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Change!Challenge!Chance!で地方創生を実現『写真の町』東川町長・松岡市郎氏

現代の「理想郷」と言われる東川町。

北海道の中央部に位置するこの美しい町は都市一極集中や少子高齢化で人口減少の一途をたどる町ばかりの日本で、人口を増やしている(20年で約千人増)奇跡的な町。そこで町長を17年務める松岡氏にその秘密を伺いました!

【プロフィール】
松岡市郎・まつおかいちろう 1951年生まれ。北海道上川郡東川町出身。東川町農林課長補佐、社会教育課長、税務課長を経て、2003年に退職。2003年より東川町長として活躍。現在5期目。

「3Gen(人間・資源・財源)」を軸に

記者:まず松岡さんは何をされている方ですか?

松岡市郎氏(以下敬称略):東川町長として「福祉向上」という任務を粛々と行なっています。住民の繁栄や安心安全の確保、母子や高齢者などにも今の状態より少しでもよくしようという想いで仕事をしています。

私が町長に就任した頃、周囲の市町村は人口減少もあり合併され、東川町だけは合併しない、と決まった時期でした。本当に多くの課題を抱えていましたね。

このままでは町が消滅してしまう。なんとかしないといけない、そんな意識が役場職員を始め町民の多くの方が持っていたと思います。

福祉向上のために自分ができることを精一杯やってきましたし、協力して進めることができました。

地方創生のキーとして「3Gen(人間 資源 財源)」を軸にたくさんのプロジェクトが立ち上がりました。職員や町の人たちが自主的に一生懸命やってくれました。

記者:目標と実践していることを聞かせてください。

松岡:「人口」が減らないようにすること、ですね。それを実現するために多くの人が東川を選択する町づくりをしていくこと。具体的には毎年行なっている写真甲子園を盛り上げる動きや、大雪山の恵みである美味しい水を生かした商品作りです。

この町の中だけを考えれば人口は減少していきます。国内国外へ間口を大きくして、魅力をどう生かすしていくのか。

そうして資源を掘り起こすためにも、考えて、調べて、検証して、実施する。財源をあらゆる福祉に生かしながら、また、様々な策を講じています。

例えば、人を魅了する資源がたくさんあれば人が訪れるようになりますよね。東川には豊かで美しい大雪山の中でも一番高い旭岳がある。高さ2291m「にんにくいちばん」って言うんです(笑)登山やウィンタースポーツなど、国内外から人が集まります。

山の恩恵で水や農業など豊かな暮らしができます。空気も綺麗で景色も素晴らしい。地下水農業があり、旭川空港から車で10分とアクセスも良い。

大自然に囲まれた生活でありながら、旭川の総合病院まで車で30分。

人間が資源を活かせば、財源が生まれ、福祉も充実する好循環が生まれます。あれがないこれがないと言っても仕方ない。マイナスなところを強調しても仕方ない。いいところだけを語るのも大事です。 

能動的に仕事をすること

記者:あれがない、これがない、どうせできないとついついなりがちですよね。なぜそういう捉え方をしなかったのでしょう?

松岡:自分が町長になる前は「大変だ」「人が減ってしまう」「あれもないこれもない」という話ばかりが聞こえていました。例えば東川には上水道、国道、鉄道がありません。でも今ではそれを強みしています。強みにできるんです。それと、いいことだけを語ることです。

でも、例えば家庭の中で親がそんな後ろ向きな捉え方をして、そういうことばかり口にしていたら、子供はどういう子に育つでしょうか。

前向きな話をすべきだと思います。その姿勢の人が集まって、町を元気にする。そして役場は受け身ではなく能動的に仕事をする。仕事を作る。国のお金が入るのを黙って待つんじゃない。外に出て、出会って、刺激を受けてエネルギーにして、町に生かす、という発想でやるようにしています。役場は最高のサービスを提供するところ、と思ってやっています。

記者:なぜそんな前向きな考えができたんでしょうか?

松岡:繰り返しになりますが、この町は本当に崖っぷちだったんです。17年前に、人口が減少し合併の話があがりました。でも、この町は合併しないことを選択した。合併すれば財政支援が受けられる。でも、そうじゃない選択をしたからには職員も一人一人が必死だったと思います。「今より良くしよう!」という心で一つになっていたんじゃないかと思います。

「上に依存せず自分たちでなんとかするんだ!」

記者:なぜ心を一つにできたんでしょうか?やれと言っても、普通はなかなか続かないですよね。

松岡:当時は私は町長になりたてでした。誰がみても町長の器じゃなかった。「あいつにやらせて大丈夫か・・・」という意識が職員一人一人が頑張らないといけない、上に依存せず自分たちでなんとかするんだ!という意識になったんじゃないかと思います。頑張らなければ町が無くなり、自分たちも職を失ってしまう。だからこそ前向きに努力していたんだと思います。

組織を強くする流動的な配置転換

記者:なるほど、町のピンチが団結に繋がったんですね。それじゃあ町を維持・向上させるために心がけていることはなんですか?

