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源氏物語バイトについて

当たり障りのない平和なことを書きたいので、源氏物語バイトについて書こうと思う。

どんなバイトをしてるのか

私は、源氏物語の翻刻の手伝い、というバイトをしている。(最近は休んでるが冬から再開する予定。)在宅で、「東大本」という源氏物語の写本を読み、『校異源氏物語』という活字の本と照らし合わせる仕事である。例えば「東大本」の第3巻5ページ目は『校異源氏物語』第m巻nページに対応しますよ、という形でスプレッドシートに書き込む。すると、いい具合に「デジタル源氏物語」というサイトに表示されるのである。機械音痴なので仕組みはよくわからないが、上手くいってるみたいなので私としては喜ばしい。

最初は辞書や資料を見つつ手動で書き込んでいたのだが、崩し字OCRなる天才システムが導入されたことで、機械が崩し字を読んで瞬時に活字に直してくれるようになり、作業効率が格段に向上した。多分唯一の学生バイトである私はお払い箱になるかなと思ったが、OCRも完璧に読めるわけではないし、書く人によっては癖字もあるので、ところどころ間違えてしまう。というわけで、機械の間違いを上手く見つけて手作業で直す、というのが、OCR導入後の作業内容となっている。

なぜそんなバイトをしているのか

私自身もともと古典文学に興味があり、進学選択時には文学部や教養学部学際日本文化論コースへの進学も検討していたのだが、生命を捧げられるほど好きな作品があるわけでもなく、研究で食べていくのは難しそうだなあと思って法学部に進学した。しかし、折角なら法学だけじゃなくて国文学もかじってみよう!ということで、2年のAセメスター(秋学期)に受講したのが、教養学部の「学際日本文化論演習Ⅳ」というゼミだった。

教養学部後期課程以外からこのゼミを受けていたのは私しかいなかったのだが、少人数ということもあって変体仮名の読解をみっちり教えていただくことができ、室町中期から後期の仮名文字の写本に関しては半年でそれなりに(活字の本か現代語訳をカンニングして良ければ結構自信をもって)読めるようになったと思う。ただ、武士の「~~~で候。」みたいな手紙とかは全く読めない。「東大本」と『湖月抄』しか読んだことがないのでご勘弁願いたい。

その授業が終わるときに、先生から「今『デジタル源氏物語』というプロジェクトをやってて、勉強になるから興味あったら連絡してね」というお誘いを受けた。最初はどっちでもいいかなーと思っていたのだが、法学部の授業は結構単調だったし、法学部のガチプロに議論で詰められたら勝てないし、カーとかアレントとか読んでないし(正直そんなに読みたくないし)、折角大学にいるならなんか研究活動みたいなことするのもアリだけど、その対象は法学でも政治学でもない気がするぞ、多分、ということで、箔を付けるために先生に連絡を取ってみた次第である。そもそもは無給という話だったのだが、私がバイト第1号らしく、「じゃあジュニアスタッフみたいにお給料出しましょう!」という話にしてくださり、在宅バイトとしてプロジェクトに参加することになった。

源氏物語バイトをしてよかったこと

塾講師の授業給と比べたら約3分の1なので給与として割のいいバイトか?と聞かれたらそんなことはないかもしれないが、やはり大学生として「箔がつく」良さはあると思う。

ゼミで変体仮名を習ったとしてもそれを就活や何かでアピールするのは難しいが、バイトで使っています、というのはかなり真に迫った「趣味・特技欄記載事項」になる。法学徒なのに変体仮名が読めます、東大のプロジェクトにバイトとして参加しました、というのがどの程度評価されるのかは知らないが、もし履歴書フィギュアスケートの芸術点があったら、オリジナリティもあって結構素敵な評価がもらえる気がするし、何より「特技」を書けることで得られる自己肯定感は無視できない。

あとは、文学をやりたいというかなり前からの願望を、少しではあるが達成できていることも自分としては大きい。文学は好きだから趣味で大丈夫と思って法学部に進んだ以上もう未練はないけれど、東大の古典文学研究に研究者の方々と一緒に主体として参加することができたのは、得難い経験であると感じている。


源氏物語は好きな作品で内容についても一家言あるのだが、この記事は当たり障りのないことを書く記事なので、ここまでとする。
また気が向いたら、「源氏物語から見る幸せな恋愛とは」とか、「高学歴バリキャリ紫式部はか弱い女を妄想の世界で殺す」とか、書いてみたい。



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