じゅんペい

文學界新人賞最終候補。最終選考にて前例のない5バツ(選考委員の全員がバツをつけること)…

じゅんペい

文學界新人賞最終候補。最終選考にて前例のない5バツ(選考委員の全員がバツをつけること)。社会ができないのでホテル暮らししながら、次に住むまちを探しています。生活の声が聞こえる、素敵なまちがあったらご一報ください。

最近の記事

30代になって『老人と海』が沁みた

福岡から新千歳に向かう飛行機のなかで、ヘミングウェイの『老人と海』を読み返した。 アウトローだったこの作家に、ノーベル文学賞という最高の栄誉をもたらした作品。 もともとヘミングウェイの文章が大好きで、この小説も「いいなぁ」くらいには思っていたのですが、32歳になって読み返してみると桁違いに沁みたので、雑感とあわせて感想を書きます。(みんなも読んで。短いよ。表紙が可愛い!) めっちゃ太ったからヘミングウェイの気持ちが分かる2年ほど前から(思えば30になってからか!)、めっちゃ

    • 葬儀

      死人の顔は、おでこのところがこう、山なりに固く、冷たくなって、私は自分の手のひらを卵を抱くようにすぼめて、そっとその上に置いてみたい気持ちがしました。 「お父さん、しょうくんが来てくれましたよう」 おばさんがそう言ってはぐった白い布の下のおじさんの顔は、おでこと、息を吸うように少しだけ開いた口と、つむった目とが、何というか、「死者が生きている人を驚かさないように見せる表情」とでも言いたくなるような、少し柔らかな、死んでさえいなければ愉快に見えるような表情です。 私はおじ

      • 三島由紀夫『命売ります』が面白いから読んで

        ある日、とっさの一瞬に自殺を思い立った主人公の羽仁男はワクワクと浮き立った気持ちのまま本当に決行する。 ところが近所にいた人間に助けられ、思いを遂げる事は出来なかった。 生き残った羽仁男は新聞の広告欄に『命売ります』と短い広告を出し、自宅の扉にも『ライフ・フォア・セイル』と洒落た看板をさげる。 しばらくは訪ねて来る客もなかったが、愛人に復讐を試みる老人、母のために乗り込んでくる少年、自分の事を気ちがいだと固く信じている女、、、様々な人間が羽仁男の前に現れ、命を買っていく・・・

        • 才人の詩

          第109回文學界新人賞最終候補作 本作は、筆者が19歳の時、夢中で書きました。 文學界新人賞史上はじめて5人の選考委員が×をつけた作品です(うわさベース)。 水上紫明 Life is there to be lived rather than written about. <William S. Maugham>  歳が行けば知識は大海の如くなり代わりに若い頃旺盛であった興味や好奇の気持がすっかり萎えてしまうものとばかり考えて居たけれども壮年に至りし今も私等は何かに

        30代になって『老人と海』が沁みた