イベルメクチンはCOVID-19の治療に高い効果を発揮する薬ではありません。

古い記事なのですが、Tess Lawrieには、ここで指摘された事項の反省と改善が一向にみられませんので晒しておきます。(見やすいようにレビューより前の部分は箇条書きにしました。)

【主張】←否定する対象です。

イベルメクチンはCOVID-19による死亡リスクを軽減する。

【詳細な評定】

サポートされていません。:

  • イベルメクチンがCOVID-19患者の治療に有効であることを示す科学的根拠はありません。

  • イベルメクチンの安全性プロファイルは寄生虫感染の治療に対してのみ確立されており、COVID-19の原因であるウイルスを含むウイルスの治療には適用されません。

誤解を招きます。:

  • COVID-19に対するイベルメクチンの使用を支持する臨床試験には、設計上の欠陥と方法論的限界があります。

  • 動画ではこれらの研究を、イベルメクチンがCOVID-19患者に有効な治療法であることを保証する証拠として紹介し、イベルメクチンがCOVID-19患者に有益な効果をもたらさないことを示す最新の研究を無視しました。

【重要なポイント】

  • COVID-19の治療薬としてイベルメクチンを使用することは、科学的根拠がありません。

  • 臨床試験は、特定の病気の治療に対するある薬の有効性と安全性を示すために、適切に計画され実施されなければなりません。

  • COVID-19患者の治療にイベルメクチンを使用することの有益な効果を示す臨床試験には、多くの場合、方法論的な欠点と設計上の欠陥があります

  • より最近の、よく設計された研究では、イベルメクチンはCOVID-19患者の治療には効果がないことが示されています。

  • 更に、イベルメクチンの抗寄生虫使用に関する安全性データは、COVID-19患者における安全性には当てはまりません。

【レビュー】

2021年3月6日に公開されたYouTubeの動画(=YouTube側から削除されたのでアーカイブです)には、医師のTess Lawrieが登場し、イベルメクチンがCOVID-19による死亡リスクを低減すると主張しています。この主張は、Front Line COVID-19 Critical Care Alliance(FLCCC)という組織がレビューにまとめた27の科学的研究を用いてLawrieが行なったメタ分析とレビューに基づいています。この動画は、この記事を書いている時点でYouTubeで14万回以上再生されています。

イベルメクチンは寄生虫感染症の治療薬としてFDAに承認されている薬ですが、ウイルスが原因のCOVID-19の治療に使うべきだという声も多いです。その抗ウイルス効果は、人での実証はされていませんが、生体外で行われるin vitro試験で、イベルメクチンがデング熱[1]やジカウイルス[2]など、いくつかのウイルスに対して抗ウイルス活性を持つことが示されています。in vitro試験は通常、人体内の状態を表さない人工的な条件下で行なわれます。

→凄く簡単に言うと、『試験管内にイベルメクチンを入れたら、ウイルスが不活性化しました。』と言っているレベルだということです。アホかと言いたくなるでしょ?ウォッカを試験管の中に入れても同じ話になると思うよwww。

COVID-19に対するイベルメクチンの有効性に関する臨床試験も行なわれ、その一部は実際に発表され、Lawrieのメタ解析に含まれています。しかし、Lawrieのメタ分析にはいくつかの問題点があります。科学雑誌に掲載された研究とは異なり、査読を受けておらずFLCCCが使用し、Lawrieのレビューに含まれているいくつかの研究も査読を受けていません[3-5]

ピアレビューが行われていないということは、疫学者や生物統計学者等、関連する専門知識を持つ科学者が独立して研究をレビューしていないことを意味します。ピアレビューは、著者が研究の重大な誤りや欠点を特定し、修正するのに役立つため、科学出版プロセスにおける重要なステップです。また、ある研究の質を見極めるのにも役立ちます。例えば、ある出版物には非常に強力な科学的証拠や新しい発見が含まれているかもしれませんが、他の出版物には仮説を裏付ける弱い研究しか含まれていないかもしれません。全体として、ピアレビューは、誇張された、あるいは裏付けのない科学的主張が広まるのを防ぐのに役立つのです。

