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雑想連載 アートとは何か 2

アートとは新しい思考の創出である

前回、「アートとは思想や感情を創作的に表現したものである。」と定義してみた。


しかし、マルセル・デュシャンが1917年に制作したアート作品「泉」は果たして創作的なのだろうか。換言すれば、これはアートと呼べるのか。というところで筆を置き、その後私は更新をさぼり倒した。(下書きに置いていたデータが消失したのが主な原因である。)
今回は、アートの意義とは新しい思考の創出にあるのではないかという説である。

芸術作品としての「泉」

まずは、この作品について、芸術的な要素を考えてみよう。
手法としては「レディ・メイド」と呼ばれる。これは既製品という意味合いでオーダー・メイドの対義語とも言える言葉であり、その通り既成の物をそのまま、あるいは若干手を加えただけのものをオブジェとして提示しているものだ。
もっとも、「泉」が発表された当時、この手法は一般的ではないばかりか、この手法の先駆者がマルセル自身である。
この点を捉えて、「泉」は芸術手法のひとつを”創作”したといえるのかもしれない。
次に、作品に含まれる思想に着目したい。
無論、作品の真意はその有無を含めて作者にしか解りえないしかし、マルセルは何らかの意思や感情を以って、この男性用小便器を選択した。そして、本来持つべき機能性を阻却して、新たな意味を生み出すことに成功した。既成概念を破壊し、観点を生み出す。
こう考えると、この作品は十分創作的ではないだろうか。

アートと言っちゃえばなんでもアート

およそ日常において着目されることのなかろう小便器を、マルセルはアートの文脈に唐突に投げ込んだ。
すると何が起きただろうか。
人々はこの小便器に着目し、アートか否か、何が言いたいのだろうか、と勝手に分析を始める。この時すでに「新しい思考」が生まれているのだ。
普段見ているモノに対して「新しい思考」の創出。この考え方は後にコンセプチュアル・アートやポストモダンアートへとつながっていくことになり、「新しい思考」の創出というのが現代美術の基本的なルールになった。
つまり、「これはアートです。」と発表すればなんだってアートになるのだ。

振り返ってみよう

以上を踏まえて定義したい。つまり、アートとは新しい思考の創出である。
新たな思考が生まれることは、人類の進化である。
人類の進化に一役買う有益性はアートの価値であり、アートの意義である。すなわち、人類がアートを生み出す意味になってくるのだ。

模倣に価値はないのか

そのように定義した場合、新しさの無い創作物に意味はないのか。模倣はアートではないのか。という疑問が生じる。
次回は、ここを起点に思索を深めていこう。



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