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定例ジョナサン会議(後編・俳優のこと)

ー僕は記録係として結構早い段階から関わらせてもらっていて、オーディションも見学に行ったし、オファーの成否についても報告をその都度もらって知ってるんだけど、こうして集まった人たちを改めて見ると『よく集めてきたな』っていうのが正直な気持ちとしてある。

「初共演だったり、そもそも初対面どうしが結構多いですね」

−そうそう。どこかで見たことのある組み合わせ、っていうのが少ない。今回、役者を選ぶときの基準みたいなものはどこにあったんでしょう?

「見た目がかぶらないようにとかのバランスは考えてます。でも基本的には俺が見たいと思った人、魅力を感じた人しか呼んでません。あと、これは自分の話なんですけど、役者をやっていて心がポッキリ折れた瞬間が以前あって……」

−大丈夫? それは記事にできる話?

「大丈夫です。その時、俺は演出家の要望に応えることが全然できなくて、自分が今まで何を軸に役者やってたのかが判らなくなったんですよね。おもに言われたのは、考えが足りないとか、考えに身体が追いつけていないとかってことで、それはもうボロクソだったんですけど」

「今回こちらからオファーしたのは、それができている人だと思ったから呼んだ部分もあって。自分がやりたいと思うことをやれている、役者という仕事ぶりへの憧れかもしれないです。他にも、演劇に対する誠意だとか、壁にぶち当たったときの諦めなさ、我の強さみたいなことで選んだ人もいます。いずれにしても、その要素を俺が魅力的だと思ったってことに尽きるんですけど」

−台本を書いているとき、たとえばその役のセリフが役者さんの声で脳内再生されることってありますか?

「これをあの声で読んでもらうとどんな感じだろう? は考えますけど。自分の口調でセリフを書かないのと同様、そのイメージに引っ張られすぎないようには気をつけてます」

役者の既成イメージを壊したい

−初稽古の時点ではもう誰がどの役をやるか確定していて、読み合わせをしてみて役が入れ替わるようなことも特になかったけど、配役に関して何か意図していたものはある?

「『こういう役が似合うよね』みたいな印象をぶち壊したいなと思ってます。可愛い役が多かったり、突飛なキャラクターで使われやすかったり、やっぱり役者ごとに見慣れた役柄ってあるんですよ。それはもちろん得意分野であり武器でもあるけど……その人のもっと違う側面を俺は知ってるから、お客さんはこの人の魅力を半分しか知らないんじゃないかと思っていて」

−まだ舞台上では見せていない、本人が確実に持っている個性とか素質のようなもの。

「ある程度は役者としての技量も必要だけど、役者になるより前からずっと生きてきたんだから、その間で積み重ねた人生経験を底上げに使ってほしい。なので、役者力というよりは『人間力』ですかね。こいつらこの程度じゃないんだぞ! ってところをたくさん見てもらいたいです」

−役者と役の関係について、もう少しだけ。今回の人物設定は、出演者が決まってから考えました? それとも配役は決めていて、そのイメージに合う人を選んできた?

「うーん……何人かオファーさせていただくにあたって、パターンは複数考えてましたね。この人が出るならこの設定だな、この人だったらこんな役の可能性もあるな、というふうに。オーディションで選んだ人も、その時に感じた魅力をうまく体現できる役に当てはめていった感じです。この人が出演しなければ全然違うストーリーになったかもしれない、って役者もいます。それから、この人とこの人が同時に舞台上にいるシーンだったら俺は見ていられるなって」

−見ていられるっていうのは……ああ、自分がお客さんの立場だったとして、ってことか。

「そういう『見たい組み合わせ』を登場人物としても近い関係性のところに配置して、自然と出番が多くなるようにしました。脚本だと、いろんな要素が噛み合って話が前に進んでいくじゃないですか。もちろん脚本の上でも連鎖反応は起こしたいけど、できれば役者間でも連鎖が起こってほしいとは思ってます」


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ジョナサンズ

「厄病神とジレンマ」

作・演出|さいとう篤史

2016年6月1日[水] - 5日[日]

SPACE 梟門 にて

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