イベントカバー写真

これからの時代、死ぬまで現役でいるためには? ~ノープランから生まれる価値を体感する①~

2019年3月14日に行われたイベント(「感じる知性」を取り戻そう!~ノープランから生まれる価値を体感する~)の内容、ほぼ原文そのままです。

*イベントの概要

https://kanjiruchise2.peatix.com/

*写真の一部は下記からお借りしていますhttps://www.facebook.com/yamabushido/


○ほら貝の音色から、場の清々しさが生まれる 

柏原:今日の場のテーマは「ノープランから生まれる価値を体感する」なんですけれども、イベントとして何かすごいものを提供するというようなことではなくて、シリーズになっている「本の企画を一緒に考えませんか?会議」の第2回です。イベントではなくて会議なので、ぜひ皆さんも参加していただきたいと思っています。
 事務的なことだけお話しすると、お菓子は自由に食べてくださいということ……って、もう皆さん召し上がっていますね。あとお飲み物も自由にどうぞ。
 ここは何かを強いられる場ではないので、お手洗いだとか、途中で都合が悪くなってしまったら、ご帰宅も自由にどうぞということです。そんな感じで進めていきたいと思っています。
 ノープランなんですけれども、何からやりますか?

星野文紘(以下星野):やっぱりほら 貝だろうな。

柏原:そうだ、この場も写真NGの方以外は写真を撮りいただいて大丈夫です。SNSのアップももちろんOKです。というかどんどんアップして拡散していただきたいと思っております。

星野:やっぱりさ、俺ほら貝吹くと勤行やっちゃうよ。やっちゃう。勤行から行こう。祈り、祈り。じゃ俺、先に準備するよ。

渡辺清乃(以下渡辺):えっ?ほら貝あるんですか?さすが。今日のリュックはそんなに大きくなかったはずなんですけどね。なんでも入っているんですか?

星野:山伏はほら貝と錫杖と鈴は常に。

柏原:いつも持ち歩いているんですか?

星野:常にリュックに入れているよ。リュックっていいね(笑)。中を開けるとほら貝とこういうのしか入っていないよ。空港でびっくりされるんだよ(笑)。一回「これなんですか?」って言われて……。ヤバかったよ。これ没収されそうになった。これ没収されたら俺、山伏じゃなくなっちゃうよ。
 それじゃあ、今日はみんなが神様。

(鈴の音)

 勤行をやる人、いっぱいいるからご一緒に。勤行できる人、こっちに来て。ほらほら、マユミ、お前たちもできる。レナもそう。サトケン、お前もできるし。言われる前に出てこい、みんな。

(数人が移動)

 じゃあ皆さんを八百万の神様にして。ほらから始めよう。

(ほら貝の演奏と勤行)

星野:はい、清々しいね。清々しいんだよ。だからさ、こういう清々しさがさ、山に行ってもそうだ。山で修行をして山から降りてくる。清々しい。お祈りをしても清々しい。この清々しさが何か生まれ変わったような気がするにつながるんだろうね。これが大事なの。生まれ変わるということ。この清々しさがいいだろう。
 だから、祈りをするから宗教だと感覚で捉えている人がいるが、それは違う。祈りなんていうのは昔は日常の生活の一部なんだ。日本人は。それはすべて山や川や自然そのものに手を合わせできたんだ。それは宗教じゃないよ。生活の一部なんだよ。
 だからお祈りというのは……いま祝詞とか激しいのをあげたけど、これは音なんだ、音。われわれいろいろなところに行ってね、去年もモロッコに行って、イスラム教の聖職者と一緒にお祈りしたよ。10分ぐらい。その後、われわれはほら貝を吹いて、今のを披露した。言葉はわからないけれども、音だったわけさ。イスラム教のお祈りはすぐ入ってくる。われわれのほら貝と今のお祈り、これらがスイスイ入ってくる。何の違和感もない。


 だからあまりにも決めつけている。こっち(頭)で。全て頭で決めつけている。音なんだよ。

 だからここで舞う人がいて、音が出たらひとりでに体が動いてしまう。これは、 祈りだよ。いろいろな音もすべて祈りなの。音が出れば、体が動くじゃないか。それは日常の生活の中なんだよ。そこに取り戻していかなきゃね。そこに取り戻していく事なんじゃない。こういう場は。
 こんな日本橋のど真ん中でさ、ほら貝吹いてお祈りしているんだもんね(笑)。でもこんなの昔は当たり前のことなんだよ、はっきり言って。山から山伏がお江戸に出てきてほら貝を街中の隅々で吹いたらみんな集まってくるだろ。 今のはそれと同じこと。

