なぜ私達は同調するのか?
ラポールを取るためには同調行動が大事と言われています。同じタイミングで頷いたり、同じように足を組んだりなどすることで心と心が繋がりやすくなるというのです。このようなことを意識的にすることもありますが、気心がしれていれば自然と体の動きが同調することもあります。しかし、脳科学的にはこの現象はどのように説明できるのでしょうか。今回取り上げる論文は、この同調行動を予測符号化と自由エネルギー原理と呼ばれる理論を用いて説明したものになります。
なぜ私たちは他人と同調してしまうのでしょうか?対人同期と脳の最適化原理
Why do we fall into sync with others? Interpersonal synchronization and the brain's optimization principle
予想符号化というのは、私達は常に一瞬先を予想しながら感覚し、一瞬先を予想しながら動いているというものです。例えばベートーベンを聞いていて、「ダダダ」と聞こえれば「ダーン」と一瞬先の音を予測しながら耳を傾けています。また本を読んでいる時にも、確率論的にもっともありそうな言葉が次に来るだろうと予測しながら読んでいます(「誠に申し訳ありませんが、本日のご面談は〇〇・・」の〇〇を自然に先読みするようなもの)。
そして自由エネルギー原理というのは、脳はできるだけ正確かつシンプルな予測モデルを作って、できるだけ頭を使わずにすむように動いているというものです(小売店の人が客の靴を見てどれくらいお金を持っているかを予想するように)。
こういった理論から考えると、相手の行動と自分の行動が同調するのは、その方が自由エネルギー原理が少なくて済むからではないかというのが、この論文の主張になります。目の前の相手と自分の動きが同調していれば、相手の動きも自分の動きも予測しやすいからです。
予測符号化や自由エネルギー原理について興味のある方は以下の記事を参考にしてください。
明日読む論文:
紛争解決における親密さ: 動機が複雑な紛争において、対面での接触がどのように相互協力を促進するかを説明する
Rapport in conflict resolution: Accounting for how face-to-face contact fosters mutual cooperation in mixed-motive conflicts
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