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"墨田区の珍宝館" 目指し「江戸屈指の花街・向島」を歩く【ヤスデ丸の1万逃歩日記 #9】(前編)

なかなか運動する機会もないため、毎日1万歩は歩くように心がけている編集部員ヤスデ丸(27歳・独身女性)。健康増進というだけでなく、散歩は日々の現実逃避にうってつけ。その道中で見たもの聞いたものは、こんなもの──

>>前回

東京がまだちょっと苦手。
埼玉生まれの埼玉大好き人間(厳密には地元・川越好き)てこともあって、7年ほど都内に暮らしているものの、なんかまだ東京に慣れない。

東京、というか都心にいる人(もちろんそこで生まれ育ったとは限らない)のどこかギラついた雰囲気とか、SNSで話題らしい店に並ぶ列とか、大きくて綺麗マンションとか、そういうものを見たりするのに妙に慣れない。

そんな私がここ最近、休日に行くところ。
東東京エリア。

(動画の編集まだ残ってるけど……)前回の浅草エリアに続き、今回はスカイツリーのちょっと向こう側、向島エリアへ逃避行!

*****

降りたのは東武伊勢崎線・東向島駅。歩いてすぐそこに和菓子屋を見つけたので、生菓子とどら焼きを購入。

和菓子屋「菓子遍路 一哲」さん。店名に全く負けない、オリジナリティとこだわりを感じるメニューが並ぶ
柿の上生菓子。200円ちょい。「ホンモノの柿らしくなるように、中に種子に見立てて豆を入れてあります」と店主の男性。甘すぎない餡と柿の風味のマッチが最高!


さて、この日のメインイベントは「大道芸術館」に行くこと。写真家の都築響一さんが集めた、主にエロにまつわる珍品が展示されてある施設だそうで、昔は花街だったらしい向島にオープン。たしか、先月でちょうど1周年とか。

花街らしさが残ってるのか不明だけど、とりあえず歩く。

駅からわずか5分ほど、廃校を発見。校庭(だったところ)にいるのはテニスをプレイするおじさんたち。

「(廃校してから)もう10年くらい経ったかな。いまは区が管理して、事前に予約すればこうして区民が使える施設として機能してるよ」

と、休憩中のテニスおじさん。

校門。表札は剥がされている
なかなか立派な校舎
「お前の席、ねえから!」

お次はお肉屋さんを発見!
こりゃコロッケ食べるしかないでしょ。ハムカツと、1枚ずつ注文。

「はーい、揚げるからちょっと待ってね!」

土曜の16時半ごろ、常連らしい人たちが今晩の夕食用か、ぞくぞくと肉を買いに来る。

「あれ、これしかないの? 足りるかな」
『計ってみるわよ。……うん、こんくらい』
「ちょうどいいじゃん、すげえな」

と、バラ肉を買いに来た男性とスタッフの女性。

待つこと10分ほど。気づくと5,6人の列。繁盛、繁盛!

「カツ待ってる子、どこだ〜」
『あの子じゃん?』
「いたいた! お待たせねぇ。あ、2枚一緒に入れてもいい? はーいありがとうね! また来てね〜」

渡されたアツアツの紙袋、中には明るいきつね色……ってより、もはやススキ色のカラッと揚がった白い衣の2枚のわらじ。めちゃめちゃ美味そう!

「ミートショップ フジイ」さん。お弁当も人気らしい
ハムカツ(左)とカレーコロッケ(右)。あわせて220円くらい。肉眼だともっと白い衣
数枚重ねたハムを揚げたシンプルなハムカツ。大判でサクサク
自家製コロッケは売り切れとのことで、カレーコロッケ。マイルドな甘めのカレー味で子どもも好きそう。中身ギッシリ、めちゃくちゃ美味い

食べ歩きしながらかつての花街エリアで赤線地帯だった「鳩の街商店街」へ。この日は10月28日ということで、ハロウィンイベントを開催していた。

商店街で開催していたハロウィンイベント「ベラボー市/ハトウィン」。見た感じ、ハロウィンはあんま関係ないっぽかった
「"蜜"を避けて楽しいお買い物」という誤植、もはや愛嬌があっていい

通りの掲示板を見ていると、足元に置かれていたガイコツの人形が音を出しながら突然踊り始めた。

同行していた友人、脅かされるのに弱いようで、めちゃめちゃオーバーに驚く。

「ワァッ! びっくりした!」

『びっくりした? それ、今回の当たりなの。アハハ!』

子どもたちにも好評だったというオモチャを指差しながら、道端に置いたパイプ椅子に腰掛けて2人で話し込んでいたおばさんがケラケラ笑う。隣にいるのはお母さん、87歳とのこと。

とすると戦争を体験してるのか。なぜ鳩の街なのか聞いてみる。

「特に何も関係ないのよ。でも、縁起が良いしね。みんな貧しい時代だったからねぇ」

かつては1000人を超える芸者が在籍していたという向島の花街。現在も、都内で遊べる芸者の半数以上を占めるのは向島らしい。

永井荷風の『墨東奇譚』の舞台は向島だったそうだけど、あの本、厚みが薄いからって理由で高校生のときに読んだものの、まったく記憶に残ってない。でもタイトルがカッコいいから好き。

現在も営業中の料亭も。置き屋らしい雰囲気はまだ残っている

花屋を営んでいるという母娘。せっかくだからと、店先に置かれていたディスカウントブーケを2ついただく。

「息子は町内会の幹事みたいのやってるの」
『それじゃあ忙しいでしょうね』
「うん忙しそうよ。さ、お勉強させてもらうわね」

そうしてピンクのバラ2本と、白い花をつけてくれたお母さん。購入額より絶対高いのに……。

娘さんの方は、イベントの関連で商店街をバタバタと右へ左へ忙しそう。

丁重にお礼をしてから、ちょうど店前を通り過ぎようとした娘さんにも急いで挨拶すると、

「ホントうちのお母さんいい人なんだけどね〜、気前もいいから商売上がったりよ〜」

と言いながら、店先に飾ってあった観賞用のミニカボチャを2つ、ボンッと手渡された。娘さん、遺伝子継いじゃってますって……! そして走り去る娘さん。足はえー。

「よかったらまた顔出してね。体には気をつけてねぇ」

87歳のお母さんに「体に気をつけてね」と言われるとは思ってなかったけど、なんだか身の締まる思い……。

ちょいと長くなったので、メインの大道芸術館は後編で。読んでくださりありがとうございます。また来週〜!

お母さんにまけてもらったバラ
チグハグな感じも気に入ってる♪

<著者プロフィール>
ヤスデ丸(やすでまる)
「実話ナックルズ」の女編集部員。埼玉生まれ中東ハーフ。いよいよアラサー。YZF-R3を手放して、車検のないニーハンに乗り換えたい今日このごろ。好きなプロテインは「ウマテイン」ミルクティー味。「1万逃歩日記」「裁判傍聴ファイル」など不定期で掲載中