松岡:希望ある政策を実現することを心がけています。役場はひとつの組織です。そのために組織機構をしっかり整えること。自分も以前は一つのポストに10年間居座ってました。でも、それが組織にとっては良くない。上が何を提案しても聞き入れない、「絶対神」みたいな組織構造だったんです。そんなのやる気でないじゃないですか。

能力に関わらず、課長レベルは3年以内、長くても5年以内で交代する体制にしました。変えることによって不思議と今までやったことはやり続け、前の人に負けないようにさらにやろうという意識になってくれました。職員の士気を保つことにつながりましたね。

もう一つは節穴を作らないこと。情報や決定を取りこぼしたりしないように、こんな小さな街ですが副町長を二人にし、担当を分け、漏れのないように、かつ横連携をとるようにして組織をどう動かすかに力を入れました。東川スタイル課や写真文化首都課など新しい課が生まれました。

隣の部署の仕事はよく見えるもんです。そういうところに人を配置すると、それが底上げや持続力になるんです。

他と同じことしてもダメなんです。すでにやっていることをやってもかなわない。誰もがやらないところにどう手を入れるのか?この町にある宝物をどう探すのか?なんです。

例えば昔の役所は海外研修はNG、遊びだろうと言われていました。でも私は、どこの職員も行かないからこそ行くべきだと思いました。だから職員を海外へ出しています。いい刺激を受けて帰ってきます。そのおかげもあって、海外の大使がくるようになりました。ベトナム、ウズベキスタン、カナダ、インドネシア、もちろんそれは日本語学校を作ったというのも大きいと思います。

留学生から刺激をうけて、自分もこんなことができそうだ、だから挑戦しよう!という流れも生まれて好循環でした。できるだけ多くの人と出会って、刺激を受けながら能動的に仕事をすることを勧めています

記者:誰もやらなかったこと、人が目をつけないところをやること。そういった考えはどこから来たんですか?

松岡:色々やっても結局、誰かがやってることには勝てません。農産加工をチャレンジしようと思ったこともありましたが、すでに市場は飽和状態。そんなんじゃやる気も出ないし、売れない。誰も目をつけていないものに価値をつけて、どう売っていくのか?町の価値を探しました。

前職で上司に新しい提案をしたら、「前例あるのか?ないならダメだ」って言われていました。いわゆる「前例踏襲」です。「なんでうちがやるんだ。」「予算どうするんだ?」これが地方自治体を成長させない元凶だと思いました。今は予算にゆとりを持たせて、何かの時に活用できるようにしてあります。

町長になって、どうしたらやれるかを考えようって思いましたね。予算がないとか、前例がないとか、他でやってない、だからやらないじゃない。0からやること、何事も最初にやるものに前例はない。そう言う気持ちでやろう!と思いました。やっぱり30年務めた役場での経験からでしょうね。

最後はいかに『決断』するか

記者:日々大事にされていることはなんですか?

松岡:決断です。上に立つものは話をよく聞いて、最後はいかに決断するか。それが分岐点だと思います。もちろん住民にとって良いことを優先して決断します。

日頃から3つの「CHA」を心がけていますし、周囲にも話し伝えてています。「 Change Challenge Chance」です。チェンジ、チャレンジ、チャンス。

意識を変えるチェンジ、やる前から「できない」を言うんじゃなくてチャレンジ、住民の笑顔を得るチャンス。いろんな意味を持たすことはできます。

住民にも様々な形で行政に参画できるような働きかけをし、皆様の行動が町の活性化につながっています。町に花を植えることや、ボランティア活動、高齢者サロンや盆踊り大会など地域ごとに特色を生かして良い意味でシナジーを起こしています。

記者:だから町に人が集まり、住みたくなるんですね。町ごとが自分ごとになる。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。

【松岡さんの活躍や町の様子はこちら】
 写真文化が鮮やかな東川町
 写真甲子園
 東川町観光専用サイト


【東川町役場にて松岡氏と取材陣】

松岡 三人ラスト用

【編集後記】今回取材を担当した原田尚美・原田卓です。輝く瞳と落ち着いた物腰で私たちを迎えてくださった松岡さん。創造性や自主性を重視しながら町づくりをする姿勢に、あり方と教育の大切さを学ばせていただきました。コロナパニックの未曾有の時代、創造性と自主性を育てながら発展することは全ての人に共通する課題です。ぜひ多くの方に読んでいただき、何かのお役にたてたら嬉しいです。


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