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ニューカマーが思うアマチュア無線が流行らない理由と対策案


はじめまして,初心者アマチュア無線家JK1KTTです
初心者なのに資格だけは1アマ・一陸を所持しています.資格に負けないよう研鑽中ですが,関東は建物が混み合っているので良いリグを入手してもアンテナを上げることが難しく実質的には3アマで十分と思っています.
実家のある関西や,趣味の島旅に無線機を携行してのんびり楽しんでいく予定です.

まず始めに簡単に自己紹介をしておきます.

JK1KTTの活動

  • 高校時代

    • プログラミング(C/C++)やPIC,AVR(アセンブリ)でのデジタル回路電子工作を楽しむ

  • 大学時代

    • 情報工学修士

    • アルバイトでFPGA開発

    • 准教授の影響でオーディオアンプなどのアナログ工作も

  • 社会人

    • 8年目

    • 1年目に一アマ・一陸取得

    • コロナ禍でレザークラフト・バイオリン・塗装にも着手

    • 2022/1月に無線局開局(ID-52),電波環境が悪くほぼ使わず

    • 2023/4月,引越を機にアンテナをベランダに設置,時たま移動運用

趣味を全部こなすのは難しいので電子工作を軸に楽しんでいたら無線は非常に相性が良く楽しむようになりました.
アンテナ開発・評価の仕事もしていたので八木アンテナや電鍵も自作です
こんな私が,業務・趣味で無線通信をしてきて思う,アマチュア無線の課題を挙げていきます

流行らない理由

  1.  宣伝が下手

    1. スマートフォンが普及し,LINEや電話,またclubhouseのような多人数音声交流ツールが存在する中でわざわざアマチュア無線を始める理由付けをJARL(の資料)が説明出来ていないのです
      愛機ID-52を入手するため県を跨いで秋葉原にあるお店に行く前に読んた資料で,D-STARという通信モードやQSLカードなどの存在なども知っていましたが,そのJARLの資料を読んだときは正直 「え?何が嬉しいの?」 状態でした.

  2. QSLカード

    1. だってそうでしょう?ほんのちょっぴり興味を持って資料読んだときに「QSLカードを交換しよう!」なんて言われても,手紙を書く文化の薄い若年層は面倒臭いとしか思わないでしょう?私は筆まめな方ですがそれでも(え?手紙のように何か個人宛の文章もなく,レポートや運用場所を送り合うだけ?交信時にメモしとるやん,要らんやろ)と思ってしまいました.嵩張るし.今の高齢者層は広い家に住んでいるから無線機も置き放題,アンテナも立て放題,大量のQSLカードの管理も困らないかもしれませんが,今の若者にはいずれもほぼ不可能です.

    2. 何事も経験,と思い引越後すぐの時期に数局にQSLカードを送り数ヶ月経ち,ふとまだお相手からのQSLが届いていないことに気がつきました.私の出したカードに不備があったのかと調べたら,QSLカードの配送には1年かかるというではないですか.
      はい?春節中の中国に発注した基板だって一ヶ月経たずに届きましたよ????郵便局と提携しろよ
      これは間違いなく,新規参入者のモチベーションを下げる一因でしょう.私は下がりました.折角興味を持っても,転勤や引っ越しなどを考えると即時性のないQSLサービスはストレスでしかありません

  3. 海外局との交信

    1. これはアマチュア無線の醍醐味というのは認めましょう.ですが,ほんのちょっと興味を持っただけの人に「海外と交信できるよ!」で理解されるでしょうか.Tandemでええやん

    2. 私はDX局に限らず,交信の楽しみは自分のちょっとした工夫でぐっと受信感度が上下したり,送信出力をあげなくてもこれまで届かなかったエリア・局に声が届くようになる事だと思います.創意工夫がアマチュア無線の醍醐味なのに,下にも掲載したHPの画像からは何も読み取れません

  4. コンテスト

    1. コンテストの存在自体は現に無線活動を活性化していますから良いのですが,宣伝としてはまずいと私は思います.

    2. コンテストというのは競技で,多くの場合交信局数を競います.すなわち短時間交信,つまり定型文交換になります.上述した創意工夫の結果として交信できる局が増えるならばモチベーション維持・アップにも繋がるのですが,現状はそういう説明になっていません.
      加えて,相性の問題ということは重々承知した上で書くと,私自身サービスで何度が応じたことはありますが会話がないので正直楽しくなかったです

  5. 既製品ユーザが多い

    1. 素晴らしいことです.無線機メーカ,アンテナメーカなど関連業者の日々の商品開発の賜です.お布施さえすれば解決します.しかしそれではただの金持ち道楽です.知識もつかず,ハムコミュニティの弱体化につながります.

    2. 無線機もアンテナも自分で作ることが可能です.特にアンテナや同軸ケーブルなどは複雑な設計も不要で小学生も簡単に手を出すことができますし,自作記事をブログなどにまとめている無線家も多くいます.しかし,実際に交信するとそのようなHand made userはごく少数で,私はこれまで自分を除いて1局しか交信しかことがありません.

