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臨床推論 Case110

Anesth Essays Res. 2016 May-Aug; 10(2): 376–378.
PMID:27212778

【症例】
29歳 男性

【主訴】
痙攣

【現病歴/現症】
⚫︎ 高いところから落下して背部痛のため整形外来に受診された
⚫︎ トラムセット37.5mg1日2錠を処方し帰宅とした
⚫︎ 初回内服1時間に全身に麻疹様紅斑が出現した
⚫︎ 1日後全身性強直性痙攣が出現し5分ほど意識障害を呈した
⚫︎ 病院に搬送され、ロラぜパム点滴とトラムセット中止で経過をみられた
⚫︎ 採血、頭部CTは問題なし
⚫︎ 心電図は136bpmのAfを認めていた

⚫︎ 入院し、脳波を測定したが問題なし
⚫︎ 経過を見ていたところ痙攣の再発なし
⚫︎ 心電図もsinusに戻って退院となった

⚫︎ フォローアップしても痙攣の再燃は認めなかった


What causes this seizure ?












【診断】

トラマドール誘発性痙攣

【考察】
⚫︎ トラマドールはオピオイド受容体に作用するのとモノアミン受容体を阻害する作用がある
⚫︎ 痙攣の機序はよくわかっていないが、NO阻害、セロトニン再吸収、GABA受容体阻害などが関連しているかもしれない

⚫︎ トラマドールによる痙攣は議論のあるところである
・ 痙攣患者または抗うつ剤内服中の患者、アルコール多飲患者に過剰量投与すると痙攣する報告がある
・ 3%が通常用量、97%が過剰用量であったという報告があり通常量でも起きうる
・ 報告によっては痙攣とトラマドールは無関係
・ 内服期間も関連しているor関連していないと報告はまちまち


⚫︎ 本例は1回で痙攣は止まったが反復するものは10-20%であり
⚫︎ その影響か、脳波異常を認めたのはどの報告も10-20%である
  初日は43%認めたが、1週間後には3.5%しか異常を認めなかった報告もあり

⚫︎ トラマドールによる痙攣は前兆なく全身性強直性痙攣をきたすことが多い
⚫︎ トラマドール誘発性痙攣は意識障害、頻脈、高血圧、最悪セロトニン症候群を伴うことがある

⚫︎ トラマドール中毒の症状は以下の通り(J Res Med Sci. 2014 Sep; 19(9): 855–859.)
・バイタルと症状

・ラボデータはあまり派手にならない(測定法が違う?LDHだけがなぜか高い)

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