この景色がずっとみられるように と願っておけばよかった
とても窮屈なこと。
朝9時が来たら、仕事が始まる。
「あ、これやりたい」と、ふと思ったって仕方のない時間。
自分が選択できる枠は24時間のうち、たったの1/4程度。
だから、それまでの間にやりたいことはしておかなくちゃと思う。
そうやっていつも、一つ一つの行動や考えについて
「これは今やる意味があるのだろうか」と検閲が始まる。
だから夜、少し夜更かししたくなって、
「旅で出会ったあの人はいま何をしているんだろう」
なんて一瞬浮かんだとしても、物思いに耽ることもなく、
「早く寝ないと」という思考に侵されてしまう。
数年前、毎日のように眺めていた星空も、今では何ヶ月も見ていない。
ベランダを開けて、いい風だなと思ったって、
ちょっと散歩して星でも見ようかなと思えない。
のびのびと自由だった感情は、
おぞましいバケモノに
見る見るうちに食べられていく。
いつの間にかそれが当たり前になって、
食べられていることにすら気付かず、
気づいた頃には感情を失って
バケモノの胃の中にいるのだろうか。
空を眺め流れ星を数えていた
あの頃の純粋なときめきは、
日常からは簡単に見当たらなくて。
こんなことなら、あの時の流れ星に、
この景色がずっとみられるように
と願っておけばよかった。
明日はいくつトマトを収穫できるかとワクワクする心は、
いま心の内側を掘り起こしても見当たらない。
ああ、長いはずの1日がもう暮れる。
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