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「星は微かに光り」 第5話

※本作は異能系というやつです。
それを留意した上でお読みください。


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クラスSの魔法使い、山下美月との戦闘で重傷を負うも、無事治療を済ませた〇〇。するとそこで、2週間後に魔法を使った学校行事、『バイオレットグランプリ』が2週間後にある事を知る。

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2週間が経った。

バイオレットグランプリ、当日。

高等部の生徒達は全員グラウンドに集められていた。

中等部はこの期間授業はオフ。

全員が注目の大イベントのため、教室に設置されたモニターに全員かじりつきになってその様子を眺めている。

??「さぁー!ついに今年も始まりました!バイオレットグランプリ!!」

??「今年の司会進行、および実況を務めさせていただきます!高等部2年の清宮レイです!!よろしくお願いしまーす!!あ、私は大会には出場しません!」

レイ「まず始めに、開会にあたりまして、白石麻衣校長よりご挨拶をいただきます!」

麻衣「これより、バイオレットグランプリを開催します。全生徒、持ちうる力の全てを出し切りましょう。この大会が皆さんの成長の第一歩になることを祈っています。」

パチパチパチ…と拍手が中等部校舎から聞こえる。

麻衣「という堅苦しい挨拶はこのぐらいにして……バイオレットグランプリ!!開幕だ〜〜〜!!!」

ワアアアアアアアアッ!!!

校内全域が歓声を上げ大盛り上がりだ。

レイ「白石校長、ありがとうございました!白石校長には引き続き、本日のゲストとして実況席に入っていただきます!」

レイ「さぁ、白石校長、予選の種目は何ですか?高等部の皆さんはグラウンドに集められているようですが…。」

麻衣「フッフッフ…では発表しましょう!」

麻衣「予選の種目は…『マラソンレース』です!」

〇〇(…は?)

麻衣「ルールは簡単、グラウンドを出た先から数キロ先にある山の頂上に鈴が置いてあります!その鈴を取ってきてもう一度ここに戻ってくること。最も早く辿り着いた上位12名が予選通過です。」

その話を聞いてグラウンドの高等部はどよめき始める。

それもそのはず。

高等部だけでも生徒は1000人近くいる。

そこから一気に12人に絞ろうというのだ。

麻衣「よいドン!」

一同「…?」

麻衣「さぁ、どうしたの?もうスタートの合図はしたわよ?」

え?

えっ…?

うおおおおおお走れえええええ!!!

全生徒が慌ただしくグラウンドを駆け出した。

〇〇「あの人らしいというか何というか…。」

〇〇も同じように走っていたが、途中で突風が〇〇に向かって吹き、足が止まる。

男子生徒「ハッハッハ〜!お前、あの白石校長の息子なんだってな〜!ここで脱落してもらうぜ〜!?そりゃ、風魔法っ!!」

しかも1人ではなかった。

5人いる。

〇〇「なるほど、そういうレースか…。」

麻衣(そう、これはただのマラソン大会じゃない、魔法を使って加速したり妨害したりの何でもありのレース…。○○、桜、頑張って…。)

○○「俺さ、多数で1人をやるってそのやり方…。」

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○○〜、殴らせてくれよ〜。

みんなでリンチしようぜ〜。

ヘッヘッヘ…。

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〇〇「大っ嫌いなんだよな…!」

男子生徒「…やっべ、なんか地雷踏んだっぽい…。」

〇〇「《武装ぶそう》。」



一方その頃…。

走る、久保史緒里。

久保史緒里「…!」

史緒里は突如飛び退いた。

瞬間、史緒里の数歩先の地面が崩れ大きな穴が空く。

男子生徒「ほぉ〜!俺の落とし穴トラップに気づくとは、さすがクラスS、久保史緒里。」

史緒里が見上げると、ちょっとした高台のような岩に男子生徒がおり、史緒里を見下ろしていた。

史緒里「…。」

しかし、史緒里は指をスッと動かすと、また走り出してしまった。

男子生徒「えぁ?お、おい!に、逃げるのか!無視するのか!…ん?」

自分の周辺が何やら薄暗いことに気がついた男子生徒が頭上を見ると、そこには大量の巨大なツララが浮遊していた。

そしてそれらは男子生徒目掛けて降ってきた。

男子生徒「いぃっ!?」

いや、違った。

それらは一つとして男子生徒に直撃することはなかった。

男子生徒に当たらないギリギリのラインで足元に突き刺さる。

最終的に全てのツララが振り終えた後、男子生徒は腕の一本さえ動かせない状態になっていた。

男子生徒「な、何だこれ!?お、おい!これ解除しろ!動けねぇじゃねぇかっ!!待てぇ!久保史緒里ぃぃぃ!!」

その叫びに史緒里は耳を貸すことなく走り続ける。

史緒里「全く、私の走りを邪魔するからそうなるのよ。」


さらに一方、美月サイド。

美月「よっ!」

美月が手をかざすと、周辺の岩石が浮遊し、繋がり、空中に一つの道が生成される。

美月「フフン、やっぱ邪魔されない為にはこういうのが一番よね〜!」

「ねぇ!あれ見て!」

「あれは!山下美月!」

「あいつの作った道を追えば楽だぞー!山下さんに続け〜!」

そんなガヤと共に後ろから数人の生徒が美月の作った道をついてくる。

美月「げっ!ついてくるな〜!」

美月は手を後方にかざすと、自分が通り終えた道の岩石の浮遊を解除し、道を崩した。

「ぎゃーっ!!」

「道が崩れたー!」

「落ちるー!」

美月「よし、これで邪魔者はなしっと!」



そして更に一方、井上和サイド。

和「そろそろかな…。」

ぼそっと和が呟くと、和の両手に大きな炎が点る。

和(私の魔法は《炎》。そしてこれを応用すれば…。)

