ダンゴムシを飼う
ver 1.2_2014.7.17 update [投げ銭]値段があるけど払わず読めます
1. ダンゴムシをさがしに行く
2014年3月26日、公園でダンゴムシをさがした。児童書などにはよく、「落ち葉の下にいる」と書いてあるが、なかなかいない。後でわかったことだが、寒い季節は身をかくして冬眠している。というか、冬を越せるのだね、ダンゴムシ。
いないな~と思いつつも、木の根元の枯れ葉をかきわけると……見つけた。しかもたくさん。木の根元で丸まって眠っているダンゴムシたち。どうも、好きな木とそうでないものがあるようだが、見つかる木からは同様に、根元でたくさん眠っている。仕事に必要なダンゴムシを適当につかまえることができた。
4月初旬。仕事のため、飼育ケースに入れたダンゴちゃんをさらに補充しようと、前回の公園に向かう。が、今度は木の根元にまるでいない。むしろ落ち葉の下にいる。どうも気温の変化で、ダンゴムシが活動をはじめたらしい。そういえば、3月末頃に雷雨がやってきて以来、冬の気配がふきとんだ。暖かくなると、葉っぱの下でもぞもぞしているってことらしい。
死がいも見つけた。写真を撮っているときは、お、脱皮したからを発見!と思っていたが、カメラを降ろしてよく見ると死がいだった。死因によるだろうが、死がいは脚の先まで形がすっかり残っている。迫力がある。
ダンゴムシは何でもよく食べるというが、飼ってみると本当にそれがわかる。落ち葉が好きだというが、なかなかどうして、落ちた花なんか入れておくと、葉をすておき集合するじゃないか。水分があるからだろうか。ダントツ人気は、美しい絵にはならないが、しめらせたティッシュ。水分補給のつもりで入れたが、たぶん、ティッシュも食べてる。葉っぱの繊維が食べられるくらいなら、ティッシュもいけるのだろう。
2. 飼ってみるとなかなかカワイイ
ダンゴムシのふんは、平べったくて四角い。にんじんを与えるとガツガツ食べるうえに、オレンジのふんをする。ちょっとカワイイ。さらさらしているので、さわることに抵抗を感じない。土のかたまりっぽい印象。
紙のうえに移して拡大した。ほら、土っぽい。
ダンゴムシの食べっぷりを観察する。1日目(↑)
2日目(↑)
3日目(↑)
4日目(↑)こうやって、公園の葉っぱもふんになっていくのだなあ。
4月半ばになって、飼育ケースでダンゴムシのぬけがらをゲット。ダンゴたちはふつう、脱皮したらからを食べるというが、なぜか残ってた。ケースを開けるタイミングの妙だろうか。かっこよく写真に残したかったが、さわっているうちに形がくずれ、ポロリととれた脚を「スマホ顕微鏡Leye」で撮影した。
3. ダンゴムシが脱皮した殻
ダンゴムシは、体の前半分と後ろ半分を別々に脱皮する。先にお尻側を脱皮して、半日か1日くらい後に、頭側を脱皮するという具合だ。
脱皮した殻を撮影。
脱皮した殻を裏返して撮影。触覚も足も、きれいに抜けている。
写真の2つの殻は同じくらいの大きさだけど、別個体のもの。ダンゴムシはふつう、脱皮するとしばらくして自分の殻を食べ、栄養を回収するので、ずっと張り付いて見ているのでなければ、同じ個体のを集めるのは難しい。
脱皮直後のダンゴムシは、その表面がとてもやわらかいそうで、飼育しているとどうも、このときに低確率だが共食いが起きる。ダンゴムシは半分ずつの脱皮なので、からだ半分を食べられた死がいが残ることになり、その付近に脱ぎ去った殻がポツンと残されているのだ。(殻は栄養になるから自分で食べるはずなのだけど、仲間のものは食べないのだろうか?ふしぎだ)
さて、これを機会に「なんで殻を脱いだのに体が大きくなるの?」という謎を追うことにした。子ども向けの図鑑や書籍を見ると、たいてい「脱皮するたびにからだが大きくなる」としか書いていないのだ。子ども心になんとなく「脱皮すると、やわらかく湿った体が乾くときに大きくなるのかな?」と想像したが、もうちょい知恵がつくと「ただの乾燥なら縮むんじゃ?」と疑問は再燃し、消化不良になっていた。
4. 長年の疑問「殻を脱いで大きくなるのはなんで?」
さあ、改めてさがしても、子ども向けの図書ではやっぱり全然見つからない。なんでだろう、けっこう難しい理屈なのだろうか? きちんとした情報をさがし当てるまでが意外と大変だった。
結論としては、東海大学出版会の「脱皮と変態の生物学~昆虫と甲殻類のホルモン作用の謎を追う」という専門書で解決した。
ようは、脱皮の前に、かたい殻の下に若い細胞がスタンバイしてあって、古い殻をぬぐと若い細胞がバンバン成長して全体が大きくなるということらしい。僕らが見る「脱皮」の前に、脱皮の工程は始まっているのだ。
外側の新しい殻はとてもやわらかいのは、この間、急速にふくらむ体にあわせ伸びなければいけないためだ。新しい殻の一番外側、セメント層という部分がかたくなる条件は上記の本に書いていなかった。セメント層と呼ぶくらいだから、たぶん、外気にふれて固まるのだと想像する。
(おまけ:水族館の人が撮影した タカアシガニの脱皮動画 衝撃の映像。脱皮後の殻がやわらかくないと、この脚抜きはできない)
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ということで、細胞分裂の話などを考えると、子ども向けの本に説明がなかった事情はなんとなくわかった。でも、やっぱり「脱皮で大きくなる」はあまりにノーヒントなので、今回、自分が制作した『ダンゴムシ観察飼育キット』の冊子には、「脱皮した直後のからだはやわらかいので、その間にからだをふくらまして、ひとまわり大きくなるんだ」くらいには書いてみた。
なんというか、脱皮には能動的にからだを大きくする仕組みがあるってことだけでも感じ取ってもらえると、読者の心のかたすみに、謎と関心を残しておけるのではないかと思ったのだ。
ダンゴムシは子どもも大好き。楽しい生き物だ。
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