 本当に大事なのは、昔の感覚にいかにわれわれが戻していくか。そこをやっていかないと。だって今、どう? あなたたちの周り、人がいなくなっているだろ。人が使い物にならなくなっているだろ。ここに来る時だって自由に入れない(笑)。そうだろ?
 電話をしたって「何をして、これをして、あれをして」って人が出るまでにどのくらいかかると思っている(笑)。笑い事じゃないんだよ。そういうことに慣れすぎているんだよ。人がいらなくなっている。人が必要とされていなくなっている。

 そして人もみんな使い捨てだろ?若いうちから。使い捨てだよ。そんな世の中になっちゃってるんだよ。だからさ、必要なんじゃない?

渡辺:感じる知性が?

星野:じゃなくてこういう場がさ。

 だからわれわれ山伏もさ、死ぬまで現役なんだよ。山伏は死ぬまで現役だよ。使い捨ていないよ。だから俺なんか最後、いよいよご臨終ですと言う前に「ほら貝持ってこい」。ほら貝をブワーッと吹いてバタン。これで俺の日常が終わり。死ぬまで現役だよ。だから死ぬまで現役でいくにはどうしたらいいか、そういうものじゃないのか。

 われわれは死ぬまで現役で生きていけるかどうか……これいいこと言ったな今ね(笑)。何も無いところから生まれちゃんだもん。

渡辺:ノープランで。

星野:そう、ノープランで。

○ノープランから、テーマと場の流れが生まれる

星野:われわれは死ぬまで現役で生きるにはどうしたらいいか、という場だよ。今日は。

渡辺:そういう場ですね。

星野:何も無いところからなんかできちゃった。そこなんだよ。こんなの予定しなくても出ちゃうんだよ。あーびっくりした。これはお祈りしたから出たんだよ。だから、物語は後付け。

 始まる前に、やっぱりお祈りしたいなって。柏原に言ったんだよ。柏原はうんともすんとも言わなかったよ。だけれどもここに来て、ほら貝持って、ほら貝は祈りの時だよなって、それで祈りに入っちゃったね。そしたら今日のテーマがなんとなく「死ぬまでいかに現役で生きるにはどうしたらいいか」……どうしたらいいかなんてそんな難しいことはないんだけどさ。それでいいんじゃない?テーマは。

柏原:オーケーです。

星野:なんかそうだよ。こうしてできていくの。わからない?俺が言いたいこと。ノープランなんだよ。ノープランだけど今を大事にしていたらこうなるの。今を大事にしていたら出てきた言葉だよ。だからほら貝を持って吹こうとしたら、「ほら貝は祈りだよな」。じゃあ祈るか。そこの話から死ぬまで現役で生きるにはみたいな。いいテーマだなぁ。

渡辺:いい感じですね。

星野:いい感じだね。じゃあ、みんなで話しますか。こっちは終わり。

渡辺:早い。

星野:もうみんなとそれで話してもらったらいい。じゃあ柏原、引き継ぐよ。お前に。はいありがとう。

(拍手)

柏原:超無茶振り(笑)。これもまたノープラン。打ち合わせなんてありませんからね。

渡辺:3人集まってサンドイッチ食べてただけですからね。

柏原:そうそう、高島屋ショッピングセンターの地下になかほら牛乳のお店があるんですよ。そこのサンドイッチがめっちゃおいしいんです。

星野:みんなには無いけど(笑)。俺たちは役得で食っちゃった。

柏原:そうそう、食べちゃったんですけど、もしよかったら行ってみてください。じゃあ、どうしよかな。せっかくテーブルがあるのでテーブルごとにお話をしてみましょうか。

星野:そこでみんな話したことを報告して、それでまた何かやろうよ。また先が見えてくる。何か出てきそう。何か今日は面白そう。

柏原:楽しみですね。じゃあ、付箋を配りましょうか。ペンは前にもあるので、もしよかったら使ってください。

○「死ぬまで現役で生きるには」をうけたもう

(ほら貝の音)

星野:そういうことでいい?