そして両腕を後方にまっすぐに伸ばした体勢、いわゆるナルト走り、エイリア走りと言われるような姿勢になる。

そして…。

和「《火炎魔法応用・ターボエンジン》!!」

和の手から火炎が吹き出し、和は一気に加速する。

まるでターボエンジンをかけた車のように。

それは物凄い速さで他生徒達を追い抜き、和の通った場所は時差で暴風が発生する。

「うわっ!!」

「何だ!?」

「何か通っていった!?」


清宮「おーっと!1年の井上和さん!これは速い!火炎魔法を応用して大きく加速!」

その状況をモニタリングしたいた中等部生徒達は口々に感嘆の声を上げる。

「すっげぇ…。」

「俺も火の魔法を使うけどあんな芸当できないぜ…。」

「流石学年トップ、魔力の保有量が違うわ…。」

麻衣「あの子、凄いわね…。井上和ちゃん…。『選抜』には合格かしら…。」



そして、学校付近の山、山頂。

簡易的な台に鈴が積んである。

山下「これだな〜!?」チャリン

久保「…よし!」チリン

○○「あとは戻るだけ、っと。」チリリン

先頭集団から順々に鈴を取り、来た道を引き返していく。

和「よし、鈴ゲット!」チリリン

和「このまま学校までならギリギリ魔力がもつはず…。」

和「《ターボエンジン》!

ドヒュンッ!と言う音と共にまた和が物凄い速さで走り出す。



〇〇「クッソ…また足止めかよ…。」

男子生徒「お前を倒して鈴を奪えばわざわざ山頂に行かなくてもいいもんなぁ!!」

男子生徒2「おい、鈴は早い者勝ちだからな!恨みっこなしだ!」

男子生徒3「流石にクラスSの久保さん山下さんには勝てないからなぁ…。冨里倒すのがちょうどいいわ。」

麻衣(これはスピード系の魔法だけが有利なゲームじゃない。ルールは鈴を持って帰ってくる事なのだから、こうやって鈴を強奪するのも戦略のうち…。)

〇〇「随分なめられてんじゃん、俺…。」

〇〇が武装をしようと魔力をたぎらせたその時。

和「わぁ〜!どいてどいて〜!!」

ヒューーーン!!

舞い起こる土煙。突風。

男子生徒「うわっ!!」

男子生徒2「ゴホッ!何だ今の!」

男子生徒3「あれ!?〇〇がいねえぞ!?」

男子生徒「なにぃ!?」


一方その〇〇は…

〇〇「あぁぁぁぁあああぁぁっ!!」

和に引っ付いていた。

和「ちょっと!手離してよ!降りてよ!スピード下がるでしょ!?」

〇〇「今落ちたら俺物理のナンタラの法則ですっごいダメージ受けるからやだよ!このまま運んでもらう!そもそも井上さんが俺のこと轢いたからこうなってるんでしょ!?」

和「もぉ〜!!」

○○「ん?…井上さん!前!前!」

和「え?前?」

和が前方に目を向けると、そこには魔法陣や魔法武具を構えて2人を迎え撃とうとする数人の生徒の姿。

「アイツらを倒して鈴を奪え〜!!」

「「おおおおお!!」」

和「○○くん!私今両手使えないから何とかしてアイツら押し退けてよ!せっかく私のスピードにあやかってるんだからそのぐらいやってよね!!💦」

○○「ええ!?マジ!?」

和「じゃないとここで2人とも脱落だよ!?」

○○「仕方ない…《武装!紫剣!》」

○○は紫の鎧、紫剣に武装する。

和「うわっ!また重くなった!💦」

○○「《紫電雷光しでんらいこう!!》

○○が和にぶら下がりながら剣を大きく一振りすると、剣から紫色の雷でできた衝撃波が地面を抉りながら発射される。

「「うわぁぁぁぁぁっ!!」」

〇〇「よし!いっちょ上がり!!」

和「終わったなら早く違う鎧に着替えて!重い〜!!💦」

伸びている生徒達を尻目に和、と、それにぶら下がる〇〇は通り過ぎていく。

そして…。

清宮『11着!12着!!決着!!ラスト2名の枠に滑り込んだのはなんと1年生!井上和さんと冨里〇〇くん!バイオレットグランプリ予選!これにて終了〜!!』


和「ほら〜!〇〇くんがついてきたからギリギリのゴールになっちゃったじゃん!!」

〇〇「ごめんって…。予選通過できたんだからいいじゃん…。後でジュース一本奢るからさ…。」

和は〇〇に顔をズイッと近づけて睨む。

和「お・菓・子!!」

〇〇「わ、わかりました…お菓子、ご馳走させていただきます…。」

和「よろしい。」

遅れてゴールした予選落ちの生徒達はそんな2人のやりとりを見ながら、

(ギリギリっていうか、1000人中トップ12に入ってる時点で2人ともだいぶやばいんだけどなぁ…。)

などと考えていた。



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??「やはりあの力…欲しい…!手に入ればやがて私の悲願が果たされる時が…!フフフハハハハハハッ!アーハッハッハッ!!」




「星は微かに光り」

第5話 終

続く。

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