【あたおか】公衆衛生の専門家達は、COVID-19ワクチンが緊急使用許可を得るために、イベルメクチンの信用を失墜させたのではありません。

公衆衛生の専門家らは、Pfizer社をはじめとする製薬会社によるCOVID-19ワクチンがFDAから緊急認可を得るために、抗寄生虫薬イベルメクチンの信用を失墜させたのでしょうか?いいえ、そんなことはありません: 新しいワクチンが開発される一方で、イベルメクチンはCOVID-19の治療薬としても研究されていました。臨床試験において、イベルメクチンがCOVID-19の原因ウイルスを殺すという決定的な証拠は得られませんでした。

法律により、FDAは公衆衛生上の緊急事態が発生し、既存の有効な治療法がない場合を除き、新薬の使用を迅速に承認することは出来ません。COVID-19ワクチンの開発と承認は、緊急時使用許可(EUA)が下りる前に、安全性と有効性を確保するための実験室及び臨床試験と規制プロセスを経て実施されました。ワクチンのEUAは、広範な臨床試験とデータ分析に基づいており、COVID-19を予防し、重症化と死亡を減少させる能力を実証しています。

この主張は、2023年7月16日に公開されたInstagram上の投稿と動画(アーカイブはこちら)に掲載されました。 1分間の動画でのナレーターの発言は以下の通り:

Robert F. Kennedyは、何故彼らがイベルメクチンを信用しなかったのかを明らかにした。その存在が2000億ドルのワクチン事業を脅かしたからである。理由は次の通り:

連邦緊急使用認可法では、既存の薬がCOVID-19に有効である場合、ワクチンに緊急使用認可を出すことは出来ない。だから彼らはイベルメクチンとヒドロキシクロロキンを廃棄した。

イベルメクチンについて話した医師は全員処分された。彼らは皆にイベルメクチンは効果がないと告げた。アフリカには多くの寄生虫がいるため、アフリカではまるでキャンディーのようにイベルメクチンが飲まれているにも関わらず、専門家が首をかしげるほどCOVID-19の症例が極めて少なかったのである。

しかしながら、もしイベルメクチンがCOVID-19に有効であることを認めていたら、緊急使用許可を得ることはなかっただろうから、2000億ドルのワクチン事業全体が崩壊していただろう。

あなたはもう二度と彼らを信用しないのですか?

[ 画面には表示されるが発話はない ] 絶対に......!

Steve Hanksの動画 • 7月 17, 2023 11:03 AM (instagram.com)

記事執筆時のInstagramでの投稿は以下のようなものでした:

(出典:2023/07/20 木曜日 16:26:18 2023 UTCに取得されたInstagramのスクリーンショット)

米国FDA

米国FDAは2023年7月20日付の電子メールで、投稿の主張は「全くの虚偽」であるとLead Storiesに回答しています。FDAの広報担当者であるCarly Pflaum氏は、FDAの回答を寄せてくれました。それによりますと、次のようになります:

緊急使用許可の下で、FDAは、重篤な、或いは生命を脅かす疾患や病態の診断、治療、予防のために、未承認の医療用医薬品、或いは承認済みの医療用医薬品の未承認の使用を緊急時に許可することが出来ます。

一旦申請されると、FDAはEUA申請を評価し、FDAが入手可能なワクチンに関する科学的証拠を総合的に考慮して、関連する法定基準を満たすかどうかを判断します。最初のCOVID-19ワクチンに関する2020年12月11日のFDA決定メモのセクション2に要約されていますように、16歳以上のSARS-CoV-2によるCOVID-19を予防するために、本製品に代わる適切で、承認され、入手可能なものは存在しません。COVID-19に対する利用可能な治療法は、FDAがCOVID-19を予防するワクチンを認可することを妨げるものではありません。

加えて、FDAはイベルメクチンをヒトや動物のCOVID-19の予防や治療に使用することを認可・承認しておりません。イベルメクチンは寄生虫やアタマジラミによる感染症、酒さ等の皮膚疾患の治療薬としてヒトへの使用が許可されています。現在、入手可能なデータでは、イベルメクチンがCOVID-19に有効であることは証明されておりません。

Fact Check: Public Health Experts Did NOT Discredit Ivermectin To Ensure COVID Vaccines Got Emergency Use Authorization | Lead Stories

ワクチンと医薬品

ワクチンは、イベルメクチンのような薬とは目的が異なります。ワクチンは、免疫系がより早く、より効果的に感染症と闘うのを助け、病気を未然に防いだり、少なくともその重症度を軽減したりします。医薬品は、病気の治療、症状の緩和、健康状態の管理に使用されます。

COVID-19ワクチン作業部会

2023年7月20日、Lead Storiesとの電話インタビューで、ヴァンダービルト大学メディカルセンター感染症科のWilliam Schaffner医学部教授は、彼の経験に基づくと、動画の主張は筋が通らないと述べています。彼はLead Storiesに次のように語っています:

