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朗読劇、はじめました

年明けから仕事やら体調不良やらですっかりサボってしまっていましたが、久々の投稿は、年末に開催した“朗読劇”についてのお話です。

クリスマスも目前の昨年12月23日、素敵な蔵書がいっぱいの友人宅を会場に、3人の子供と6人の大人が集まって、ささやかな朗読劇の会を開きました。

きっかけは、約1年前に近所の図書館で借りた1冊の本でした。

当時年長の息子、「かいけつゾロリ」シリーズや『いやいやえん』『らいおんみどりの日ようび』ほか中川李枝子さん・山脇百合子さんによる本など、だいぶん自分で読めるようになってきていたので、図書館ではそうした読み物系を探す一方、ちょっとユニークな絵本を探して、夜寝るときの読み聞かせもできるだけ一緒に楽しむようにしていました。

クリスマス前の時期、借りてきた本のなかにあったのが、トーべ・ヤンソン『もみの木––ムーミン谷のクリスマス』。一晩で読むにはちょっと長い物語でしたが、ムーミントロールたち登場人物(?)の声を演じ分けて読み聞かせをしているうちに、「このお話で、クリスマスの朗読劇をやったらきっと楽しいはず!」と一人ワクワクしてきたのです(ちなみに、息子は途中で寝てしまいました 笑)。

なぜそう感じたのか。その理由は、この物語を読んでいただければすぐにわかっていただけると思います(この本は絶版のようですが、物語はここに収められています)。ぜひご自身で確かめていただければと思いますので詳細は控えますが、ポイントは、素敵な挿絵は入っているけれど、この作品が基本的に文章による物語であるということ、そして読み進めることによって次第に明らかになってくる、愉快なオチがあることなのだと思います。

その際はもうクリスマスも目前だったため、企画を温めて一年後に実施することを目標に、いったん先送りにしたのでした。

それからあっという間に時が経ち、無為無策のまま、気づけばもう師走! 具体的な計画がなにもないまま、ぼんやり考えていた上記のようなことをFacebookに投げかけたところ、ありがたいことに興味をもってくれる方、参加を考えてくれる方が何人もいらっしゃいました。そこから、意見交換をしつつ実行可能で最もおもしろくできそうな形を考え、冒頭にあげたような形での会を開くことになったのです。

当日は、年末時期ながらぽかぽか日差しのある穏やかな日。参加してくださったみなさんで持ち寄ったり用意したりした美味しい食事を楽しみ、場がほぐれたところで、朗読劇を上演しました。

以下、反省と今後への展望を交えた振り返りを記したいと思います。

<出演者>
当初、自分一人ですべての役およびナレーションを演じ分ける(=ふだんの読み聞かせのスタイル)ことも考えましたが、結局、今回は出演者3名で行いました。ご協力いただいたのはOさん(男性)とYさん(女性)。ナレーション+10声の物語について、主にYさんに女性キャラクターを、Oさんに男性キャラクターを担当していただき、私がナレーション部分を朗読しました。

事前にテスト的に、自分一人で全部を演じて録音をしてみたのですが、やはり圧倒的に、多声で演じるほうがよいものになりました(当然といえば当然ですね)。男声・女声のメリハリがあるのも非常によかったです。3人で合わせたのは当日午前の1回のみ。でも、そのリハの時点でもすごくいい雰囲気だったし、本番ではさらにそれぞれアレンジをしたりと、より滑らかに演じられたように思います。

今回は、観客側はわずか6人(半分は子供)というとても小さな会でしたが、今後、もっと多い観客のいる場所で開催できるようなことがあれば、簡単ないくつかのセリフを、お客さん側にお願いできると、場の雰囲気を盛り上げられるのではないかと思っています。

