少女の体はまほうで出来ている

 事故で両脚を失ってから、もうあたしは人間じゃ無くなったような気がしてた。
 友達も、ダンサーの夢も、いっぺんに失くしたあたしは虹村 菜奈夏という人間のただの残骸に過ぎないんじゃないかって。
 けれど、今……

《ギュムムム…》
 化け物の全身にこびりついた眼球が––––ああ、一度でもアレを綿菓子みたいと思ったあたしがバカみたい––––あたしの“両脚”を睨む。
 光り輝くガラスの靴……いや、ガラスの素足。「これは……?」
「まほうよ」

 眼前の少女が眼球の化け物を踏みつけながら言う。
「貴女が一番欲しかったもの、それが手に入る、まほう」
「あたしが、一番欲しかったもの……?」
「それがあれば貴女は……私たちは“人間”に成れるのよ」

 昼間会った時、彼女には四肢が無く、1人では何も出来そうにない子だった。あたしより可哀想だと思った。
 けれど今は少女の薄赤く光る四肢が美しいと思った。

 少女の体は、まほうで出来ていた。


【第1夜につづく】

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