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かしこい社会を生んだ無印良品

読者のみなさんは無印良品を一度は見聞きしたことがあるかとおもいます。無印良品と聞くと「シンプルでデザインが良い」「おしゃれ」「品揃えが豊富」さまざまなおもいを抱くとおもいます。
今や無印良品は世に広まりみなさんの身近な存在となりました。ではなぜ私たち日本人が無印良品にここまでの魅力を感じ、商品を買うのか。そんな疑問にせまっていきます。


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無印良品の登場


1980年に良品計画の生みの親である西友の自社開発の経験をもとに安くて良い品としてファミリーマートの一部で販売を開始したのがはじめでした。


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「わけあって安い」

無印良品の背景は、スーパーマーケットが「そのお店でしか売られていない商品群」を求めたことに始まります。
ほとんどのスーパーマーケットのビジネスは「他と比べて安いこと」に目を向け不毛な価格競争におちいっていました。そんななか、無印良品は独自のブランド戦略によって商品に別な角度で価値を見出したのです。
無印良品が登場したころに展開した他のストアと大きく違っていた点が2点あります。

1つ目は、無印良品のこだわりにありました。1つ1つの商品について「どうあるべきか」「どうしたら安値でお届けできるか」このような点に配慮をしていたのです。基本コンセプトは「生活者の基本となる、本当に必要なものを、本当に必要なかたちで作ること」つまりモノの食材そのものを活かし、付加価値や無駄な要素を省くという方向で開発がすすめられてきました。これが他のお店とは違う点でありました。

2つ目は、消費者へ向けて「安さの正当性」を正面から主張していったことにあります。どのように主張していったのか、それは無印良品というネーミング、簡素なロゴやパッケージ、「なぜ安くお届けできるのか」の具体的な説明など。最小の要素にとどめた極めて質の高いデザインは、「無駄を省いてシンプルに」という姿勢を消費者に向けてしめしていきました。

この「生活者の視点」が消費者の共感を呼び、無印良品という名を広めていきました。


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「しゃけは全身しゃけなんだ」

初期の段階で登場していた、頭や尾に近い部分も加えたしゃけの水煮の缶詰がありました。見栄えを良くするために使われなかった部分を活用したのです。上の画像の「しゃけは全身しゃけなんだ」という新聞広告は、消費者を深くうなずかせた鋭い説得性があったといえるでしょう。

こちらの新聞広告をはじめ、無印良品という商品ブランドは消費者のかしこさを引き出す大きなカギとなります。


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かしこい私


商品を届ける側が正しいからといって、消費者が必ずしも振り向くかといったらそうではありません。消費者には見栄え、いわゆる見た目の良さがあったのです。「安いものを買う=貧乏」となりかねません。
結論から言うと、無印良品は「安い=みっともない」となりがちな消費者の考えに対して「安いモノを買う=かしこい消費者」へと切り替えることができたのです。
どのようにして切り替えたのか、その背景にせまっていきましょう。

無印良品の「しゃけは全身しゃけなんだ」という新聞広告を例に追っていきます。
当初の無印良品は店舗としてではなく、スーパーなどに他のメーカーの商品とともに商品棚に置いてありました。もちろんお店には普通の鮭水煮も、また「しゃけは全身しゃけなんだ」の水煮も並んでいます。どちらを選択すべきなのか、意図的ではないにしても、お値段的にも安い、しゃけはしゃけなのでどこを食べても変わらない、そのような考えのもと「全身しゃけ」の水煮を選ぶことで、消費者は一種の優越感が味わえたのです。

無印良品を購入することは「自分のかしこさ」を証明すること。やや悪くいえば、実質的に安いことに加えて、「かしこい私」を発見できる喜びを無印良品が消費者にお届けしたことが、「かしこい消費」につながったといえます。

この例をはじめ、無印良品がスーパーやコンビニなどの枠を越えて全国的なブランドへと成長できたキーポイントとなったでしょう。


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かしこい消費を広めた無印良品

一種の優越感である「かしこさ」は、「かしこい私」である。しかもこの「かしこさ」は、無駄を省いた商品を通じて、小さくいえば社会、大きくいえば地球につながる。つまり「かしこい社会」に貢献することになります。無印良品は「かしこい社会」を登場させることによって、産業社会を越えたのかもしれません。さらに、「かしこい私、かしこい社会」は「シンプルだけど、エレガントな暮らし」へ方向転換する。これが「無印良品的ライフスタイル」となり、さらにはインターナショナルな「都市的ライフスタイル」へと発展していきました。

今日の無印良品にもこの姿勢は貫かれています。「わけあって安い」から始まり「しゃけは全身しゃけなんだ」というように、登場した当初から30年を経ても「ぶれ」がまったくありません。この驚異的な継続によって、「無印良品」は「飾らない、シンプルな暮らし方」という生活思想を確立しました。それは自然と共生しつつ素朴に暮らしてきた日本人の伝統的ライフスタイルを、全国へ世界へと幅広く拡大したようにおもえます。


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無印良品のものづくりは徹底的に無駄を省き素材を活かしています。モノの本来の魅力を輝かせるという発想は、日本人の持つ「素」に対する美意識、つまり簡素であることは単に質素であるだけでなく、時に豪華という魅力を持つと考えられる思想につながります。個性や独特性を求められる現代に、むしろそれらの要素を排除することで、消費者の使い方の余地を残したといえます。これが「かしこい社会」「かしこい私」を生んだのです。

無印良品はこれからも日本を代表するストアブランドであり続けると思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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