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臨床推論 Case105

Cureus 15(7): e42301.


【症例】
65歳 女性

【既往歴】
なし

【現病歴/現症】
⚫︎ 心停止の状態で発見され、救急外来でアドレナリン投与によりROSCしたが意識は改善せず寝たきりになっている患者

⚫︎ 入院12日目に発熱、CRP高値になった
⚫︎ バイタルサイン:血圧120/56mmHg 脈拍98bpm 体温37.8℃ 呼吸20bpm SpO2 96%
⚫︎ 左第4肋間に2/6の汎収縮期雑音あり、腋窩に放散する
⚫︎ ラボはCRP8.6mg/dL 他はほぼ正常 
⚫︎ 尿、胸部Xpはきれい
⚫︎ 血培2セットとって経過観察の方針となった

⚫︎ 入院13日目に2set血培陽性になり、グラム陽性桿菌が検出されたためバンコマイシンを開始した
⚫︎ 経胸壁心エコーを実施したが疣贅なし
⚫︎ 15日目にセレウス菌が検出された

⚫︎ 侵入門戸が不明であったため感染症内科にコンサルトがあった

⚫︎ 診察で末梢カテーテル留置部位に一致して発赤と腫脹あり
⚫︎ 同部位は毎日アミノ酸製剤が投与されていた


What’s your diagnosis ?








【診断】
末梢ライン関連血流感染(PLABSI)(+アミノ酸製剤点滴)によるセレウス敗血症

【経過】
⚫︎ 末梢ラインは抜去した
⚫︎ 感受性に基づきバンコマイシン14日間で治療した

【考察】
⚫︎ 本例は末梢からアミノ酸製剤を投与され、2setからセレウス菌が検出されたため、PLABSIの診断となった
⚫︎ セレウス菌は一般にコンタミとみなされるが、末梢ライン感染の原因にもなりうる

⚫︎ 日本の8病院から集積したデータからセレウスによるカテ感染にリスクは以下の通り
・ 末梢ライン挿入(adjusted odds ratio: 213.7, 95% confidence interval: 23.7-1924.6)
・アミノ酸製剤 (adjusted odds ratio: 41.6, 95% confidence interval: 4.2-411.7 )

⚫︎ 本例は感染症専門医が患者を診察して速やかに熱源を同定できた
⚫︎ 黄色ブドウ球菌敗血症ではベッドサイドの診察は非公式な電話診察と比較して良好な転帰を辿る
⚫︎ ベッドサイドの診察は電話でのコンサルテーションと比較して死亡率が低いことと関連している((odds ratio: 0.09, 95% confidence interval: 0.02-0.49 )
⚫︎ くまなく診察することは原因不明の発熱の特定に非常に重要である
⚫︎ 我々は忙しい環境であっても、医療者が優先順位をつけて重点的に身体診察すべきである

⚫︎ 合併症を予防するためには留置カテーテル患者のカテーテル挿入部位を積極的に検査・評価する必要がある
⚫︎ また医師は患者に挿入されているカテーテルを毎日確認し、不要なカテーテルを抜去しなければならない

⚫︎ 医師は身体診察が不可欠であることを認識し、診断ミスを減らすために焦点を絞った目的を持った身体診察を行うべきである
⚫︎ これはCOVID19下においても重要である

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