アソヅリヴァク

第109回文學界新人賞最終候補。最終選考にて前例のない5バツ(選考委員の全員がバツをつけること)。尊敬する作家は、三島由紀夫、菅原孝標女、Summerset Maugham。福岡県小倉出身。平成元生れ。

ぴゅんぴゅん #2

人間の、いやヒモの意識は不思議なものだ。

「ここは私の部屋です」と七瀬に書かれてから、朝帰りしても部屋で吐いても平気だったおさむが、今はもう全てがよそよそしく見えてくる。

おさむは福岡の実家から京大に進学して、散々留年してから、洋食屋を営む実家に、「そろそろ勘弁してくれい」と言われて東京の会社に入った。

一年目から海外部を担当させられ、それなりにやりがいもあったのに、ちょうど丸一年、3/31

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ぴゅんぴゅん #1

月曜日から水曜日くらいまで、およそ3日間、おさむは自分がヒモになった事に気が付かなかった。

会社勤めをしていたら間違っても見られないノンストップやミヤネ屋やevery.やらを怠惰につけっぱなして、7時前にややふらつきながらシャワーを浴びなくてもいい快さを存分にむさぼっていたのである。

異変に気付いたのは木曜日で、起きてみるとまず頭が痛かった。

さぼり癖のある人には分かっていただけるだろうが、

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『命売ります』を楽しむために

ライフ・フォア・セイル

ある日、とっさの一瞬に自殺を思い立った主人公の羽仁男はワクワクと浮き立った気持ちのまま本当に決行する。
ところが近所にいた人間に助けられ、思いを遂げる事は出来なかった。
生き残った羽仁男は新聞の広告欄に『命売ります』と短い広告を出し、自宅の扉にも『ライフ・フォア・セイル』と洒落た看板をさげる。
しばらくは訪ねて来る客もなかったが、愛人に復讐を試みる老人、母のために乗り

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水に透ける花

#9

誠吾にとって最も年次の近い先輩は、ちょうどデスクが向かい合っている矢沢になる。
彼より1年先輩の2年目、いつもニコニコしたこの先輩にも、誠吾は一つの生き方を学んでいるような気がしていた。

「え、また連休取るの?月火で?」

「すみません、、、」

やや呆れ勝ちな西田の前で、矢沢はしんから申し訳なさそうな顔でうなだれている。

「もうこれだけは外せない合宿で、どうしても

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