英国NHSのホメオパシーに対する評価

ホメオパシー

ホメオパシーは、高度に希釈された物質の使用に基づく「治療法」であり、実践者は、身体が自然に治癒することを引き起こすと主張しています。

2010年の下院科学技術委員会のホメオパシーに関する報告書では、ホメオパシーのレメディーはプラシーボ(ダミー治療)よりも良いパフォーマンスを示さないとされています。

2017年、NHSイングランドは、その効果に関するいかなる証拠もないため、コストを正当化出来ないとして、NHSでホメオパシーに資金を提供しないことを発表しました。これは、2018年に高等裁判所の判決によって裏付けられました。

ホメオパシーとは何ですか?

ホメオパシーは補完・代替医療の一つです。つまり、ホメオパシーは、従来の西洋医学の一部である治療法とは重要な点で異なっているのです。

サミュエル・ハーネマンというドイツの医師によって1790年代に開発された一連の考え方がベースになっています。

「治療法」の中心的な原則は、「類は友を呼ぶ」、つまり、ある症状を引き起こす物質が、その症状を取り除くのにも役立つというものです。

第二の原則は、「サクション」と呼ばれる希釈と振盪のプロセスに基づいています。

ホメオパシー療法では、物質がこの方法で希釈されればされるほど、症状を治療する力が強くなると考えられています。

多くのホメオパシーレメディーは、元の物質が全く、或いは殆ど無くなるまで、水で何度も希釈された物質で構成されています。

ホメオパシーは、喘息などの身体的症状やうつ病などの精神的症状など、非常に幅広い症状を「治療」するために使用されています。

ホメオパシーは効くのですか?

ホメオパシーの効果については、広範囲に渡って調査が行なわれています。ホメオパシーがあらゆる健康状態の治療として効果的であるという質の高い証拠はありません。

ホメオパシーはNHSで入手出来ますか?

ホメオパシーはNHSで広く利用出来るわけではありません。2017年、NHSイングランドは、GPやその他の処方者は、その提供を止めるべきだと勧告しました。

これは、「NHSでのホメオパシーの使用を支持する明確で強固な証拠はない(PDF、607kb)」ことが分かったからです。

2018年、英国ホメオパシー協会(BHA)が異議を唱えた後、高等裁判所の判決はNHSイングランドの勧告を支持しました。

ホメオパシーは通常、個人で行なわれており、ホメオパシーのレメディーは薬局で購入することが出来ます。

ホメオパスへの相談の値段は、約30ポンドから125ポンドと幅があります。ホメオパシーの錠剤やその他の製品の価格は、通常4ポンドから10ポンド程度です。

試してみる場合、何を期待すればよいですか?

ホメオパスに初めて会った時、通常、特定の健康状態、一般的な健康状態、感情状態、ライフスタイル、食事などについて尋ねられます。

それに基づいて、ホメオパスは治療方針を決定します。多くの場合、ホメオパシーのレメディを錠剤、カプセル、チンキ剤(溶液)の形で与えます。

ホメオパスは、レメディーの健康への影響を評価するために、1回または複数回の経過観察に参加するよう勧めることがあります。

どのような時に使われるのですか?

ホメオパシーは、非常に幅広い健康状態に使われています。多くの実践者は、ホメオパシーがどんな症状にも役立つと信じています。

人々がホメオパシー治療を求める最も一般的な症状の中に、以下のようなものがあります。

  • 喘息

  • 耳の感染症

  • 花粉症

  • うつ病、ストレス、不安などの精神的な健康状態

  • アレルギー(食物アレルギー等)

  • 皮膚炎(アレルギー性皮膚疾患)

  • 関節炎

  • 高血圧

ホメオパシーがこれらやその他の健康状態に対して効果的な治療法であるという質の高い証拠はありません。

また、ホメオパシーがマラリアや他の病気を防ぐことが出来ると主張する実践者もいます。これを支持する証拠はなく、ホメオパシーが病気を予防する科学的に尤もらしい方法もありません。

NHSに治療法の使用について助言するNational Institute for Health and Care Excellence(NICE)は、いかなる健康状態の治療にもホメオパシーの使用を推奨していません。

規制の問題は何ですか?

イギリスには、ホメオパシー施術者に対する法的規制はありません。これは、資格や経験がなくても、誰でもホメオパスとして開業出来ることを意味します。

自主規制は患者の安全を守ることを目的としていますが、治療が効果的であるという科学的根拠があることを意味するものではありません。

ホメオパシーは安全ですか?

ホメオパシーのレメディーは一般的に安全であり、これらのレメディーを服用することで生じる重篤な副作用のリスクは小さいと考えられています。

ホメオパシーレメディの中には、安全でない物質や、他の薬の作用を妨げる物質を含んでいるものもあります。

ホメオパシーのために、医師から処方された治療を止めたり、ワクチン接種などの処置を避けたりする前に、GPに相談すべきです。

ホメオパシーの効果に関する証拠

ホメオパシーの効果に関する科学的証拠の見直しが何度か行なわれています。

2010年、下院科学技術委員会は、ホメオパシーがあらゆる健康状態の治療法として有効であるという証拠はないと述べています。

ある症状を引き起こす物質が、その症状の治療にも役立つという考え方の裏には、何の証拠もありません。

また、物質を水で薄めて振ると、その物質が薬に変わるという考え方の裏付けとなる証拠もありません。

ホメオパシーを支える考え方は、主流の科学に受け入れられておらず、物理的世界の仕組みに関する長年受け入れられてきた原理とも一致していません。

ホメオパシーに関する委員会の2010年の報告書は、「類は友を呼ぶ」原理は「理論的に弱い」とし、これは「医学の定説」であると述べています。

例えば、多くのホメオパシーレメディーは、最終的なレメディーに元の物質が1分子も残っていない可能性があるほど希釈されています。このような場合、ホメオパシーのレメディーは水以外の何ものでもありません。

ホメオパスの中には、サクセッションの結果、元の物質が水に「刻印」を残すと考える人もいます。しかし、このような現象が起こるメカニズムは知られていません。

2010年の報告書にはこう書かれています。「超希釈液が以前に溶解した物質の痕跡を維持出来るという考え方は、科学的にあり得ないと考えています。」

ホメオパシーを使用する人の中には、プラシーボ効果として知られている現象の結果として、健康状態の改善を見ることが出来るかもしれません。

プラシーボ効果しか得られない健康法を選ぶと、より効果的であることが証明されている他の治療法を逃してしまうかもしれません。

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