→頑固な職人と同じで、自分の流儀が正しいと思ったら、学者は最後まで『科学的根拠で』喧嘩せなあかんのです。#お山の大将研究所 の代表みたいなのは学者を名乗ってはいけませんwww。

Lawrie個人及びFLCCCという団体は、COVID-19の治療薬としてイベルメクチンの効果を検証する現在進行中の3つの臨床試験で結論が出ない結果と、生物学や医学の訓練を受けていないデータアナリストJuan Chamieの報告書を引用しています。全体として、これらの研究や臨床試験を、その限界を認めずにCOVID-19の治療法としてのイベルメクチンの有効性を示す証拠として提示することは、不正確であり誤解を招く恐れがあります。

注目すべきは、Lawrieのメタ分析に使用されたElgazzarらの研究のプレプリントが、研究に多数の問題が検出されたため、2021年7月に撤回されたことです。これらの問題の中には剽窃、データ捏造の可能性、研究のプロトコルと矛盾するデータ等がありました。これらの問題は、授業の課題でプレプリントを分析した学生のJack Lawrenceによって暴き出されました

学生が宿題で否定出来るレベルの話を学者が世間に出したら駄目よねw。

イベルメクチンのCOVID-19への効果に関するいくつかの臨床研究の結果と限界の要約は、米国国立衛生研究所COVID-19治療ガイドラインのウェブサイトで見ることが出来ます。例えば、これらの臨床研究の限界には、サンプルサイズが小さいことや、疾患の重症度の定義が曖昧であることが含まれます。例えば、症状の重症度の定義が曖昧だと、薬物治療による改善度(もしあれば)を客観的に評価することが難しくなります。

更に、プラセボ対照を全く行なっていない研究もあります。プラセボ対照がなければ、プラセボ効果によるバイアスを排除することが出来ません。プラセボ効果とは、参加者が有効な治療を受けていると信じることで、実際には病気に対する有効な効果がないプラセボを投与されたにも関わらず、症状にプラスの効果が生じることを言います。更に、研究の中には、統計的に有意でない、つまり、全ての結果が偶然に生じたとは断定出来ないような観察結果に基づいて主張するものもありました。

COVID-19に対する潜在的な薬剤としてのイベルメクチンへの注目は、2020年にCalyらによって発表されたin vitro研究で、イベルメクチンが細胞培養においてCOVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に対して抗ウイルス効果を持つことが示されたことから始まりました[6]。この結果は、研究者にこの薬の研究を継続する正当な理由を与えましたが、この研究自体は、COVID-19に対するイベルメクチンの臨床的有効性を示す証拠にはなりませんでした。更に、この研究では、人への使用が承認されている用量の何倍もの非常に高濃度のイベルメクチンを使用していました[6]。

ビデオの主張とは逆に、López-Medinaらによる二重盲検プラセボ対照試験では、軽度のCOVID-19の患者にはイベルメクチンが有効である可能性は低いことが示されています[7]。この研究はよく設計されており、Lawrieのメタ分析で引用された臨床試験に存在する多くの制限を持ち合わせていません。この試験は二重盲検化されているため、試験参加者も研究者も、プラセボと試験薬のどちらが投与されたか、投与されたかを知らないのです。このデザインはバイアスを排除するのに役立ちます。とはいえ、著者らは、COVID-19に対するイベルメクチンの効果をよりよく理解するために、より大規模な試験を実施する必要があると結論付けています。

また、ある目的での使用に関する安全性データが、異なる用途にも適用されると示唆し、視聴者に誤解を与えています。イベルメクチンについては40年以上前から知られており、寄生虫感染症の治療に使用されてきましたが、このことはCOVID-19患者におけるイベルメクチンの安全性とは関係がありません。

