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  • じょうプレゼンツ逆噴射小説大賞応募作品集

    逆噴射小説大賞2018応募作品をまとめておきます

最近の記事

完全犯罪は2度繰り返す

「すごい……完璧だ」 計画書に目を通しながら、震えを隠せなかった。ここに書いてある手段を用いれば、あの男を……「ええ、殺せますよ」 黒スーツの男は悪魔的に微笑んだ。その眼の奥は凍りついたままに。 「あ、ありがとうございます……これで私は復讐を遂げる事ができます、必ずあの男を……!」 汗ばむ手を握りしめ、食い入るように“完全犯罪”の手順を頭に叩き込んでゆく。何重にも仕掛けられた殺意のアーキテクチャを自分のものとするために。 「ああ、お待ちなさい」 黒スーツの男が興奮した私を宥め

    • ひぐらしのなく頃に業の旧作との決定的な相違点を予想する

      現在行われている「ひぐらしのなく頃に業」と呼ばれる一連の事件について、旧ひぐらしとの相違点を予想してみたのでここにまとめる事にする。 なお、当然ひぐらし業及び旧ひぐらし、ついでに話の流れでうみねこのなく頃にのネタバレが含まれる可能性があるため注意されたい。 決定的な相違点・ルールYの変容鬼騙し編及び綿騙し編で繰り返し描写された旧作との決定的な相違点、すなわち「綿流しの夜に富竹と鷹野の二人が行方不明となる」点について衝撃を受けた視聴者も多いだろう。 旧作であれば後に魔女と

      • 静寂なる殺意の空転

        カチ、カチ、カチ。 秒針の音が響き渡る。現在時刻は早朝の4時。まだ用意された客室から抜け出てくるものはいない。”私”以外は。 カチ、カチ、カチ。 ”私”は食堂に備え付けられた柱時計の前に立つと、音を殺しながら時計の扉を開いていく。 揺れる振り子の奥に鈍く光るのは、ボウガンの矢。”私”が仕掛けた、絶対非情の殺意を込めた嚆矢。 ”私”は息を整えると慎重にボウガンの根元に括りつけられた糸を切った。プツンと音を立て、時計の歯車と連動した仕掛けは意味を失った。 後はこの矢を回収すれ

        • 等価交換殺人

          俺は手の震えを抑えながら、指定されたカフェの一席に着いた。指定された赤いキャップに、グレーのパーカー。相手の格好は緑のシャツに、デニム。出された水に手を付ける。高ぶった俺の神経は、あまり水の温度を感じられなかった。 俺はこれから、殺人の打ち合わせをする。インターネットで出会った見ず知らずの男と殺意を共有し、お互いのために殺人を犯す。 『交換殺人』、俺は今からその打ち合わせをするために待ち合わせている。 俺の人生は、一人の男のせいで滅茶苦茶になった。何度殺しても殺したりな

        完全犯罪は2度繰り返す

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        • じょうプレゼンツ逆噴射小説大賞応募作品集
          17本

        記事

          力士が飛んだ日

          力士が大型化を始めたのは19世紀初頭の事だった。それまで単純労働のためのものと思われていた力士たちは【運輸】という新たな土俵に立った。 レールを必要とせずあらゆる地形をすり足で越えていく力士力機関車は大陸内の流通を劇的に進歩させ、港には1万トンの積荷を乗せた横綱級力士船が行き交う。 様々な流通網が力士によって支えられる中、未だに彼らが立ち入れていないのが空だった。 一般には知られていないが、力士は空を飛ぶことができる。正確に言えば、6m級程度までの力士であれば、体内に比

          力士が飛んだ日

          OA機器・オブ・ザ・デッド

          「おい!加藤の奴はコピーにいったい何十分かかっているんだ!」 関根課長の怒号が響く。キャンキャンと煩い男だ。オフィスの面々は俯いたままただ怒りが過ぎるのを待っていた。ちらりと時計を見ると、針は午後10時を回ったところだ。TC企画の総務部の残業は、残念ながらまだ始まったばかりというところだ。 「ア、ワタシミテキマス、タオレテタラタイヘン」 派遣社員のアベディンがおずおずと声を上げる。よせばいいのに、課長の怒りを買うぞ?と思っていたが課長はあっさりとそれを認めた。 「全く

          OA機器・オブ・ザ・デッド

          名探偵には遅すぎる

          結論から言えば、私の黄龍館への到着はあまりにも遅すぎた。 これが小説の世界であれば、「名探偵とは遅れてくるものだ」などと気の利いた文句のひとつでも与えられることもあろう。しかし、この世のどこに登場人物が全滅してからやってくる名探偵がいるだろうか。 黄龍館のエントランス、朱雀門。来訪者を迎える大朱雀像が倒れ、その嘴に腹を貫かれ女が死んでいた。ぐちゃぐちゃに抉り開かれた腹から、血がレッドカーペットがごとく流れ出し床を染め上げていた。私はその死体を横目に館の中へ足を踏み入れる。

          名探偵には遅すぎる

          緊縛師対液体人間

          「貴方、私を縛ってみてくださらない?」 招かれざる客のその女は、挑発的な笑みを浮かべる。深い夜空の色をした瞳は、ワインを一滴こぼしたように瞳孔だけが紅く染まっていた。 「……どいてくれないかな。まだ作品制作の途中なんだ」 男はすげなく答える。それもそうだろう、その女は彼の芸術作品の上に腰掛けているのだ。 「そこをどうにかお願いできないかしら、荒縄締太郎さん」 女はそう言いながら誇示するように脚を組み替えた。女の動きに、作品がわずかに身じろぎをした。 荒縄締太郎。緊

