「小さな小さな朗読劇の会」<準備編>

1月は新しい記事をまったく書けぬまま、過ぎ去ってしまいました……(2月も既に半ば過ぎ……)

その最大の理由は、1月末に開催した「小さな小さな朗読劇の会」です。私自身が企画し、準備を進めていったのですが、年明けから一気に仕事が積み重なっていたことも相まって、1月は本当に目の回るような思いをすることになりました……

2017年末の、もっともっとささやかな朗読劇の会の経験を踏まえ、今回はもう少し多くのお客さんを招いて開催しました。今回の催しを、どのような考えから企画し、どのように形にしていったのか。そして、どのような場になったのか。第一には私自身の備忘と今後の足がかりとするための記録としてですが、興味を持っていただきながらもご参加いただけなかった方へのご報告として。また今後、朗読や本にまつわる同じような、あるいは何か新しい試みについて、参加してみたい・自分でつくってみたいという方への参考になればと思い、簡単ではありますがまとめてみたいと思います。

<そもそものはじまり>
「“朗読劇”をやってみよう」と思ったきっかけについては、前述のささやかな朗読劇の会についての記録をぜひご覧ください。その際は、まだ本当にテスト的な試みで、友人同士の集いのなかで演じてみて、あれこれと感想をいただくというものでした。

半ば思いつき的にやってみた企画でしたが、想像以上におもしろい経験となりました。そして、「できることなら、継続的に企画して、ごく少人数の集まりから多くのお客さんを招けるような場まで、また子供に喜んでもらえるものから大人が集って楽しめるものまで、柔軟につくっていきたい」と、そのときの記録の最後に記しました。

その後、何も着手できぬに時が過ぎてしまったのですが、折々に、前回の記録をご覧になった何名の方々から、朗読劇の会への興味を伝え聞く機会があありました。その度に、「またやりますので、ぜひ!」と威勢ばかりよい返事をしていたのでした。

そうして夏が過ぎ、秋が深まりつつある頃、「さすがにこれはまずい」と感じて、上演に向く作品探しに着手しました。まずは、家の本棚やこれまでに読んできた本の記録の見直しから。そして最寄りの図書館の子供向けの本棚を巡り(一見地味ではありますが、ここの本棚の選書・構成はとても素晴らしいのです)、さらに親しくさせていただいている近所の児童書専門店ティール・グリーンさんに相談に伺ったりもしました。

そして、11月中頃までには、いくつか候補となる作品が見えてきたのでした。

<開催決定までの経緯>
でも、この時点で決まっていたのはたったこれだけ。

今度は前回よりも、もう少しだけ多くお客さんを招いて、ちゃんと“観せる”ものとして実施したい。では、どこで開催すればよいか。どのくらいの人が来てくれるものか(出演してくれる人も含めて)。さらに、いつ開催できるのか。この3つの点は、相互に関わり合っているので、それぞれが曖昧なままだと、いずれもが決めがたいもの。

そこで、とりあえずFacebookを通じて、「こんなことを考えています」と投げかけてみました。おおまかな規模、そして会場として使用させてもらえそうな場所の見当をつけつつ、少しずつ詳細を絞り込んでから、再度Facebookで参加希望の呼びかけをしてみました。

当初は年内、なんとなくクリスマスに絡めたイベントとして12月下旬の開催を目指していました。ただ、当初より興味を持っていただきながら参加が難しい方が少なくなかったこと(クリスマス、年末ですから、急な企画では当然ですね)、演者として頼りにしていた方の参加が難しい、ということがわかりました。そして、予想していた以上にに参加を希望してくださる方が多く、「これは演技はもちろん、会全体の演出・準備をきちんと練らないといけない」と自分の準備不足を痛感させられたのです。

そこで、年内の開催はいったん見送ることにしました。Facebookのクローズドのイベントとして立ち上げ、興味を持ってくださった方を中心にやや広めに招待を送り、およそ1ヶ月後、年が明けて1月末に開催することにしました。

<準備のポイント>
とはいえ、1ヶ月なんてあっという間。仕事が重なることもわかっていたので、できるときに少しずつ、準備を始めました。

まず着手したのは、仲間を募ること。朗読劇は、声だけを使ってつくりあげる劇です。もちろん、一人で声音を変えて行うこともできます。でも、多声で構成された作品を、複数の演者の声で(さらに、それぞれが複数の声を担当して)演じることで、物語に奥行きが生まれます。幸い、前回の演者を中心に、自分を含めて、女声2名・男声2名の出演者が決定。さらに、会の運営のサポートにも友人が手を上げてくれて、スタッフチームが決まりました。

次の作業は、上演作品のセレクト。11月の時点でおおまかに候補作品を絞り込んでいましたが、参加者の顔が見えてきたところで、改めて絞り込みに取り掛かりました。実は、年末に企画を動かし始めた時点では、参加者のイメージがやや漠としていたために迷走しているところがありました。言葉の劇としてのおもしろさを表現したい、そういう思いもありましたが、もともとこの企画の根っこには「子供と楽しむ」、もっと言えば「子供が楽しむ」というコンセプトがあり、会の主役は子供たちです。1ヶ月という時間ができたことで、そんな基本に立ち返り、候補作品を見直しました。