渡辺:はい、今日は共有タイムになったら、ほら貝でお知らせします。修行の時は「集合」とか言われないんですよ。全部ほら貝の音でお知らせがあって、1回目鳴ったら寝てでも飛び起きて、2回目鳴ったら着替えて集合という感じで。今日はお知らせほら貝は私が仰せつかったので(笑)。最後失敗しましたが鳴らさせていただきました。

星野:がんばると失敗しちゃうんだ。ほら貝なんてそんなんんだ。

渡辺:皆さんいろいろお話していただいたと思うんですが、無茶振りの中、どんなお話をされていたか聞きたいですよね。まとまってなくていいんですよね?

星野:いいんだよ。もう大体でいいから。そんなもの良くしようなんて思ったら何も面白くない。そんな話。

渡辺:ちなみに、山伏修行に行ったことのある方はどれくらいいらっしゃるんですか?

(挙手あり)

渡辺:じゃあ、星野先達に今日初めてお目にかかるという方は?

(挙手あり)

渡辺:すごいいっぱいいる。嬉しいですね。これから修行に行かれる方のために、内容はなるべくふせたいのですが、少しだけお話すると、修行の時って、先達の所の修行は基本的に沈黙行なんですね。おしゃべりができなくて。でも一個だけ言っていい言葉があって、「うけたもう」という言葉なんですね。「うけたもう」というのは、要するに「うけます」ということなので、何があっても「うけたもう」で、文脈がおかしくても「うけたもう」なんです。返事として変じゃんという時も「うけたもう」なんです。
 なので、さっきもノープランで打ち合わせもなく先達がバーッと話して「どうぞ」って振って、皆さんに「うけたもう 」っていただいたという。そんな感じなんです。
 なので、まとまっていなくても全然構わないし、出てきたことをよかったらシェアしていただければという感じなんですが、いかがでしょうか。「うちのグループ、こんな話ししていたよ」とか。

星野:やれるとこからやったらいい。どこなんて言わないからさ。


○自然との関わりが、人本来の力を呼び起こす


参加者A:前回も参加させていただきましたクロサワと申します。よろしくお願いします。われわれのグループは、実は修行された方がいらっしゃるということで、まず感想を伺いましたら非常に良かったと。生まれ変わったという話を聞きました。
 それから話が飛んで、実はアマゾンの話なんですけれども、物品販売ではなくて(笑)、ブラジルのアマゾンには年を取ってもボケ老人はいないと。介護もないという話を伺って、それはなぜなのかという話をしていたら、自然と触れ合っているからじゃないかという話がありました。
 介護の話から、今度私の妻が介護の仕事をしているので、介護の悲惨さというのちょっと話をさせていただいたんですね。ものを忘れて毎回同じものを買ってくるとか、あるいはもういない方なのに「姉のお菓子なんで取っておいてください」とか、生きていてもちょっとかわいそうだなという感じがしたんですね。
 それから、そういう人はどうしてそうなってしまうのかという話をして、やっぱり人との会話がないということとか、自然との関わりがないからかなという話が出ました。そんなところです。

渡辺:ありがとうございました。

(拍手)

渡辺:先達、こないだブラジルで修行されたんですよね。

星野:その話をすると1時間かかっちゃうから。

渡辺:すいません。写真はそれです。ブラジルで。

*こちらのイベントは終了しています

星野:あら、写真があったの?

渡辺:先達のところにありましたよ。ブラジル人の方がぜひブラジルで修行したいって言ってね。

星野:要するに簡単に言うとね、3年ぐらい前にブラジルからメールが来たんだよ。英文でね。トレーニングとか何とかって書いてあった。だから英語のわかるやつに「これなんて書いてある?」って聞いたら、修行したいし修行をこっちできないかということだったらしいの。そいつに「じゃあわかった。とにかくブラジルから日本に来て修行して山伏になれば、俺もブラジルに行くよ」って言ったの。簡単なことじゃん。
 そしたらそいつが2回ぐらい修行に来て山伏なっちゃった。それで去年、またブラジルから7人ぐらい連れて俺のところに修行に来たんだよ。じゃあ俺は行かざるを得ないじゃん(笑)。山伏にもなったし。だから「俺の日程が空いた時に行くよと。俺2月ならいいよ」って言ったら、向こうは9月だって言うから、ちょうどいいじゃんと。それで行ったら20人も集まっているの。
 だから日本人と同じ。終わった後……修行中は俺は何もしゃべらないから、どうせしゃべったって言葉もわからない。日本で修行してもしゃべらないしね。そして修行が終わって、最終的にみんなの感想を聞いていたら、すごく特徴的な印象を残していたのが、40歳ぐらい前の男性かな。自分は普通はイライラしているんだって。ところが修行に来て……ほら、俺はブラジルに行っても、お祈りが全部自然だから、滝をお祈りしたり、水をお祈りしたり、岩をお祈りしたり、大木をお祈りしたり。自然だけをお祈りしているだろ。
 そしたらそいつは、「いままで自然とそういう関係性でいなかった。だから修行中に一番気付いたのは、今までは自分は人との関係でイライラしていたけれども、人でなくて、自然から教わったのは、イライラしなくなった」という。明解だよ。日本人も同じだよ。