          緊縛師対液体人間

          【ニンジャ・ダイ・トゥワイス】 #1

          ギャルルルル。 報道バンが音を立てて急停車する。前方を塞ぐ大きな倒木のためだ。 運転席のコーカソイド美女特派員はちらりと助手席に座る特派員を見やる。彼女のバストは豊満だ。 彼は報道バンのドアを開けると倒木に向かって歩いて行く。 おお、彼は一体どうするつもりなのか?トレンチコートを来た彼は倒木をどうするつもりなのか?その手には何も道具らしいものは持たれてはいないではないか。 トレンチコートの報道特派員は倒木の根元に立つと、おもむろにその幹を抱く。 ああ、まさか!?その両腕で

          【ニンジャ・ダイ・トゥワイス】 #1

          逆噴射ライナーノーツ:大武芸者時代

          居合術、流鏑馬、薙刀、柔術、カポエラ、投げ縄、南京玉すだれ、緊縛師、相撲、ディアボロ、酔拳、ケツ割り箸、修験道、浄瑠璃、骨法 表の世界でも名の知れた大家から、闇の世界に名を残す暗殺者まで、揃いも揃ったり15人の武芸者。 この中に、父を殺した犯人がいる。必ず見つけ出す。 私は決意を込め、名簿の武芸名欄に力強く、【ハンドパワー】と書き記した。 作品名:大武芸者時代 ジャンル:トーナメント、格闘、異能力 連載可能性:中 連載媒体:note以外 10/17、ヒトシさんの作品

          逆噴射ライナーノーツ:大武芸者時代

          逆噴射ライナーノーツ:少女の体はまほうで出来ている

           昼間会った時、彼女には四肢が無く、1人では何も出来そうにない子だった。あたしより可哀想だと思った。  けれど今は少女の薄赤く光る四肢が美しいと思った。 少女の体は、まほうで出来ていた。 作品名:少女の体はまほうで出来ている ジャンル:魔法少女、ゴシックホラー、百合 連載可能性:高い 連載媒体:note、あるいは別媒体 この【少女の体はまほうで出来ている】は、今回の逆噴射小説大賞に応募した作品の中で、唯一以前から温めていた作品だ。 魔法少女、それは普通の女の子には使えな

          逆噴射ライナーノーツ:少女の体はまほうで出来ている

          千年杉の下で

          この杉は、小さな町を見下ろす丘の上に生えている。 近所の宮司の言うことには、千年前の記録には既にその存在が語られていると言う。 いつの頃からか、この杉は町に住む学生達の間で「2人きりで告白すると必ず結ばれる」なんていう噂が広まっていた。 今日もそうだった。 やって来たのは、男女2人。制服からして、中学3年生の男子と、中学1年生の女子だ。 おそらく、女子の方が先輩を連れてきたのだ。 青い精一杯の勇気に感心させられる。 やがて、先輩が小さく頷くと、女子は泣き出した。喜びの涙

          千年杉の下で

          シャーマゲドン2018【原題:FINAL SPACE SHARK ATTACK】

          正午、ホノルルビーチ。かつて地球上を震撼させたサメ座流星群の悲劇など忘れたかのように、人々は夏を過ごしていた。 ビーチの一角では監視員を囲む水着美女の姿。 「ねえ?アンドリューは?」 「あいつならお偉いさんに呼ばれて、どこかへ飛んでっちまったぜ?」 〜〜〜〜〜〜〜〜アンドリューのスマホが鳴る。どうせまたミーハーな女子からのDMだ。 二度に渡りサメ隕石からハワイを救った彼は一躍時の人となり、ライフセーバーだった彼の暮らしは一変した。 彼はうんざりしていた。目の前の軍人にも

          シャーマゲドン2018【原題:FINAL SPACE SHARK ATTACK】

          ザメラ

          燦々と陽光照らす太陽の下、クルーザーに揺られる8人の若者がいた。 誰も咎める者のいない洋上で彼らは大音量で音楽を流し、あるものはアロハシャツ、あるものは水着、又は何も身につけず絡み合う男女の姿もあった。 船尾で酩酊する金髪の女子大生は、いつ吐いても良いように海面を覗き込んだ。 「んー?」 彼女は海面を滑る何かを見た。もう一度目を凝らして確認しようとした時、それはもう目の前に現れていた。 バシャーン! 「あ?」「明菜ー?」 「やべんじゃね?落ちたの?」 「え、ちょっと、海

          【総天然色】虹怪獣 バエラ

          「この辺かな?」 アキコは自撮り棒を伸ばすとインカメラを起動して角度を調整する。 周囲には自撮り棒を構える集団や、一眼レフを構える者もいた。 「来た!」 遠くの女子大生が声を上げる。空の彼方から放射状の“虹”が現れた。 「キャーッ!」「せーの、チーズ!」「ピース!」 アキコも自撮り棒を構えるが、まだシャッターは押さない。絶好のシャッターチャンスを静かに待つ。 やがて“虹”から触手が現れた。一部は荷物をまとめ立ち去り始めたが大多数は更なる熱狂に包まれた。 カシャーッ

          【総天然色】虹怪獣 バエラ

          【総天然色】川の大怪獣イクラドン

          きっかけは果たして、巨大製薬会社の薬品流失のせいだったのか。それとも密漁者が無残に腹をかっさばいた死骸を大量に投棄したからであったのか。 責任の所在を問うものは、今は居ない。この国の人間は既に半分になってしまった。 「この世の終わりよ……」 「米軍が核兵器を使うって本当なのか?」 “水辺”に住んでいなかったわずかな生き残りは、身を寄せあうように恐怖に耐えている。 「あいつが、あいつが来るーーッ!」 遠くからの地響き。巨大な質量の災害が、一歩一歩、死を齎しに現れる。 奪われ

          【総天然色】川の大怪獣イクラドン