<上演時間>
今回の『もみの木––ムーミン谷のクリスマス』、上演時間はほぼ30分。内容については後述しますが、時間については、やはりもう少し短いもののほうが、特に子供たちは飽きずに聞けるのでしょう。会として開催するのであれば、10~15分程度のものを2、3本で構成すると、観客側の集中力、および満足度としてはよりよりかもしれまえせん(あるいはよりメリハリをつけて、はじめはより短い作品で掴み、後半にやや長めのもの、という構成もありでしょう)。

<作品のテーマ・構成>
上演する作品の内容・テーマのレベル設定については、いろいろと考えることがありました。

そもそも絵を用いず、声だけの演技で観せるものなので、物語自体に、聞いていくうちにおもしろさが明らかになるような構造があると、魅力ある劇になると思われます(今回の「もみの木」は、そうした構造を持つ物語です)。でも一方で、そのようなちょっと複雑なつくりのお話を理解するのは、小さな子供たちにとってはちょっとハードルが高くなります。今回の題材は、はっきり言うとかなり大人向けだったかもしれません。小学校低学年でギリギリどうかな?というところでしょうか。

そうしたことから考えて、やはり「絵本の読み聞かせ」とは別のもの、ということを演者も観客側も共有したうえで、就学前後くらいから楽しめるような題材を探していけるとよいのではないか、と感じました。上でも書きましたが、上演時間と関連して、短くシンプルに楽しめる作品と、ちょっと理解レベルの上がる作品を、上手に組み合わせるのも、演じる側の腕の見せ所になるかもしれませんね。

<演出>
紙芝居ではないので、演じながら物語と絵をリンクさせて示すことはしませんでした。ただ、キャラクターのイメージを掴むための補助線として、挿し絵のコピーを数枚、前方に貼っておきました(余談ですが、この本の挿し絵、本当に素晴らしい雰囲気なのです!)。また、一つだけ演出として、冒頭と最後に小道具を使いました。何か目を引くものがあるのは、掴みとしてはとても有効だと思いますので、物語に合わせてちょっとした仕掛けを考えるのもおもしろいと思います。

また、挿し絵のコピーをあえてちょっと多めに持っていき、また色鉛筆も持参しました。そうすると、子供たちは「塗り絵」として楽しむことができます。上演前に塗り絵で遊ぶところから始めると、子供たちの気持ちも物語のほうに向いてくる可能性が高くなりますので、この方法は今後もぜひ活用したいものです。(画像の塗り絵は、参加者のKさん画)


簡単ではありますが、以上が今回上演してみての雑感です。

参加者の方から、「親として自分が読み聞かせをすることはあるけれど、自分のほうがじっくり聞かせてもらう機会はそうそうない。大人にとって楽しくて贅沢な時間」という感想をいただきました。確かに、そうなんですよね。演じるのも楽しかったのですが、自分もほかの人に演じてもらって聞いてみたくなりました(笑)。

また、演じてみた側の感想としては、「声で演じる」のはとても楽しい、ということ。まず、思い切りのびのび声を出すのが気持ちよい。そして、身体的な演技となると気恥ずかしいと感じることもあるでしょうし、なかなか気軽にはできないかもしれません。でも、声だけなら、気負わず簡単に、自分ではない自分に入り込むことができます。また、リハや練習もそこまでシビアに考えなくてもよいですから、セッション的にその場でいきなり行うことさえ簡単にできてしまいます。

半ば思いつき的に初めてみた朗読劇の会ですが、想像以上におもしろい経験となりました。できれば、継続的に企画して、ごく少人数の集まりから多くのお客さんを招けるような場まで、また子供に喜んでもらえるものから大人が集って楽しめるものまで、柔軟につくっていきたいな、と考えています。

というわけで、ご興味をもっていただけるようでしたら、機会を見つけて、ぜひ一緒にやってみませんか? よい物語をみんなで探してストックしておいて、人が集まることがあればサッと演じてみる。観客がたくさんいいるのもいいけど、自分たちだけだっていい。自由に、しなやかに。

そんな感じで、「声だけの劇団」みたいなものを、今後もまた広げていけたらいいな、と思っています。

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