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臨床推論 Case122

Intern Med. 2013;52(21):2469-72.
PMID:24190155

【症例】
54歳 女性

【経過①】
⚫︎ 2006年に多発関節炎を発症し、NSAIDs処方されたが改善なし
⚫︎ 2007年に船橋中央病院を受診された

【現症①】
⚫︎ 朝のこわばりあり、両手首・右肩・両足首・両膝関節炎あり
⚫︎ RF(-) MMP3 298ng/mL CCP 12.7mg/dL

【経過②】
⚫︎ RAと診断され、MTX8mgとPSL5mgで治療された
⚫︎ しかし14ヶ月たったがコントロールは十分ではなかった
⚫︎ エタネルセプトを追加したところ改善し、PSLを減量した

⚫︎ 5ヶ月後リウマチが再燃し関節炎が増悪した
⚫︎ DAS28-CRP 5.43であった
⚫︎ そのためエタネルセプト➡︎トシリズマブに変更した
⚫︎ 2回投与したが関節炎は変化なし 
⚫︎ CRPは0.19まで低下したのでDAS28-CRP 3.95となっていた

⚫︎ しかし救急外来に呼吸困難、嗄声、咳嗽、両側膝の激しい痛みで受診された

【現症②】
⚫︎ バイタル:体温37.8℃ SpO2 95%(RA)
⚫︎ 診察:両手首、両膝に腫脹あり 目や鼻は異常なし
     上気道にstridorあり
⚫︎ ラボ:CRP26.1 RF18 WBC9500
⚫︎ Xp:肺野は特記なし 上気道が狭窄しているように見える

What’s your diagnosis ?








【診断】
関節リウマチによる輪状披裂関節炎(CAJ)

【経過②】
⚫︎ エピネフリンとベタメタゾン吸入したが変わりなし
⚫︎ 喉頭ファイバーで声帯が内転したまま動かず声門が狭くなっていた
⚫︎ awakeで気管切開を施行した
⚫︎ 外傷や感染兆候を認めずCAJの関節炎の影響で声帯麻痺が起きていると考えた
⚫︎ ステロイドパルスとCTRXを開始した
⚫︎ day7にWBC6200まで低下したがCRP8.63と依然高値だったのでレミケードを開始した
⚫︎ それ以降徐々に関節所見や上気道の狭窄が改善していった
⚫︎ day14にはCRP2.91まで改善した
⚫︎ ファイバーで確認し声帯の動き、発声改善し気切を抜去した

⚫︎ 5週間後DAS28-CRPは寛解になっていた

【考察】
⚫︎ 症状が曖昧でなんとも言えない部分はあるが一応報告ではRAで喉頭がやられるのは13-75%あり
⚫︎ そして剖検では45-88%にも及ぶ
⚫︎ 喉頭病変の中でも輪状披裂関節炎は認めやすい部位である

(https://voice-rebuilding.com/発声メカニズム/laryngealcartilage/より引用)
⚫︎ 急性期では声帯の浮腫、慢性期では披裂軟骨を覆っている粘膜が分厚くなる

⚫︎ 他にRAによる喉頭異常で報告があるのは以下の通り
・ 血管炎による虚血性脳神経障害
・ リウマチ結節による延髄圧迫
・ 喉頭部にRAによるアミロイドーシス沈着

⚫︎ このあたりは感染も外傷も鑑別に挙がる
⚫︎ 本症例は明らかにRAのコントロール不良だったのでRAによる病変と判断した

⚫︎ だいぶマニアックだが喉頭病変のRA病変の画像
・輪状甲状軟骨の関節のスペースが狭くなる(J Voice 2010;24:732-7.)

左:正常 右:狭い

・披裂軟骨のdensityが高くなる(Am J Otolaryngol. 2012 Nov-Dec;33(6):753-5.)

左:正常 右:highになっている

・ 輪状披裂関節に膿瘍を作った症例(https://medicine.uiowa.edu/iowaprotocols/cricoarytenoid-abscess-rheumatoid-arthritis-clinical-case-exampleより引用)


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