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超短編小説 老夫婦

年末、家族連れが買い物に出かけ大量の食料を買う中、老夫婦は道の途中で立ち止まった。
「お金が足りない。」夫はため息をついた。
「食費をどうにかすればなんとかなりますよ。」妻は笑って夫を励ました。

子供たちは社会人となり家を出て連絡さえしてこない。夫婦からも連絡はしなかった。

大晦日、わずかばかりの食事をし、寒い中、暖房もつけず毛布にくるまり老夫婦は向かいあう。

「お餅買いたかったけどごめんね。」妻はちょっと泣きそうになった。
「なくても大丈夫、正月が無いと思えば大丈夫。」夫は笑って妻を励ました。

正月を迎え、人々が初詣に向かう様子が寒い部屋のテレビに映ったのを見て老夫婦は手を取り合った。
「なんか眠いね」
「眠りましょうよ」


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