入院中のCOVID-19患者がレムデシビル投与によって死亡したりはしていません。

【主張】

COVID-19で入院した患者を死亡させたのはレムデシビルであると発表された。

【概要説明】

  • 2020年の初期の研究では、COVID-19の治療にレムデシビルを使用しても、ほとんど改善しないことが示されました。その後の研究では、入院や死亡のリスクが87%低下した研究など、この薬剤は有効であることが判明しています。

  • レムデシビルがCOVID-19患者を死亡させる原因であることを示した研究はありません。

  • 医療専門家は、レムデシビルは病気の深刻さのために死亡のリスクが最も高い患者に投与されると説明しています。

【レビュー】

ウィスコンシン州選出のRon Johnson上院議員が主催したパネルディスカッションで、COVID-19で入院した人の治療に使われる抗ウイルス剤の静注用レムデシビルが、実際に患者を殺していると主張した看護師がいました。

ワクチンに反対し、COVID-19の実証されていない治療法を推進する団体「American Frontline Nurses」の創設者であるNicole Sirotekは、加速するCOVID-19危機を支援するために2020年5月にニューヨークへ行った際、病院で「COVID-19で死亡した患者を一人も見ていません。」と集会で述べました。

彼女は、死亡したのは、重度のCOVID-19で入院している大人と子供に対して、FDAから緊急使用許可を受けたばかりのレムデシビルの使用のせいだと非難しました。その後FDAは、入院患者や重症化するリスクの高い外来患者に対するレムデシビルの使用を全面的に承認しています。

Sirotekは1月25日のパネルで、「われわれは皆、それが患者を殺しているのを見ました。」と述べました。そして今、FDAが承認したこの薬は、米国中の患者を殺し続けています。Sirotekは「この薬を2回投与された患者の生存率は25%以下でした。」とも述べました。

Johnson上院議員は、COVID-19ワクチンを長年にわたって批判してきました。彼のパネルには、Robert Malone博士やHarvey Risch博士等、COVID-19ワクチンに反対している他の医療従事者も登場しました。

Sirotekのスピーチのビデオは、YouTubeに投稿され、Facebookで共有されました。Facebookは、ニュースフィードにおける偽ニュースや誤った情報に対する同社の取り組みの一環として、このビデオにフラグを立てました。(Facebookとのパートナーシップについてはこちらをご覧下さい。)

公開されたデータや、私達が話を聞いた医療専門家は、Sirotekの主張と矛盾するものでした。

「レムデシビルは、COVID-19の重症例で死亡のリスクが高い入院患者に投与される。」、と専門家は説明しています。ですから、この薬をもらった人は死ぬかもしれません。しかし、この薬が原因で死亡しているという証拠はありません。Sirotekの結論は、科学的な証拠ではなく、逸話的な観察と仮定に基づいていると彼らは言いました。

我々は、Sirotek氏の団体にコメントと彼女の発言を裏付ける詳細な情報を求めたが、回答は得られませんでした。

レムデシビルに関する研究報告

レムデシビルは、Gilead Sciences社がVekluryという商品名で販売している点滴薬です。最近まで病院での使用しか認められていませんでしたが、2022年1月21日、FDAは重症のCOVID-19を発症するリスクのある非入院患者への使用を承認し、年齢制限を12歳以下に引き下げました。ドナルド・トランプ前大統領は2020年10月にCOVID-19で入院した際、レムデシビルの治療を受けました。

この薬は、医師や研究者がまだこの病気とその治療法について学んでいた2020年初頭に、COVID-19の治験治療薬として初めて名乗りを上げました。

研究により、その有効性は様々な程度であることが示されています。

2020年5月1日に同剤の緊急使用許可を与えるにあたり、FDAは次のように述べています。:「COVID-19で入院中の人々の治療にレムデシビルを使用することの安全性と有効性について知られている情報は限られていますが、治験薬は一部の患者の回復までの時間を短縮することが臨床試験で示されました。」と。

レムデシビルを投与された入院患者は、プラセボを投与された患者よりも31%早く病気から回復したという、NIHが2020年4月に実施した臨床試験の予備結果に言及したのです。

WHOが30カ国で11,000人以上の成人患者を対象に実施した先行研究では、同薬の効果は殆どないことが判明していました。WHOは、レムデシビルが有効であるという限られた証拠であるとして、入院中のCOVID-19患者にはまだレムデシビルを推奨していません。

1月27日にThe New England Journalに掲載された最新の研究の1つは、入院していないCOVID-19患者562人を対象としたものです。レムデシビルの3日間の投与で、「安全性プロファイルは許容範囲であり、入院または死亡のリスクはプラセボより87%低かった」と結論付けています。

薬剤と死亡の間に因果関係はない

どの研究も、この薬が死亡の原因になっていると結論付けてはいません。

大学病院と外来輸液クリニックでレムデシビルを投与された患者を治療した経験を持つデューク大学医学部准教授で感染症専門家のCameron Wolfe博士は、「単純に薬を投与されたグループでの死亡の増加は見られませんでした。」と述べています。Wolfe博士は、NIHの臨床試験やGilead Sciences社の臨床試験の治験責任者でもあります。

「複数の厳密な試験でそのようなことは一度もありませんでした。」とWolfe氏は付け加えました。「実際、特に病気の初期に投与された場合は、通常、より良い結果が得られています」。

専門家によれば、Sirotekの結論は、彼女が観察したレムデシビルの使用と患者の死亡との相関関係を説明するために、因果関係を誤って仮定しているとのことです。

レムデシビルは当初、重症のCOVID-19で入院した人にのみ認可されていたため、「抗ウイルス剤をより多く投与された人、あるいは抗ウイルス剤をより頻繁に投与された人は、より病気になりやすい」と、ワクチン教育センター所長でフィラデルフィア小児病院感染症科の主治医であるPaul Offit博士は述べています。

Sirotekが観察したことは、「本質的に、この薬はより重症度の高い患者に処方されているということです。」と彼は述べました。

【評定】

Sirotekは、レムデシビルがCOVID-19で入院した患者を死亡させる原因になっていると主張しました。

医学的データも専門家も、この発言を裏付けてはいません。COVID-19の治療法としてどの程度有効かについては研究が分かれていますが、死亡の原因になっていることを示唆するものはありません。

専門家は、レムデシビルは病気の深刻さのために死亡のリスクが最も高い患者に投与されると指摘しています。

私たちはこの主張を「誤り」と評価しています。

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