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【葬儀司会】諦めた夢の先に‟天職”が待っていた。

「今の仕事は、好きですか?」

こんにちは!レッツジョイン公式note編集長の和田です。
仕事に対する価値観は様々あると思いますが、
「この仕事が好き!」「天職です!」
と言える人は、そう多くはないかもしれません。

今回の記事では、お葬式の司会を担当している平安典礼の伊藤一恵(いとういちえ)さんを取材しました。

取材中に、伊藤さんから何度か聞かれたのが
「この仕事は天職です」という言葉。

自分の仕事を‟天職”と思えることは、とても幸せなことですよね。羨ましいな~と思う気持ちが湧いてくる方もいるかもしれませんが、伊藤さんのお話の中に誰でも自分の仕事を天職にできるヒントがあるように感じました。

ぜひ、最後までお読みいただき、ご自身の仕事に活かしていただけたら嬉しいです。

葬儀司会 伊藤一恵さん

伊藤一恵(いとういちえ)さん  葬儀司会
▶自動車販売の仕事から葬儀司会の仕事へ転職
▶プライベートは小学生と中学生の子育て中
▶趣味:天体観測(宇宙好き)・映画鑑賞・読書

ー今の仕事に就かれた経緯を教えてください。

読書が好きだったので、最初は学校図書館に勤める司書教諭になりたかったんです。でも、採用募集のタイミングが合わずに叶わなくて。

「人」と繋がれること、人に接する仕事がしたいと思っていて、どうせするのなら、夢とか大きなものを売れる仕事に就きたいと思ったんですね。それで、宝石か家か自動車を売る会社の面接を受けたんです。

合格したのが、大手自動車メーカーの販売の仕事でした。車のことは全く知らなかったので、とにかく勉強して。知らないからこそ、好きなものではないからこそ勉強して、商品知識はかなりあったと思います。

フロントに座りながら営業もしていたのですが、お客様には「来てよかった」と思っていただくことに使命感をもって接客をしていました。

そう感じていただくために、一つでも商品知識を持ち帰っていただくことは当たり前のことかもしれませんが、心からの挨拶でお迎えするだけでも、それは伝わるんですよね。

出産を機に退職したのですが、仕事は続けたいと思っていたので、新しい仕事を探しました。

そんな中で、人の心に触れていく仕事の一つとして葬儀の仕事に就けないかなと思ったんです。求人誌を見ていたら、葬儀司会の募集があって、ちょうど勤務時間も子育てと両立できそうでした。

司会の経験はもちろんなかったのですが、まずは飛び込んでみよう!と思って、子どもの1歳の誕生日に履歴書を書いたんです。そして、ありがたいことに翌月に採用されて働き始めました。

今の仕事は、お客様のために「もっと頑張らなきゃいけない」って、毎日思わせていただける出会いがあるんです!

私にとって、この仕事は天職ですね。

ー一般的には「やったことがある」ことや「できる」ことで仕事を探す方が多いように思います。

大変なことにチャレンジしたいって、昔から思っているんです。大変なとこに飛び込むのが好きなんですよね。

しなきゃいけないっていう使命感から逃げたくないというか。

実は、自動車販売の仕事をしている時に、母校の先生から司書教諭の仕事のお声がけをいただいたんです。でも、その時の状況としては難しかったのでお断りしたんですね。

子どもの頃からの夢だったので、それを諦めた感じがして、すごく後悔の気持ちが湧きました。

でも、そのお陰で天職と言える今の仕事に就くことができた。

タイミングや御縁はあると思いますが、お客様のお役に立ちたい、喜んでいただきたいという気持ちを大切にしてきたことは大きかったと思います。

「正解がない」仕事だからこそ、続けられる。

ーお葬式の司会は独特のトーンで話されるのが印象的です。
葬儀司会の話し方は決まっていて、声のトーンは一定か、下がるとされています。

この仕事に就いた時は私も初めての経験でしたので、話し方やお作法などを研修で学びました。

今まで約13年間経験を積んできましたが、正解がある仕事ではないと感じています。

ご葬家様によって、お葬式に求める雰囲気は違いますし、司会者として「良い葬儀」を目指すというのも違うような気がします。

大切なことは、喪主様やご遺族の皆様が悲しみを引きずることなく、故人様とお別れができること。

爽やかな気持ちでお見送りをすることができて、これからは故人様がすぐそばにいてくださることを感じて、お葬儀を終えることができればいいなと思っています。

そのために、悲しみに寄り添った司会をするべきなのか?優しくお見送りができる雰囲気をつくった方がよいのか?司会としての見極めや判断を求められることがあります。

一つの正解がないことだからこそ難しさを感じることもありますが、だからこそ続けてこられた仕事なんですよね。

毎日が勉強で、もっと自分ができることを見つけていきたいと思いながら仕事に向き合っています。

早朝の散歩が毎日の日課
(写真は伊藤さんが撮影されたもの)

「葬儀の司会をやってみたい!」と思ってもらえるような司会をする。

ー仕事をする上で大切にされていることはありますか?

