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神は彼女に幸せを与え忘れた -「百万本の薔薇」とラトヴィアの子守歌-

あなたは知っているだろうか
『百万本の薔薇』という唄には原曲があることを

『マーラが与えた人生』というタイトルのラトヴィアの子守歌
バルト三国の一つラトヴィアは、隣国のソ連やナチス・ドイツに国土を蹂躙されて
人々はシベリアに流刑され、また難民となって離散を余儀なくされた
故国に残りえたのは半数にすぎない

『マーラが与えた人生』で歌われるのは
ひとりで生きる不幸な女性のこと
詞中の「マーラ」はラトヴィア神話に登場する最高の女神

「神さまは命を与えてくれたけれど
幸せまでは与えてくれなかった・・・」


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幼いあのころ 哀しみに駆られると
母はわたしを胸に抱きしめ
笑みを浮かべて こうつぶやいた
「マーラは娘に命を与えたけれど 幸せはあげ忘れた」

時が経ってもう母はいない
今はひとりで生きるわたし
寂しさに駆られると 母を想い出し 同じことをつぶやく
「マーラは娘に命を与えたけれど 幸せはあげ忘れた」

忘却の彼方にあったそんな唄
ある日突然よみがえった
わたしの娘が微笑んで口ずさんでいる
「マーラは娘に命を与えたけれど 幸せはあげ忘れた」

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やはり幼くして両親を亡くし
抗しがたい運命の力に翻弄されて
苦難に苛まれたまま
娘を残して旅立ったあの人に
この詞を捧げたい

ラトヴィアの哀しみ
そしてあの人の哀しみ
その哀しみは愛娘にも受け継がれる


神への祈りを欠かさなかったあの人
それでも、神っているのだろうか

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