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ジョナサンズ役者座談会

厄病神とジレンマ」、ついに幕が上がるまで一週間となりました。舞台美術もスタジオに搬入され、ここから本番へ向けてラストスパートをかけていきます。前回記事は記録係の目から見た役者紹介でしたが、今回は当の役者たち自身の口から、このメンバーで旗揚げを迎えるジョナサンズについてたっぷり語ってもらいました。

というわけで、円卓の騎士感あふれる集合写真をもう一度(後方にちょっとだけ写っているのは美術です)。

-はい、では役者座談会を始めたいと思います。

一同:よろしくお願いします!

-この記事で何度も触れてますけど、お互いに初共演だったりする人が多いと思うんですね。なので、まずは「どうしてジョナサンズに出ようと思ったのか?」ということから聞いていけたらなと。

むらさきしゅう:以前から(さいとう)篤史さんとは知り合いなんですけど、演劇哲学みたいなものが共有できるというか、そういうのを話し合える人だなと思っていて。直接のきっかけは電話ですけど、ほんとに突然でしたね。それまで旗揚げを考えてるって話も聞いたことなかったんですけど、いきなり電話かかってきて「今度やるから!出てよ!」って……とにかく熱意がすごかったんですよ。

-その熱意に押されて出演を決めた感じですか?

むらさき:いや、なんかその時は反射的に冷たい態度とっちゃって……稽古日程はどうなってるとか、すごく事務的な話ばかりしたのを覚えてます。「気持ちはわかったから一旦落ち着きましょう」的な(笑)。けど、なかみー(中三川)や鐵くんもそうだけど、界隈の違う人たちが集まってるから……新しい人たちと出会ってみたいなという気持ちもありましたし、あとは普段(出る芝居が)あまり物語をやらないというか、かっちりしたストーリーで見せるタイプのものが少ないので、こういうのも一度出ておきたいなと思って。

山本佳奈:私はオーディションから出られることになったんですけど。ワークショップも兼ねているオーディションだったので、最初はぜんぜん「絶対受かってやるぞ!」みたいな意気込みがあったわけじゃなくて。

-自分が選ばれるとは思っていなかった?

山本:全く思ってなかったです。他の参加者の人たちも結構いろんな経歴を持っている方が多くて、すごいなーすごいなーって学ぶばかりという感じでした。オーディション組は私だけだって聞いていたので、ちょこっと隅のほうに出てくるだけの役かなと思ってたんですけど……全然、こんなことになっちゃって。驚きと複雑さでいっぱいですね。

柚木成美:私は篤史さんとは3年くらい前に共演して、その頃から演技のアドバイスに乗ってもらったりしてたんですけど、去年の夏ごろ久しぶりに会ったとき「実は今度旗揚げするんだけど」って。「俺が魅力的だと思った役者しか呼んでないから、出てほしい」と言われて。

鐵祐貴:あ、それ言われた!

やないさき:私も言われました!

-全員それは言われてるんですね。

柚木:だから「篤史さんが選んだ人たちってどんな感じだろう?」という興味もあって参加しました。そしたら、稽古が始まったらみんな本当に魅力的だし才能ある人ばっかりで、勉強になることもいっぱいです。

-冬月さんは、舞台出演自体けっこう久しぶりですよね。

冬月ちき:そもそもあまり自分からガンガン手を挙げていくほうじゃないのと、タイミングや巡り合わせもあって年1本ペースくらいになっちゃうんですけど。私もオファーは電話かかってきて、まあ……熱意?(一同笑)

冬月:でも私はけっこう昔の、さいとう君がトンガッてた頃から知ってるので、その時期に比べると勝手にお姉ちゃん目線で「大人になったな」という、なんだろう、見守るような感じで「じゃあ(出ます)」って。

むらさき:篤史さんって昔トンガッてたんですか。

冬月:あのね、ナイフだったよ。

ジョナサンズの作風は「映画的」?

-今回の台本を読んでみての、率直な感想を聞いてもいいですか?

:映画みたい。

むらさき:映画版を作ってもいいんじゃないかって思う。

-それは、ストーリーの構成的なことでですか?

中三川雄介:カット割りが浮かんでくる感じですよね。

山本:わかるわかる。

中三川:でも鐵さんが小説っぽいって言ってたのもわかります、章ごとに分かれてるような感じというか。

:そうそう、群像劇の小説っぽい。朝井リョウとか。

むらさき:でも(実際に稽古してみて)思った以上に広がりがある話だなと。あるシチュエーションを中心として、全然違う生活の様子を一カ所にぎゅっと集めてくる、みたいなことをやってるから映画っぽいと感じるのかもしれない。

中三川:篤史さんって役者されてるときはコメディとか明るいエンタメのイメージがあったんですけど、その感じで台本読んでみたら全然違ってて。役者やってる篤史さんを知ってると、意外な話だと思うかも。

-登場人物のキャラクターについてお聞きします。「厄病神とジレンマ」は不幸にまつわる話なので、みんなそれぞれの方法で幸せを求めるわけですけど。自分の役に限らず、本来の自分とタイプ的に近いと思う登場人物はいますか?

冬月:私は、やないさんの役ですね。この子が言ってること全部わかる、ってくらい。

やない:近いかどうかは分からないけど自分の役は好きです。そのやり方で幸せになれるの? とは思いますけど。そういうところも含めた健気さは、愛せるなあって。

:僕も近いのは自分の役ですかね。あまり先のことを考えない……いや、ちゃんと考えるんですけど、時々どうでもいいやって思っちゃうから。

柚木:私も鐵くんの役は過去の自分と重なる部分あるかも。あ、でも自分の役は、似てるというより理想の女性像に近い感じです。こんなふうになれたらいいなって思います。

むらさき:僕も自分の役と重なる部分はあるけど、柚木さんの役にも共通する要素はあるのかな……二面性とか、生きていくためのしたたかさ的なもの。逆に、鐵くんや中三川くん(の役)にはなれない。

:考えてないからなあ(笑)

山本:私も、あんまり考えない……

柚木:(役と)真逆だよね?

山本:役の感じとはまた違うんですけど……感情的になっても無駄だなっていうか、場の空気的にも自分の立場的にも何のメリットもないなって思ったら感情を押し殺すことは結構あります。

-自分の演じる役と自分自身って、全く同じには絶対ならないと思うんですけど、何かしらの共通点はあるんですかね。

中三川:だんだん役に馴染んでいく過程で似てきたり、似てる部分を発見することはあると思います。

やない:役のバックボーンについて話し合ったり、台本以外の部分まで掘り下げて考える機会はいっぱいあって、自分の役とか劇中で関わる人たちへの愛着はすごくあるんですね。それに、みんなも言ってましたけど、本当にいい役者さんばかり揃った公演だなって思うので。クリアしなきゃいけない課題はまだまだ残ってるんですけど、やることは変わらないので、残りの期間も力を尽くしていきたいです。

上演時間にすれば80分前後の作品ですが、約2ヶ月の稽古期間をかけて少しずつ作り進められていった「厄病神とジレンマ」の劇中で暮らす人物には、その時間ぶんの深さをともなった生活が存在しています。
明るいお話でも、派手なお話でもありません。ただ、少しばかり時間をお借りして、彼らの生き方を見つめていただけたらと思います。そこにいるのはあなた自身ではありませんが、あなたに少し似た人かもしれないし、あなたが出会ったことのある人に似ているかもしれません。

6月の第1週、劇場にてお待ちしております。

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ジョナサンズ

「厄病神とジレンマ」

作・演出|さいとう篤史

2016年6月1日[水] - 5日[日]

SPACE 梟門 にて

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