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4Kデジタル修復版で甦る、永遠の”名作”「海の上のピアニスト」

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1999年に公開され、大ヒットを記録した名作が帰ってきました!

この映画が持つ、魔法のようなきらめきを放つ作品にとって、時間というものは関係ないと言ってもいいと思っています。

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そう、そのタイトルをいつ聞いても、いつ目にしても自分のなかの記憶がよみがえってきて、その甘酸っぱい切なさがこの映画を永遠の名作にしているのでしょう。

★ ☆ ★

~「”1900”/ナインティーン・ハンドレッド!」~
この甘美な響きに心を揺さぶられない人はいるでしょうか?
あの、ティム・ロスの甘いルックスと相まって、限りなくロマンティックな世界観の余韻に浸る心地良さ…

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生まれたてで船に残されていたひとりの赤ん坊。見つけたおじさんが親代わりとなり、いつくしんで育てられます。もちろん、他の船員さんたちからも可愛がられ、すくすく素直に成長した彼は、やがてダンスホールのピアノ弾きになります。

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即興演奏が得意で、その人柄から誰からも慕われ、尊敬されて、いわゆる村社会(船の中だけでの人生だった)でしか生きられなかった天才ピアニストの生きざまが描かれています。

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生涯一度も船を降りなかった理由と、一度だけ大地を踏む間際に船に引き返した理由から、一人の孤独な男性像が浮かび上がってきます。

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やがて、老朽化した船が廃船となり、爆破が計画されます。彼と親しかったトランペッターが、彼に船を降りてミュージシャンとしての新しい道を説きますが、彼の心はそこにはありませんでした。
沈みゆく船と運命を共にすることを選んだ悲しい人生に涙が溢れてきました。

この映画ほど私の心をかき乱すものはないかもしれません。ティム・ロスの哀愁漂う風情が見事にマッチして、永遠に映画史に残る作品に仕上がっていると思います。

💛この映画のなかで印象的だったシーンを集めてみました💛

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●少年になった”1900”が船窓から外を見つめています。深い哀愁が漂い、ついもらい泣きしそうになりました。

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●華やかな人たちが行きかう通路に一人立つ”1900”。ここに身分の違いが表現されているように思われます。どこまでいってもお客様は別世界の人。船を降りたら、赤の他人へと移り変わる、つかの間の触れ合いの儚さ…

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”1900”が大広間でピアノを演奏し、客が優雅に踊り回る夢のようなひと時です。これこそが豪華客船の生命線ともいえる象徴でしょう。その真ん中にいる時こそが、”1900”の至福の時だったのではないでしょうか。
すべてを忘れてダンスと音楽の世界に酔いしれる夢の時間が彼の人生のすべてだったのかもしれません。

●大きなハイライトのシーンといえば、ここですね。ジャズを始めたとされる大御所が記者たちを引き連れ、鳴り物入りで派手に登場します。

そして、”1900”にピアノ演奏を挑みます。代わる代わる演奏する実力者どうしの競演には観客も固唾を飲んで見守ります。最後の曲を弾き終わったジャズの王様 ♪ が「どうだ!」と言わんばかりに胸を張り、じっと見つめる傍らでピアノに向かう”1900”

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おそらく彼の頭の中にはこの時点ですでに“勝利のファンファーレ”が鳴り響いていたと思われます。「僕の勝ちだ!」と。

ピアノを弾き始める前に、”1900”は友人からもらったタバコをピアノの上に置きます。これは何を意味するのでしょうか?それは後のお楽しみ💛

そして、”1900”が激しくピアノを叩くさまは圧倒的でした!そのテクニックは並みの弾き手ではないことを物語っていました。

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やがて静かにタバコを掴み、ピアノの弦にそっと触れると、タバコに火が付いたのです!テクニックを駆使したためにピアノの弦が熱くなっていたからでした。それを見越していた”1900”の余裕を表現しているのですね。

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それを見たジャズの王様 ♪ は自分の負けを認める以外になく、その後、そそくさと船を降りていったそうです。

”1900”のピアノ演奏が世間に知れ渡っていたようで、ある日彼の演奏をレコードに吹き込むために音楽業者がやってきます。彼が演奏した1曲を収めた原盤から親しんでいたメロディーが流れてきて驚く”1900”。蓄音機はまだそれほど普及していなかったようですね。

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「レコードが売れれば大儲けができる」と企む業者に対して、”1900”「僕の音楽は渡さない!」と拒絶し、原盤を取り上げます。

●ピアノを弾いていた”1900”がふと見た船窓に映った一人の少女。なぜか心を惹かれます。そして、甲板で彼女の話に聞き耳をたてる”1900”

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実は、以前”1900”が船の中で知り合った初老の男性の娘だと分かったのでした。その男性はアメリカからイギリスへ渡り、新しい仕事と生活を始めると言っていたのです。

”1900”にとっては、おそらく初めての恋。彼女のそばにいることを願ってもかなえられない切なさが伝わってきました。

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ある日、意を決して、雨の甲板に立つ少女に近づこうとしますが、邪魔が入り、彼女との接触を断念します。実は、彼は自分のピアノ演奏が入った原盤を彼女に渡そうとしていたのでした。それが彼にとって精いっぱいの愛情表現だったのでしょうね。胸が締め付けられるシーンです。

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●人生で初めて陸に降りる重大決意を持って、タラップに降り立つ”1900”。船上からは仲間たちから見送りを受けます。ようやく船から降りる気になったかと誰もが胸をなでおろす瞬間ですが、まさにその時、彼の心に去来した想いを本当に知ることができる人はいないと思います。

船に戻る直前に”1900”が波間に投げ捨てた帽子が、彼の胸の内を語っているかのようでした。

●無二の親友だったマックスは現在は陸で生活をしていますが、暮らし向きが悪く、何よりも大事なトランペットを売るために楽器店を訪れ、”1900”のピアノ演奏が入った原盤を偶然発見します。

店主との会話のなかで、あの思い出深い船が老朽化してもうすぐ爆破する運命だと知るのでした。

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あわてて船に駆け付けたマックスは、船内に”1900”がまだ潜んでいるのを確信し、彼を探しだして、船を降りるよう説得しますが、船と運命を共にする決意は揺るぎませんでした。涙ながらに下船するマックスに最後の語りかけをする”1900”

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この運命は、悲しい船員の性でしょうか。
私は思います。もし、”1900”が物心つく前に、普通に港に着いたら陸に上がる習慣がついていたらと…
そのように育てられていたらと…

でも、そうでなかったからこそ、この映画は名作となり得たのでしょう。これほどまでに美しく、はかない悲しい物語に。

そして、忘れがたいテーマ曲を世に送り出してくれたエンニオ・モリコーネに感謝を捧げたいと思います。




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