ある病気に使っても安全だからといって、他の病気にも使えるとは限りません。ある病気によって生じた生理的な変化は、別の病気の場合にも同じ変化をもたらすとは限らないのです。生理的な状態の違いは、その薬がある病気には安全に使えるが、他の病気には使えないということを意味することがあります。実際、多くの薬には禁忌というものがあり、患者さんに害を及ぼす可能性があるため、使ってはいけないとされているのです。

つまり、イベルメクチンは寄生虫の感染症に使っても安全ですが、COVID-19の患者さんに自動的に安全というわけではありません。さらに、イベルメクチンがCOVID-19に対する標準治療として投与される他の薬剤とどのように相互作用するか、またその相互作用の可能性に伴うリスクも分かっていません。従って、寄生虫感染症の治療に対する安全性に基づいて、イベルメクチンがCOVID-19患者にとって安全であると主張するのは誤解を招く恐れがあります。

全体として、イベルメクチンの有効性と安全性を裏付ける証拠がないことから、FDAはCOVID-19に対するイベルメクチンの使用を推奨していません。また、米国感染症学会もCOVID-19に対するイベルメクチンの使用を推奨していません

動画の中でLawrieは、イベルメクチンの価格の安さと、簡単に大量生産出来ることについても述べています。イベルメクチンがCOVID-19に対して展開されないのは、安価であるため製薬会社にそれほど利益をもたらさないからだという意見もあるようです。同時に、安い薬、つまり広く手の届く薬で、世界中で数千万から数億人に投与されるような薬は、莫大な利益を生むビジネスであると結論づけることが出来ます。興味深いことに、イベルメクチンの製造元であるメルク社(商品名ストロメクトール)は、科学的根拠と安全性データがないことを理由に、COVID-19に対する使用を推奨していません

2021年3月22日、欧州医薬品庁は、無作為化臨床試験以外でイベルメクチンをコビド-19の予防または治療に使用しないよう勧告する声明を発表しました。

【更新履歴】

訂正1(2021年10月11日):
 イベルメクチンの商品名「ストロメクトール」に、当初、スペルミスが
 ありましたので修正しました。
更新2(2021年7月16日):
 本レビューは、Lawrieによるメタ解析に使用されたElgazzarらによる
 プレプリント研究が、倫理的な懸念によりその後取り下げられたことを
 示すために更新されました。
更新1(2021年4月16日):
 COVID-19と寄生虫感染症との関連でイベルメクチンの安全性という
 テーマで、読者に結論をより正確に説明するために、このレビューを
 更新しました。

【参考文献】

  1. Tay et al. (2013) Nuclear localization of dengue virus (DENV) 1-4 non-structural protein 5; protection against all 4 DENV serotypes by the inhibitor Ivermectin.Antiviral Research.

  2. Barrows et al. (2016) A Screen of FDA-Approved Drugs for Inhibitors of Zika Virus Infection. Cell Host Microbe.

  3. Elgazzar et al. (2020) Efficacy and Safety of Ivermectin for Treatment and prophylaxis of COVID-19 Pandemic. Research Square. [Note: This is a pre-print that has not yet been peer-reviewed by other scientists.]

  4. Behera et al. (2020) Role of ivermectin in the prevention of COVID-19 infection among healthcare workers in India: A matched case-control study. medRxiv. [Note: This is a pre-print that has not yet been peer-reviewed by other scientists.]

  5. Hashim et al. (2020) Controlled randomized clinical trial on using Ivermectin with Doxycycline for treating COVID-19 patients in Baghdad, Iraq. medRxiv. [Note: This is a pre-print that has not yet been peer-reviewed by other scientists.]

  6. Caly et al.  (2020) The FDA-approved drug ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro. Antiviral Research.

  7. López-Medina et al. (2021) Effect of Ivermectin on Time to Resolution of Symptoms Among Adults With Mild COVID-19. The Journal of the American Medical Association.

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