COVID-19ワクチンが被接種者の寿命を縮めるという証拠はなく、COVID-19ワクチンが死亡率を上げることはありません。

【主張】

  • COVID-19に対してmRNA ワクチンの完全接種者は、人生の 25 年を失うことになる。

  • CDC All-Cause Mortality Dataによると、毎年、ワクチンを接種した人は、年間一回の接種につき7%の割合で死亡し易くなっていることが分かる。

【評定】

根拠不十分:


  • この主張は、COVID-19ワクチンを1回接種する毎に、全死亡リスクが7%増加するという仮定に依拠しています。

  • しかしながら、この仮定自体には大きな欠陥があり、その理由は、この仮定を生み出した分析がバイアスのリスクを孕んでいるためです。

脆弱な推論:

  • この主張は、ワクチンを接種した人の死亡リスクは毎年7%増加すると主張しています。

  • しかしながら、この推定値を作成した分析では、2021年から2022年の間の死亡率の変化を調査しただけで、それ以降の年の死亡率を推定することが可能であるとは述べていません。

【キーポイント】

  • COVID-19ワクチンは安全で、重症化予防に効果的です。

  • 大規模な臨床試験や市販後調査でも、ワクチンを接種した人の全死因死亡率が上昇するという証拠は見つかりませんでした。

  • 研究によりますと、COVID-19ワクチンは、世界中で何百万人ものCOVID-19による死亡を防ぐことで、むしろ命を救うのに役立っています。

【レビュー】

COVID-19ワクチンが、起こりうるリスクと比較して明確な健康上の利益をもたらすことを確認することは、国民と保健当局にとって最も重要なことです。大規模な臨床試験や市場導入後のモニタリングにより、COVID-19ワクチンは重篤な疾患に対して安全かつ有効であり、世界的に数百万人の死亡を防ぐのに役立っていることが示されました[1]。

それにも関わらず、COVID-19ワクチンが死亡者数の急増の原因であるというシナリオは、情報操作のための代表的なシナリオとなっています。; Health Feedbackでは、このシナリオの中いくつか主張を取り上げ、その根拠がなく、誤解を招くものであるかの理由を説明しています。

この物語を支持するために登場した別の主張として、ワクチンを接種した人は接種する度に死亡リスクが7%上昇するため、「COVID-19に対してmRNA接種を完全に受けた人は25年の人生を失う」というものがあり、2023年4月上旬にThe ExposéSlay Newsといったウェブサイトに掲載されました。しかしながら、この主張は不正確なものです。以下、その理由を説明します。

第一に、ワクチンを接種した人は寿命が25年縮むという主張は、保険アナリストのJosh Stirlingが以前主張した「ワクチンを1回追加する度に死亡率が7%上昇する」という主張を転用したものです。Health Feedbackは以前、Stirlingの主張をこちらで詳細に論破しています。

Stirling は、米国の都市部における2021年から2022年の死亡率の変化を比較し、各エリアで配布されたワクチンの投与回数と相関させることでこの数字に辿り着きました。彼は、ワクチン接種率が高い都市圏ほど、全死因死亡率の上昇が高いことを確認しました。そこから、彼は、2021年から2022年にかけて、ワクチン1回分を投与する度に死亡リスクが7%上昇すると仮定しました。

しかしながら、Stirlingの分析にはいくつかの問題点があります。彼が比較した米国の都市圏は、人口動態、政策、経済の観点から大きく異なっていました。これらの要因は全て、人が予防接種を受ける可能性や死亡する可能性に影響を与える可能性があります。そのため、Stirling氏の分析のように、これらの要因が考慮されていない場合、偏った結果になる可能性があります。

加えて、Stirling氏の分析は人口レベルで実施されたものです。彼が使用したデータには、2021年と2022年に死亡した人々のワクチン接種状況についての情報が含まれていなかったため、死亡率の増加がワクチン接種者に多く起こったのか、ワクチン未接種者に多く起こったのかが分からないということです(生態学的誤謬

また、他にも重大な欠陥があります。例えば、Stirlingの比較は、事実上、ある地域のある年から次の年への死亡率の変化を測定したものであり、相対的な指標となっています。しかしながら、この方程式に欠けているのは、その地域の全死因死亡率の絶対値です。

例えば、非常に高い死亡率に悩まされている地域でも、2021年に比べて2022年は亡くなる人が少し減っていれば、死亡率の減少を示すことになります。逆に、死亡率がかなり低いのに、2021年に比べて2022年に亡くなる人が僅かに多い州は、死亡率が上昇することになります。しかし実際には、後者の方が圧倒的に良い状態です。死亡率の変化だけを測定しても、この可能性を考慮することは不可能です。

そして最後に、Stirlingの分析の結論は、相関関係だけに頼って、COVID-19ワクチンと死亡率増加の因果関係を描いていますが、これは十分な証拠とは言えません。

第二に、The ExposéとSlay Newsが示した主張は、Stirlingの分析が、今後数年間で死亡リスクがどのように変動するかを判断するのに十分な情報を提供すると仮定しています。しかしながら、この分析は2021年と2022年の死亡率の変化を比較しただけであり、長期的なパターンを確立するには十分ではありません。

全体として、COVID-19のワクチン接種によって死亡率が7%増加するというこの主張の基礎はデータに裏付けられておらず、この推定に基づく推論は誤りです。ワクチンを接種した人の寿命が25年縮むという主張は、Stirling氏の誤った7%という数字を、COVID-19ワクチンに対する恐怖心を煽るために無効な推定値で更に悪化させています。

引用文献

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?