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国鉄制定色の付番について(整理・私見)

1)付番に関する記述

9か月ほど前まで書いていた「青い等級帯の「色」について」の番外編として、以前から考えていたことについて整理・考察してみたいと思います。
少し前(…といっても、かなり前に近いのかもしれません)にとある方から、「次のような記述を発見したのですが…」と連絡をいただきました。

「(前略)青15号はあさかぜ号の色として新しく作られたもので,(中略)車両関係の青系で15番目にできたので青15号と呼ばれた訳である。(後略)」

亀山尚文(1958).「新あさかぜ号」『塗料の研究』(34).pp16-18
https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3263307?tocOpened=1
(国会図書館デジタルコレクション・ログイン状態で閲覧可能)

各制定色の使用開始時期を確認していくと、若い番号のものほど古い時期に使用が開始されていた傾向が見られていたため、この記述の発見以前から「使用開始順に付番が行われていたのではないか」という推測をしていたことがありました。
今までこれを裏付ける盾がなかった訳ですが、今回の発見により、その仮説が本格的に支持できる形に変わっていたということになります(もっとも、国鉄内部の資料における記述ではないので、100%そうだったかと訊かれると「そうである」とは言い切れないところもまだあります)。

2)記述に矛盾する例

この仮説が正しいとなると、次の点に仮説が生じてくることとなります。
「号数は使用が古い順に付番されたものと考えられる」…これまで私が確認してきた多くの例においては、この原則を満たしている状態が大多数だったということは間違いありません。
ただし、「少数の例において」「現時点での認識のみでは」この原則を満たしていないものがありました。それが次項の2つです。

Ⅰ:青1号(戦後における2等車の等級帯_戦後の80系電車登場以前)
  青2号(旧横須賀色の青_横須賀線用旧型国電の更新修繕時,1949年度)
  青3号(1959年塗色規程制定以前の気動車標準色の青_1935年度)
  青4号(1956年色見本帳では空白で用途不明_不明)
  ※後に方向幕の文字等で使用されたことが確認されている。
  青5号(1956年色見本帳では空白で用途不明_不明)
  青6号(マシ35室内_1951年落成・予算は1950年度予算)

Ⅱ:緑1号(阪和線急行電車の緑_1955年)
  ※モハ52の高速度試験編成(1948年4月)や山手線向け電車での塗替え
   車(1948~1950年頃とされる)で濃緑色の車両が存在していたが、
   この色と関連があるかは分からない。
  緑2号(湘南色の緑_1950年)
  緑3号(放熱管キセ・室内止弁キセ・電車のケコミ板_1956年以前)
  ※1956年版色見本帳に掲載されていることから、この時期以前に使用
   開始されていたことが確認できる。

…そうです。Ⅰ,Ⅱとも、現時点で見つかっている例を基に考えると、時間の逆行が発生してしまう状態にあるのです。
現時点で判っている情報と引用した記述との間には、矛盾があるのです
(この例以外=大多数においては、矛盾が存在しません)。

3)仮説:「私たちが知らない用途が存在したのではないか?」

では、ここにおいて、視点や発想を転換してみたらどうでしょうか。「私たちがまだ確認していない用途が過去に存在していた」…その可能性があるのではないでしょうか。青1号・青2号には1935年以前の使用例が、緑1号には1950年1月以前の使用例が、後の資料には書かれていない使用例が存在していたのではないかと。
ここにそんな仮説を提唱してみたいと思います。

※上記の問題が解消されて「時系列順に付番が行われた」ということが証明できれば、欠番となっている色の使用開始時期を大まかに推定することが可能になるので(前の号の使用開始時期と後の号の使用開始時期の間に必ずあるということになるので、使用された可能性のある形式を絞って調査を行うことが可能になる。例:青4号・青5号の用途は1935年から1951年の間に製造された車両の中にあるものと考えることができる)、よりよいアプローチからこの問題に臨むことが出来るようになります。
そこまでもっていけたら、見えてくるものがあるだろうと思うのですが、
そう簡単にコトは進んでくれなさそうです。

(2022年10月14日 第1版公開)

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