見出し画像

アマゾンで返品された商品はどこへ行くのか?

近頃のeコマースサイトでは、気軽に返品に応じてくれるショップが増えている。返品ポリシーを緩和しているのは、消費者側のニーズに従い、固定客の維持や、売上の上昇効果を期待するためである。eコマース物流の専門企業、Dotcom Distributionが2018年に行った調査によると、オンライン消費者の90%が、無料返品に応じる業者を高く評価しており、62%が返品に応じた業者から、新たな商品をリピート購入している。

eコマース業界のコンバージョン分析をする「invesp」の調査でも、無料の返品対応をすることは、送料を無料化することに次いで、消費者の商品購入に影響力を与えている。そのため、eコマースサイトでは返品ポリシーを緩和しており、消費者の中では、とりあえず注文をしてみて、到着した商品が気に入らなければ返品すれば良い、というショッピングスタイルが定着してきている。

画像1

しかし、無料返品に応じることの副作用も大きい。アマゾンなど大手eコマースサイトの返品率は平均20%で、年末のギフトシーズンには30%近くにまで上昇する。これは、期間限定セールで不要な商品を購入してしまったり、貰ったプレゼントが気に入らなかった等の理由によるものだ。

【eコマース返品商品の清算オークション】

では、消費者から返品された商品はどこへ行くのだろうか?パッケージが開封された商品は、「新品」としては再販売することができないため、中古品としての販売か、廃棄処分されることになる。しかし、大手のECサイトでは毎日大量の返品があるため、いちいち検品して再流通の可否を決めるのは非効率なため、外部の業者に安値で一括売却されている。

米国では、大手ECサイトの返品商品を引き受ける専門業者が存在しており、再販売が難しい商品の清算業務も代行している。具体的な方法は、ECサイトに返品された商品を巨大な段ボール(パレット)単位で引き受けて、卸業者や小売業者のバイヤー向けにオークションを開催する。

1箱あたり数十キロから100キロ以上の重量があるパレットの中身は、家電・アパレル・日用品など、大まかなカテゴリー別に多種類の商品が入っているものや、同じ型式の製品ばかりが数十から数百個入っているものもある。

パレット単位で商品の検品をして、パッケージは開封されているが製品自体に問題は無いもの(新品同様)、使用された形跡がある商品は、外観からみた傷の状態によるランク分け、機能上の欠陥が確認されている故障品、動作チェックを行っていない未テスト品などの分類をして、どこのECサイトから返品された商品かも開示した上で、独自のオークションにかけている。

オークションの開始価格は、パレット全体でみた商品の新品価値に対して1~10%に設定されており、そこからバイヤーが入札をして競り上げていく形だ。このような返品商品の売却方式は、Liquidation Auction(清算オークション)と呼ばれている。

返品商品の価値は、ECサイトが返品容認期間を何日に設定しているのかによっても異なってくる。アマゾンの返品ポリシーは購入から30日以内、ウォルマートは14日以内に設定しているため、アマゾンよりもウォルマートから放出される返品商品のほうが、リバースロジステック市場では高く評価されている。

このような清算オークションには、バイヤー登録をすれば個人事業者でも参加することができる。落札後にパレット単位で届いた商品をチェックして、再商品化が可能なものはebayなどに出品して収益化する副業も行われており、その様子は動画としてYouTubeにも多数アップされている。ただし、巨大なパレットを受け取るため配送料は落札者側の負担であることや、売却できない商品の廃棄費用などを考慮すると、現状では割の良い副業と言えるわけではない。

しかし、新品に近い商品を1割程度で入手できるのは魅力であり、パレット単位で調達した返品商品を有効活用させるビジネスのアイデアが、米国では模索されている。

■関連情報
購入前試着型eコマースの普及と消費者の返品特性
廃棄食品の仲介をするフードバンクのビジネスモデル
●海外ビジネス事例集/●ビジネスモデル事例集

JNEWSはネット草創期の1996年から、海外・国内のビジネス事例を精力的に取材、会員向けレポート(JNEWS LETTER)として配信しています。eコマース業界返品ビジネスの詳しい動向については、JNEWS LETTER 2019.8.19号で特集しています。詳細は公式サイトをご覧ください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?