『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』

ブログと同じ内容だが、こちらにも投稿することにした。
以下本文。


昨日、

クローネンバーグの新作を観てきた。

タイトル以外の前情報は全く入れずに。


全体の感想としては、

とても満足である!


私は外から体を傷つけるシーンというのは苦手なので、

そういう点は辟易したが、

それ以外……あの椅子とかベッドのフォルムと、

それらの何とも言えないヘンテコな動き等が面白かった。

特にあの椅子での、

グラグラ動きながらの滑稽な食事シーンは、

出てくるたびに本当に可笑しくて楽しめた。

こんな映像はクローネンバーグでしか観れない。


以前誰かの評論で、

「クローネンバーグ(初期)の異様さは、

外から傷つけられて内臓が露呈するのでなく、

内臓が自らの意思で外へ出てくるところだ。」

とあるのに共感し、

その異様さが魅力なんだよなと頷いていたが、

中期の『イグジステンズ』では、

やたら外から生物を切ったり割いたりするシーンがあったり、

今回ではモロに人体にそれをするシーンが多かったりと、

以前のそういう内臓自ら外へ出るという意味の映像でのらしさは、

後期に向かうほど少なくなってきている気がする。

というよりも、

それらは今作での椅子やベッド、

『イグジステンズ』でのゲームポッドやピンクフォン、

『裸のランチ』でのセックスブロブなどのデザインや動きの魅力に、

代替されているのだろうと思うが。


だが、

体内に創造的な臓器が生まれ、

その美や独自性に注目するという、

初期の『クライム・オブ・ザ・フューチャー』で扱われていた

コンセプトは、

今回何度も明確にセリフで語られていた。


それから『デッドリンガーズ』でも語られていた、

「インナー・ビューティー・コンテスト」というワードも

またまた出てきた為、

おっ……今回はついにコンテストの情景も出てくるのかと期待したが、

これは言葉だけで映像にはなっておらず、

ちょっと残念であったが。


そうそう、

パンフによるとアテネでのロケだったらしいが、

作中ではよく判らないどこかの町という世界観で、

各屋内の様子も、

クローネンバーグといえばごちゃごちゃ物の多い室内が定番なのに、

今作はどこもやたらと物が少なくシンプルで、

その分汚れとか質感とかに凝っていた感じだったが、

屋内外全てが簡素な舞台セットみたいな独特な雰囲気で、

それがとても良かった。

ベッドの初登場のシーンなんか、

ダリの初期の作品かと思うくらいである。


でもクローネンバーグも近年作風が変わってきたなと思っていたが、

今作を観て、

やっぱりクローネンバーグはクローネンバーグだったと、

改めて関心した。


80歳となり、

自身の初期作とほぼ同タイトルをつけるなんてと、

私はこれがクローネンバーグの最後の作のつもりで観に行ったのだが、

どうやらもう次回作に取り掛かっているらしい。

凄い!


ただ、

『ビデオドローム』『裸のランチ』『イグジステンズ』の

系列に入る作風のものは、

今回でもう終りなのではないかと思っている……。


いや判らないが。






















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