救われた日
結婚前の話
私は今の仕事とは全く異なる職種に就いていた。
日々の忙しさに追われ、まだ仕事にも慣れない新人だった頃。
必死で、その日の業務をこなすだけで精一杯だった。
残業の日々。
どれだけやっても追いつかない業務が日に日に私を追い詰めていた。
なぜなら、私は他者の業務も引き受けていた。
断る事が出来なかった。
何時までに終わらせて欲しい、と言われればその通りに。
まだ二十代の私には、断るという勇気も考えもなかった。
自分の担当外の業務まで
「君に頼んだら、早いから助かるんだよ」
そう言われれば断れなかった。
とにかく、こなせばいいのだと、ただ、それだけだった。
そんな事を毎日繰り返せば、どうなるかなんて分かるはずなのに。
やらなければ、こなさなければ、迷惑になる。
誰に対してなのか、誰のためになのか、それさえ考える余裕もなかった。
みんなが帰った後、1人残り、書類を仕上げる。
そんな私に直属の上司が言った。
「なぜ、そんなに1人で頑張るのか?」と。
答えられなかった。
上司は
「翌日に持ち越さないように頑張っているのは評価する。ただ、何もかもを背負い込む必要はない。今日はもう帰りなさい」
そう言われ、素直に帰ったと思う。
翌日、朝礼が終了すると同時に上司が口を開いた。
「みなさんは気づかないのですか?たった1人で必死に業務をこなし、頼まれた仕事は必ず期日までには仕上げ、みなさんが普通に業務をこなしてる間、彼女は火の車のような状態であることを、気づかないとは言えないはずです。各々少し考えてみて下さい」
と。。
その日の業務終了後、私はまだ少し仕上げなければならない書類を仕上げていた。
「手伝おうか?」
振り向くと、2年先輩の彼女が立っていた。
私は、何も言えず、ただニッコリ笑うだけだった。
「なんで?」
え?
「なんで頼れないの?なんで助けてって言わないの?あなたを見ててずっと思ってたけど、少しは周りに甘えてみたら?」
甘える、頼る、私には出来ない事だった。
甘える?頼る?どうやって?
甘えて相手に迷惑かかるんじゃ、、
頼って迷惑かけるんじゃ、、
そう言う風にしか考える事が出来なかった私。
「もっと周りに頼って、甘えて、助けてって言ってみ。全部1人でやろうなんて思わないことだよ」
私の中で何かがプツッと切れたような、、目に涙が溜まってきてるのが分かる。
書類が見えない。
私は人前で泣く事もできない。
出来なかった。
子供の頃からそうだった。
涙が溢れないように必死だった。
先輩は黙って書類を仕上げ
「もう少し上手に頼ったら?何も言わないと大丈夫なんだなって思われるだけ。顧客の対応もしながら、それ以外の業務も時間内に1人でしようなんて無理があるよ。もう少し思ってる事を言葉に出した方がいいよ。みんなちゃんと聞いてくれるから」
そう私に言った。
「ありがとうございます」
私はこの一言を言うのが精一杯だった。
これ以上の言葉を発する事はできなかった。
泣きたくなかったから。
でもこの一言もちゃんと言えたのかどうかも分からない。
あの頃の私は、決して仕事ができるわけではなく、ただ誰かにお願いする事も頼る事も、してはいけないと、思っていた。
弱音を吐いてるような、自分が何も出来ない人間になるような、そんな風に思われるようで嫌だった。
そんなバカげた考えの私を上司と先輩が救ってくれた。
この2人がいなければ、きっと私は甘える事も頼る事もできないまま、壊れていたかもしれない。
甘えていい、頼っていい、助けてって言えばいい。
あの頃の私にブレーキをかけてくれた2人に感謝している。
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お読み下さりありがとうございます😊
思い出すと懐かしいような、あの頃の苦しさがよみがえるような、、、。
なぜ、あの頃自分に必死だったのか、助けてほしいと言えなかったのか。。
あの頃があったから、今があるわけで。
上司は定年後、大好きな歌で自費でCD💿を出したとか?
先輩は、会社は違うけど同じ金融関係の仕事を今も頑張っていると知り合いから聞きました☺️
お二人ともお元気そうで何よりです😌🍀
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