○自然への祈りは、言葉も国も超越する

星野:だから、要は人ってみんな同じだよ。言葉が違っても、国が違っても。そういうものなんだよ。だから言葉なんかわからなくたって、俺と同じ真似をしていればいいんだもの。どっちみち俺なんか日本人と修行したってしゃべらないんだから。そうだろ? だから何も難しくないの。シンプルだから、ブラジルで修行するっていったって同じことです。

渡辺:説明するとかもないですもんね。真似するしかないし。

星野:真似するしかない。まあ通訳もいるけどさ。自然とこういうところで瞑想しているの。だから、ブラジルは自然が豊か、緑が豊か。食べ物がおいしい。おかげさまで本当にまた来年の2月に行かざるを得なくなっちゃった(笑)。行きたい人は連れていくよ。

渡辺:日本からもちょっと行かれたんですよね。

星野:日本からも4~5人行った。大変だったのは装束。全部で30人近く。それを送るのも大変だからと、鞄に持って行ったの。これが俺は一番大変だった。だからもう大きい鞄を一つは俺の物、一つは装束。若い男性たちもみんな装束を荷物に突っ込ませてね。そしてオーバーしたりしたのもあるけど。そういうことの方が俺にとっては大変。
 それからブラジルは広いから、常に移動に移動だろ。向こうの人は300キロ先を隣村と言うんだもん(笑)。

 簡単なんだよ、だから。だから修行そのままも非常に良い場所だったしね。瞑想の道場として使わせてもらったのは、瞑想の館なんだよ。ここの周囲には滝がいっぱいあって、水がいっぱいなの。そしてこの瞑想の館の周りは水がタプタプっと。こうしていると、水の音がわーっとするわけ。それだけで瞑想に入れちゃう。素晴らしいところだった。ここで修行されるんだったら本当に毎年行きたい。まあ来年も行くけどね。

渡辺:さっきのアマゾンの話も、自然と一緒にいるからということですよね。

参加者A:電気もガスも水道もないところの原住民のおじいさんが昼に死んじゃったんだけど、実は亡くなる当日の朝まで走ってたらしいの。要するに食べ物は自分で取ってこなければいけないから、ボケている暇がないという。その原住民と山伏って、すごく通じるものがあるなと思って。

星野:先住民イコール修験道だよ。

渡辺: 今度、先達と一緒に北海道に行かせていただくんですけど、アイヌの方とセッションしたりされるという話で、そのご縁を作ってくださったのが、ニュージーランドとの先住民族の方とのイベントですね。

星野:ニュージーランドで先住民から声がかかって、水と火祭りしてくれと言われて、その時の通訳が北海道のわかこ。そのわかこが札幌で先達の話を……俺の通訳をしてくれる子だから俺の言いたいことは本当にわかる子なんだろうね。そこに200人ぐらいいた人たちが、本当にわかっている感じだった。そいつから「先達、北海道にも来て話して」と言われて、そしたらアイヌとのセッションも入れたり、清乃とこういうことをやっているから「清乃、お前も札幌へ行って俺と対談しろ」と言ったの。

渡辺:うけたもう(笑)。4月に北海道に飛ぶんですけど。

星野:4月13~14日ね。とんぼ返りだけどね。2日間。

*こちらのイベントは終了しています

星野:ついでだけれども、そこにチラシがある。5月11日。

*こちらのイベントは終了しています

内田樹、内山節、藤田一照 。こんなの普通できないよ。こんなの遊び感覚だからできちゃうけど、普通はこんなの3人揃えるなんてまず難しいだろうな。だからこういうのは遊び感覚でできちゃうんだよ。何もそんなに難しくないんだよ。出版社が企画してやりますって言ったら3人OKしないんだから。

(第2回へ続く)

*編集協力 松本沙織

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