私たち葬儀司会はご葬家様と導師様の間を繋ぐ立場にあると考えています。そういう意味で、どちらの側にも傾かず中庸であることは大切にしています。

その役割を果たしながら、私としては、故人様にとってのお孫様にあたるようなお子様が、
「こういう仕事があるんだ!」
「葬儀の司会ってやってみたいな!」

と思ってもらえるような司会でありたいです。

故人様を亡くされた悲しみのすべてを理解することは難しいですが、子どもの視点で見た時に良い記憶として残るような仕事がしたいと日々心掛けています。

小学2年生の時に祖父を亡くし、お寺での葬儀に参列したのですが、その時に経験したお葬式がとても良かったんですよね。悲しみと優しさを持ち寄って、このお葬式をしているんだなって子どもながらに思ったのを覚えています。

お葬式は小さい子どもであっても記憶に刻まれる場だと思います。

伊藤さんの仕事道具

〇時間を正確に測る為のソーラー電波時計
〇天然石(リビアングラス)
*リビアングラス:隕石がエジプトのリビア砂漠に衝突したときの衝撃によってできた天然のガラス。司会者は、どんなにプレッシャーのかかる場面でも平常心を保てるよう、お守り替わりを持ち歩くのが良いとのこと。不思議と気持ちが落ち着きます。
〇数珠2種
尊敬するご住職がいらっしゃる千歳山 平泉寺にて買い求めた数珠
宇宙好きゆえギベオン隕石の数珠
*ギベオン隕石:1836年にアフリカ南西部に位置するナミビア共和国の砂漠地帯で発見された主に鉄とニッケルから成る鉄隕石

「してあげたかった」ことを叶える

ー多くのお葬儀に立ち会われて感じることはありますか?

喪主様がご挨拶の中で「生きている時にしてあげることが何もなかった」と仰る言葉をお聞きすることがよくあります。

そのお気持ちの中でも「ちゃんと見送ってあげることができた」と言えるお葬儀ができることは、喪主様やご遺族様にとって意味のあることだと思います。

ご葬儀を無事に終わらせることは、喪主様が故人様にしてあげたかったことの一つを叶えてさし上げる場でもあるという思いで、私たちは向き合わせていただいております。

ご葬家様によって宗派も違いますし儀式も異なりますが、法話をお聞きしていると共通しているのが「感謝」と「御縁」のお話なんですね。

感謝も縁も「見えないもの」ですが、意識を向けることによって「ある」ものと感じることができます。

同じように、喪主様のやご遺族の皆様、参列された皆様のお気持ちも「見えないもの」ですが、確かに「ある」もの。

故人様へのお気持ちは、皆様がそこに意識を向けて祈られることで確かに届いていくのではないでしょうか。

散歩での一枚
撮影:伊藤さん

ー今後の目標や夢がありましたら教えてください。

今、好きなことをしているので、夢はないんですよね。今、やりたいことや好きなことに囲まれているので。

敢えて言うのであれば、年齢を重ねて弔電が読めなくなったら、火葬場で働きたいです。

今まで好きなことばかりをしてきたので、やり残したことがないというか。夢は全部叶えてきているんです。

ーぜひ、夢を叶えるコツを教えてください!

全てを肯定的に捉えることかな。

私、「嫌い」っていうのが嫌いなんです。どこかに良いところがあったり、自分が気づいていない魅力があるんじゃないかって思っていて。

何に対しても「好き」っていう前向きな気持ちで捉えるからこそ、ストライクゾーンが広がるっていうか。他の人にしてみたら大したことではないことも、私は「夢が叶った!」という気持ちを感じられているんだと思います。

当たり前のようなことでも、当たり前ではないということを、ご導師様の法話でよくお聞きします。

これは役得だな!と思うのですが、感謝や御縁のお話を毎日お聞きしていると感謝と御縁を感じずにはいられない日々になるんですよね。

そういう意味でも、この仕事はやめられないんです。
これも、感謝ですね。

ー伊藤さん、ありがとうございました!

散歩での一枚
撮影:伊藤さん

いかがでしたでしょうか?

伊藤さんのお話をお聞きして、「天職」というのは探すものではなくて、目の前の仕事やお客様に自分を精一杯尽くした先に、待っているものなのではないかと感じました。

記事には書ききれなかった素敵なお話をたくさん聞かせてくださった伊藤さん、ありがとうございました!