先ほど述べたように、朗読劇は一人で演じることもできますが、多声にすることで幅や奥行きが生まれるものだと思います。そこで、まずは「多声」の物語を探してみようとしたのですが…………意外に思われるかもしれませんが、児童書、特に小さい子供に向けたものほど、多声で構成される物語は実は多くない、ということが見えてきました(これはおもしろい発見でした)。

小さい子供は、まだ物語を論理的に理解したり、抽象化して受け取ったりはしませんよね。だから、多くの絵本や小さい子供向けの本は、作品の世界に入っていきやすいように、限られた登場人物の間で交わされる会話で構成されているのではないでしょうか。例えば、『がまくんとかえるくん』シリーズ。この本は、基本的に2人だけのやりとりで物語ができています。そのほかのよく知られた絵本などでも、描かれる登場人物は多様であったとしても、セリフを述べる人物は比較的限られているものが多いと思います。

そのほか、前回の経験から大事だと感じていたのは、1つの作品の上演時間が長くなりすぎないこと。そして、声だけで演じるからこそ、最初に物語についての具体的なイメージを持ってもらいやすいものであること。ということで、ポイントは……

・作品に関するイメージがある程度知られている(作家のこと、主たる登場人物のこと、など)、あるいはイメージの抱きやすい登場人物が出てくる
・登場人物が多めで、多声で構成されている
・上演時間が10分程度に収まる

複数の作品を演じるのであれば、短めの作品と長めの作品があって、それによってメリハリをつけることも考えられますね。このような観点で、改めて候補と考えていた作品を見直し、また新たに検討してみました。

<いざ、準備開始!>
そうしておよそ4〜5作品に絞り込めたので、ここからはより具体的な準備にかかります。

最初は、ひとり自宅でテスト朗読。時間を計りながら、それぞれの作品を朗読してみます。いずれも、収まってほしい尺よりも数分〜5分ほど長い印象でした。

テスト朗読をしてみて「長い」と感じたから、これらの作品ではダメ? いえいえ、そんなことはありません。どんなに楽しく魅力的な絵本や本であっても、もともとは「読む」ものとして描かれています。言葉の劇に乗せたときに、どうしてもダブついてしまう言葉があります。それは語りのリズムをギクシャクさせてしまいますし、何よりも全体の尺が長くなってしまい、子供たちが飽きてしまいますね。

ということで、およその尺を把握したら、物語を「シナリオ化」する作業に入りました。せっかく開催を決めてから当日までに時間を設けたので、ここがいちばんの工夫のしどころです。

登場人物同士の会話の間に挟まれる「○○はこう言いました」「と、○○は考えました」のような状況説明の文は、朗読劇では外したほうがテンポがよくなることも少なくありません。会話のセリフのなかにも、声に出して読むとやや重たくなるところは少しすっきりと。また、収めたい時間をイメージして、物語の流れやおもしろさが失われないようにしつつ、ときには大胆にし省略をしてみたり。常に意識したのは「小さい子供たちが聞いていて、飽きずに楽しめるにはどうアレンジしたらいいだろう?」ということ。ただ縮めるだけでなく、盛り上がりそうなセリフや、繰り返しを生かすことなども考えながら、各作品をシナリオ風に整理していきました。

およそ完成したシナリオをスタッフチームで共有し、実際に行う演目とその順番を決定。さらに、ふだん本をきっかけに開いている愉快な集い「団地の読書会」の新年会の際に、行う演目のプレリハーサルと、いろいろ朗読を試してみながら会全体の演出を考えてみました。手ならぬ“口”を実際に動かしてみると、あれこれと楽しいアイデアが湧いてきます。何かを企画することの楽しさは、ここにこそありますね。

あっという間に開催まであと5日ほど。プレリハを受けてさらに整理した台本を用意し、都内某所に出演者で集まって、リハーサルを行いました。作品事の配役を割り振り、実際に演じてみて時間感覚をつかみ、各配役や個々のセリフのイメージについて意見を交わして、作品の世界観の作り込みをしていきました。

その後は、私自身が仕事のためにほとんど体があかず、スタッフチームで諸々連絡を取り合いながら、時間が縮むようにしてあっという間にもう前日。参加者リストやスタッフで使うタイムテーブルなどの必要書類をまとめたり、大道具として使う絵を描いたり、当日の運営のシミュレーションをしたり。そして一日中、スタッフチームのグループメッセがものすごい勢いで遣り取りされていたのでした。

(続)※思ったよりも長くなってしまったので、当日のお話はまた改めて!



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Jun Kobayashi

Librerial Gravitation~本有引力~

本から本へつながる話 (※テキスト・画像の無断転載はご遠慮くださいね)
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