    3. 今はフリーのシミュレータも,廉価な測定器も簡単に手に入る時代なのに,折角飛び込んで交信してもそのような方が全然いなければ,無線通信の知識がない場合は設備を揃えることに頭が傾いてしまうでしょう

    4. 限りある周波数資源の中で,アマチュア無線がこれだけ多帯域に渡って広大な周波数割り当てを得ているのは,青少年の育成・また通信実験を通じて通信関連技術の発展が根底にあるためです.
      既製品大いに結構,入門には是非活用しましょう.でも,本当の楽しさって,限られた資材・測定器を使って作った自作アンテナやCW送信機でクリアな交信が成功することにあるのだと私は考えていますし,実際手製のアンテナや同軸で交信成立したりノイズフロアが下がると一人心の中でガッツポーズをしています.

  6. 違法無線

    1. これはなんとかして欲しい

    2. 違法無線があることで,アマチュア無線自体が悪く見られるのです.

    3. 実際私も,自分で開局するまでは(違法トラック達が荒らし回ってる帯域でしょ?免許持ってるアマチュア無線家達も高齢者多いしまともな人なんてほとんどいないスラム状態だろう)と思っていました

    4. 実際開局して交信すると,ちゃんとバンドプラン(総務省が定めた各周波数の利用方法)を遵守しているアマチュア無線家達は非常に紳士で,初心者の私にリグの使い方や自身の設備紹介,雑談等々非常にフレンドリーに接して頂いています.

    5. ところが違法無線はひどい(違法無線の見分けは簡単.コールサインを名乗りません).仲間に向けた発言とはいえ,公共の電波に乗せるのが憚られるような悪態や下ネタ発言が飛び交い,話し方も粗野です.正直下品です.

    6. アマチュア無線を知らない家庭でもし子供が親に「アマチュア無線始めたい!」なんて言うと,真っ先に違法無線,あるいは違法無線による印象の悪さが親の頭によぎるのは間違いありません.

改善案

無論,問題を指摘するだけなら誰でもできるので,私なりの改善案もまとめておきます.いずれも一朝一夕では解決しませんがコミュニティ全体で協力していくことが重要と考えています

  1. 初心者へのアピール改善

    1. 対象を明確にするべきです.

    2. 趣味なので誰でも始められますが免許は必要ですし,決して安くはない無線機も揃える必要があります.

    3. そして前述したように,誰とでもインターネットで話せる現代においては「いろんな人と交信できる!」だけでアマチュア無線に引き込むのは難しいのです.

    4. それよりも

      1. 広大な実験場

      2. 割当周波数内であれば,免許を取れば何をしても良い(言い過ぎ)

      3. 変わった実験をするときには気軽に相談ください!
        などなど,免許を取るからこそ許される行為をメインに押し出すべきです.ちょっとでも工作や通信に興味がある人間ならば興味を惹かれることでしょう

  2. JARLの教育サービス

    1. JARLの活動を全て把握しているわけではありませんが,ハムフェアの他,ごく小さな講習会や通信講習を時たま実施していると認識しています(間違っていたらすみません).

    2. もっと大々的にやるべきです.3人に1人がラジオ少年だった昔とは違って,若人のまわりにそもそも無線をたしなむひとがいないのですから,発信するフィールドが狭くては誰にも届きません.

    3. Maker Faireのような拠点型イベントでも良いですし,コミケなどでも無線機は使われているでしょうからブース出展するのも面白いかもしれません.

    4. 高齢化が進んでいるのかもしれませんが,JARL社員さんは元は皆さんラジオ少年だったのでしょう?技術に関する貪欲さそのままに,JARLの積極行動に期待します

  3. 通信技術の情報公開

    1. 交信すると,どの局も強い個性があり話していて非常に楽しいですし勉強になります.

    2. 通信機の構築環境が各局で異なるので経験則になるのは仕方ないのですが,デジタル通信全盛期に参入してくる方々には是非とも,技術的背景の理解も進めて頂きたいと考えています.

    3. 基本的な知識は従事者免許取得時に勉強されていると思いますが,それを実践で活用されている方はごく僅かな印象があります.

    4. 例えば,アンテナをDPからn-elements Yagiに交換したとき,理論的に交信できるエリアはどれほど広がるのか,評価してみるだけでも面白いはずです.日本は山がちですし決して理論通りにはなりません.その差分を評価するだけでも電波伝搬やグランドの取り方,変調方式による差など色々と実験したいと思える内容が湧いてくるはずです.

    5. そういった実験の場を提供するのはJARLの仕事でもあり,我々すでに開局しているアマチュア無線家の使命でもあると考えています

    6. できれば通信機開発メーカ各局にも,受信機の受信性能について数値を公表して欲しいところです

以上,長くなりましたが私が考える,アマチュア無線が流行らない理由とその対策案でした.

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