CDCの予防接種実施諮問委員会(ACIP)に代わってCOVID-19ワクチンを扱う小委員会であるCOVIDワクチン作業グループのメンバーであったので言えることですが、作業グループでもACIP委員会全体の議論でも、イベルメクチンという言葉はその議論の中で口にされたことすらなかったと思います。

私は1982年からACIPに参加しており、最初は正会員として、その後リエゾン代表として参加しています。そして、薬物治療の可否がワクチンの決定に直接影響を及ぼした覚えは一度もありません。

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加えて、Schaffner氏は 「2000億ドルのワクチン企業」を守るためにイベルメクチンが脇に追いやられたという主張には同意しかねます。 彼は次のように続けました:

示唆されているような決定を下すために、有効な治療法を無視するというのは、医学的に非倫理的です。そんなことはあり得ません。仮にそのようなことが米国で起こったとしても、世界中の医師や臨床医がイベルメクチンを使用し、それを推進し、それが有効であることを示すために適切な研究も行なわれているはずです。つまり、今や私達はグローバルな隣国であり、治療法を否定するという見解は維持不可能なのです。

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イベルメクチンの研究

パンデミックの初期から、イベルメクチンの有効性に関する多くの研究が行なわれてきましたが、この記事を書いている時点では、イベルメクチンがCOVID-19の原因となるウイルスを駆除したり、ウイルスに大きな影響を与えるという決定的な証拠は見つかっていません。Schaffner 氏はLead Stories誌の取材に対し、COVID-19の治療薬としてイベルメクチンが有効であるという証拠には乏しいと述べています:

イベルメクチンの有用性を示唆するような、非常に小規模で、あまり管理されていない、非常に限られた患者を対象とした研究がいくつかあります。一方、現在では、より大規模で、厳密にデザインされ、非常によく管理された一連の研究があります。これらの研究は、イベルメクチンが重篤な疾患の発症を予防することも、疾患が明らかになった後の治療に顕著な効果をもたらすこともないことを示しています。

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2023年2月20日、米国医師会のJAMAネットワークサイトに掲載された論文は、COVID-19治療薬としての抗寄生虫薬の使用に更なる疑問を投げかけています。この論文「高用量で長期間の投与においても、イベルメクチンはCOVID-19に対して有効ではない」は、2022年4月に発表された「COVID-19の治療に対するイベルメクチンの有効性を検討した11の適格試験のメタアナリシス」の続報であり、「イベルメクチンはCOVID-19患者に対して有益な効果を示さない」と結論づけています。

2023年2月の論文では、数千人の参加者を含む3つの大規模ランダム化臨床試験が追加され、当初の11試験と同様の結論に達したことを検証しています。論文の著者は次のように述べています:

本日JAMA誌は、軽度から中等度のCOVID-19に対するイベルメクチン治療の新しい臨床試験を発表し、既存の文献では、以前に試験された用量(約400μg/kgを1日3日間)では不十分であったため、イベルメクチンの有効性が見逃されていた可能性に対処するものです5。より高用量(1日600μg/kg)、より長期間の治療(6日間)において、NaggieらはCOVID-19の治療にイベルメクチンは有益でないと再度結論付けています。これらの研究で試験された投与量と投与期間では、イベルメクチンは重篤な副作用とは関連していないようです。しかしながら、一般的に忍容性の高い治療法であっても、有効性に欠ける場合、特に、エビデンスに基づくCOVID-19治療法やSARS-CoV-2に対するワクチン接種等、有効性が証明されている他の介入を患者が見送ることになる場合は、危険である可能性があります。イベルメクチンはパンデミックの間中使用されてきました7。米国内、そして世界的にイベルメクチンが使用されている現状を把握することは困難ですが、一般メディアの報道や臨床医としての我々の経験から、COVID-19に対するイベルメクチンの使用は完全には衰えていないことが示唆されており、その一因として、効果的な治療法への現実的または認知的なアクセス不足、継続的な混乱や誤った情報、医師を含むイベルメクチンの有効性に関する活発な偽情報が挙げられています8

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2022年2月、米国CDCは臨床医向けの緊急ニュースレターで、「ヒトにおけるCOVID-19の予防や治療にイベルメクチンを使用すること」に対して警告を発表しました。CDCは次のように続けています:

米国国立衛生研究所(NIH)のCOVID-19治療ガイドライン・パネルは、現在COVID-19の治療にイベルメクチンを使用することを推奨するにはデータが不十分であると判断しました。臨床医や公衆衛生専門家は、適応症や処方箋なしにイベルメクチンを使用するリスクや、外用や動物用のみのイベルメクチン製剤を摂取するリスクについて患者を教育する必要があります。COVID-19のワクチン接種は安全であり、感染を予防し、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2による重篤な疾患や死亡から身を守るための最も効果的な手段です。臨床医は患者に対し、実績のあるCOVID-19の予防法、特にワクチン接種とブースト接種を可能な限り早く受けること、FDA認可の治療法を使用することを強く推奨します。

emergency.cdc.gov/newsletters/coca/020122.htm

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