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大人らしさとは(アニメ『フリクリ』布教)

 大人らしさ、子供らしさってなんだろう。もっと突き詰めて言えば、おとなとこどもの境界はどこから引かれるのか。確かにこれはよくある主題だ。私なりの考えを述べることが許されるなら、それは自分のやりたいことを貫けるかじゃないだろうか。多分、ある種の「大人らしさ」には、自分のやりたいことをどこか遠慮してやめてしまうような自重の精神が要請されている。じぶんのやりたいことばかりを追求して、無理やり他人を巻き込む姿勢はお世辞にも大人らしいとは言えない。でも一方で、じぶんのやりたいことに貪欲で、周りにそれをNOと言わせないような「子供らしさ」は最高にかっこいい、むしろ我を持った本当の「おとな」なのではないだろうか。

 アニメ『フリクリ』の面白さはそういった要素に詰まっている——。すみません、ここまで書いてきたことは全てこの作品を紹介するために練った「あとがき」みたいなものです。改めて、フリクリは24年前の少しマイナーな作品ですが、全6話で短めだし、ぜひ見てみてください! 小学6年生のナオ太少年を主人公に、灰色がかった思春期特有のモヤモヤを鮮やかに吹き飛ばす軽快な作品です。全体のテンポと勢いが速すぎて見落としがちですが、全登場人物が抱える子供らしい一面と、ヒロイン・ハル子との交流で生じるナオ太の成長に注目。特に第一話と最終話で発せられる「すごいことなんかない、ただ当たり前のことしか起こらない」というナオ太の独白は、その意味合いが最初と最後でまるっきり異なり必見。後は単純に頭を空っぽにして見て! 行き場のない閉塞感を打ち破る最高のアニメです。

執筆:滝元耕志


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