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【新国オペラ】フィレンツェが舞台の悲劇と喜劇ー『フィレンツェの悲劇』『ジャンニ・スキッキ』

#熟成下書き と言えば聞こえはいいけどまあ実際のところ今更祭りだよなってのを開催したいと思います(というか、うっすら開催していたものが完全にシリーズ化できるほどに膨れ上がったという話)。というわけで、どちらかというともう7月ということのほうが怖いけど、今回は4月の新国立劇場アレクサンダー・ツェムリンスキー『フィレンツェの悲劇』(ドイツ語上演)、ジャコモ・プッチーニ『ジャンニ・スキッキ』(イタリア語上演)をば。

 今更祭りを開催しておきながらこんなことを言うのもアレなんですが、じつは個人的に観に行くモチベがめちゃくちゃ高く、家庭内チケット争奪戦に備えて絶対観に行く宣言をしまくっていた『ジャンニ・スキッキ』

 と申しますのも、早々に話題が新国オペラから逸れるようで恐縮なんですけれども、二期会の『ジャンニ・スキッキ』を観たことがあって(俺のなかで)今後機会があり次第必ず観に行くオペラリストに追加されていたので。
 いちおう結論だけ述べると、後述する新国立劇場の演出も素敵だとは思いつつ、個人的には(個人的にはね)二期会の演出(ダミアーノ・ミキエレット)のほうが好きでした。いやあのね、二期会はご遺体の扱いのぞんざいさが面白すぎたというか、ツボすぎた(あと、「三部作」を通しての舞台美術がすごすぎた)。むろんストーリーは同じなのでどこで観ても『ジャンニ・スキッキ』は面白いです。

 さて、本題。散々『ジャンニ・スキッキ』『ジャンニ・スキッキ』言ってきたけど、『フィレンツェの悲劇』の話が先です。フィレンツェが舞台ということで、『フィレンツェの悲劇』と『ジャンニ・スキッキ』という組み合わせなわけですが(ふだんオペラを観ることのない方のために書いておくと、基本的に上演時間が長い作品は1本のみで、短い作品だとなんらかのテーマや共通性をもって2〜3本上演する感じです:共通性は同じ作曲家というのが多い?気がするけど、今回みたいに同じ場所が舞台とかそういうテーマのときもある)、それぞれドイツ語上演とイタリア語上演ということで(もちろん日本語字幕は付いてる)、舞台は同じだけど言語も世界観も違う!という不思議な体験をすることができました。

・『フィレンツェの悲劇』

あらすじ
織物商人シモーネが旅から帰ると、妻ビアンカの許にフィレンツェ公爵の息子グイード・バルディがいる。シモーネはグイードが買い物に来ただけのように振る舞い、一番高い物を売りつけようとすると、グイードはビアンカを所望する。シモーネは紛らわせようと宴を供するが、二人の様子を見て疑いを強め、席を立ってしまう。帰ろうとするグイードはビアンカに長いキスをし、ビアンカは愛を誓う。シモーネとグイードは決闘で剣を交えるが、最後にシモーネはグイードを絞め殺す。ビアンカはシモーネの強さに恍惚とし、グイードの死骸のうえで二人は見つめあう。

 オペラあるあるな悲劇。今日的な感覚からすればだいぶ物騒な話ではありますが、浮気に腹を立てて相手を殺害するという今日にもあり得そうな構造でもあるわけで、それこそオペラあるある、人類普遍っぽさを感じるテーマだったりします。
 そして悲劇なだけあって全体的に暗いというか重いというかな世界観でありつつ、最後、浮気相手が殺されたのに夫の強さに恍惚とするんすか....?という終わり方ですさまじい余韻を残していくこのオペラ。好きな人の生首に「口づけして恍惚とする」『サロメ』が最たる例だけど、世界観わからんて!感が半端ない。まあそれも含めてオペラだとは思うんですが。

・『ジャンニ・スキッキ』

 一方、こちらは喜劇。いわゆる遺産相続のドタバタ、一族大騒動といった塩梅で、遺産相続の分配を巡る(内心)熾烈な争いがコミカルに描かれています。
 さっき二期会の演出が好きだとか言ったけど、新国は新国でしっかり演出(粟國淳)が面白くて、大きな机の上でまるで人形のようなスケールに感じられる人々が右往左往するようなかたちになってる。これはこれでとても印象的な演出でした。

 それから、あの超絶有名なアリア(↑これ)はふだんクラシックに親しみのない方でもどこかで聴いたことがあるんじゃないでしょうか。Theがつくくらいの名曲。プッチーニ、って感じの美しいメロディ。

・大盛況なバックステージツアー

 ここからは余談のようなものですが。

 毎度盛況なバックステージツアー。前にもどこかでおすすめしたことがありますが、機会がございましたらぜひ案件です。

・クッションが出現した件

 個人的に( 'ω')ファッ!?となったのが↓これ。

 もとより新国立劇場はバリアフリーもしっかりめだし、なによりスタッフさんの対応がめちゃくちゃ良いところなんですが、ついに座席にクッションまで....となった次第。ずっと思ってたけどホスピタリティ半端ない(^o^)/
 ちなみにこのクッション、お尻の下に引くと座高が高くなって後ろの人にご迷惑をかける可能性があるということもあるのですが、個人的には、腰が楽になるという理由で背中に入れておくのがおすすめです。

 そんなこんなで、4月の上旬の話ともなるとさすがに記憶が危ういということを痛感した今更祭りでした。メモに助けられたし、メモは大事だなと思いましたが、結局なにが言いたいって、やっぱ『ジャンニ・スキッキ』好きだわまた観たい。

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