアゲを繰り返していた

 A子はプロフに「体重“かなりやばいよ”」と書くぐらい太っていた。それが原因でイジメを受け不登校になったという。A子を知る主婦の話。
「あの子は小さい頃からピンポンダッシュする問題児でした。動物虐待も酷くて、嫌がるネコに洗濯バサミをたくさん挟んでいたので叱ったら『お父さんもやっているから』とまったく悪びれる様子はありませんでした」
 因みに、ストーカーにあったM子も平野のアパートに出入りしていたから話はややこしくなる。目がぱっちりしたM子に平野はご執心だったという。
 平野重治は子供たちと中学校の窓ガラスを割ったとして器物破損、強盗致傷などで4回逮捕されている。
「器物破損や強盗致傷を否認していたが『私が責任を取らないといけないから』と一転して起訴内容を認めました。しかし強盗殺人は否認しました」(司法担当記者)
 2012年3月、平野重治に無期懲役が言い渡された。

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小林俊之(こばやし・としゆき)
1953年、北海道生まれ。30歳を機に脱サラし、週刊誌記者となる。以降現在まで、殺人事件を中心に取材・執筆。帝銀事件・平沢貞通氏の再審請求活動に長年関わる。