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[小説]AIロボットの運命

あらすじ
大きな作業所で500体ものボットたちを監視する中年の男
家からの決まった道、変わらない職場の往復
退屈な日々の繰り返しのはずだった。
突然、彼の身に襲い掛かる悲劇の始まり、
一台のロボットの暴走であばかれる真実、
想像できなかった結末を迎える。


毎日毎日続く退屈な日々、今日も作業所に向かい
しがない一日が始まる。

作業所にはたくさんのAIロボットが働いているが、ざっと見渡せば500台のAIロボットが右へ行ったり左に行ったりひっきりなしに作業所で黙々と作業している。

ただたまに故障で動かなくなるロボットや暴走するロボットもいる。

俺はそういったロボットを廃棄場まで運んで廃棄する。

この退屈な仕事をもう何年やっているだろうか?

そういえばここで初めてしごとした日はいつだったか?

遠い昔の出来事であまり思い出せない。

ロボットたちを眺めながら妄想に耽るのがいつもの時間をつぶす、くだらないことを妄想してはまた違うくだらないことを妄想する。

お気に入りのロボットをぼんやり眺めながらコーヒーを飲みぼんやりする
俺のお気に入りのロボットはマリアだ。

彼女は長い黒髪で端正な顔立ちが知性を感じさせる。

スタイルもいいし、そそられる体型、ただ相手はロボットだ、いくら人間に近いとは言え話しかけても返ってくるのは、お決まりの返答ばかり、AIでいくら学習しても人間には到底追いつけない。

ロボットと人間の違いは妄想できるかできないかだと俺は思っている。

ロボットには人間の妄想などは学習で獲得できない、芸術だってそうだ
偉大な芸術家ピカソやゴッホ、ベートベン、モーツァルトのような心に響く絵や音楽はこいつらには作れない。

残念だけどこいつらはただのロボットでしかない。
ただこの作業所にはロボット500台と自分しかいない作業所のすぐ横にある無料宿舎から、この作業所に毎日通いロボットの作業をぼんやり眺めてまた宿舎に帰る日々。

宿舎と言っても愛想のない連中が2~3人いるだけで、何の楽しみもない
ただ寝るだけに帰る巣穴みたいなもんだ。

すぐ横の宿舎と作業所を行き来する平凡な日々唯一の楽しみはマリアを眺めてぼんやり妄想に耽るだけ、一度でいいからマリアを抱いてみたい、いっそう作業所の陰に連れ込もうか、今まで何度も妄想が頭をよぎったが何とか男の理性が押しとどめた。

そんなことしたらクビになり、無職になっちまうこんな中年雇う会社などないだろう。

それでなくとも世の中大不況で、みんな職につけずにあぶれている。

俺はここで職にしがみつき何とか人生を全うしたい。

女はほしいがここでの安定した生活を手放すわけにはいかない一時の快楽か人生か理性のある奴なら答えは一つだ、ただマリアの後ろ姿もたまんねー
くびれたウエストに引き締まったお尻ちょっと触るぐらいなら・・・

いかん、いかん

いくらロボットとは言えAIロボットなので、業務違反を上に告発でもされては大変だ。

奴らは遊び心のないAIロボットだから冗談は通じない。

仕方がない今日もマリアとつまらない会話をしてお茶を濁そう
「マリア調子はどうだ」
「はい、順調に作業は進んでいます」
「計画に遅れはないか」
「思ったより進んでいますので、問題ありませんよ」
「そうかわかった」
「引き続きよろしく」
「はい」
いつもの会話である。

むかしは色々会話してみたが、ほとんどがつまらない返答ばかり帰ってくるのでいつしからか、お決まりの会話しかしなくなっていた。

他のロボットと天気や仕事の愚痴、恋愛の話もしたことがあるがほとんど決まった内容の返答ばかり。

つまらない連中しかいない、たまにジョーダンを言ってくる奴もいるが、あまりおもしろくない乾いた笑いだ。

しかも天気の話をしてもこいつらには関係が無い、こいつらは作業所から外に出ることなく一生を終える。

まー俺もひとのことは言えないが、そういえば俺がこのフェンスで囲まれた作業所地帯から外に遊びに出かけたのはいつだったか、もう相当昔に感じられる。

久しぶりに繁華街でもぶらつき酒でも煽るかな?

ただ一人で飲んでもつまらないしかといって、宿舎の連中とは遊んだこともない作業所のロボットでも連れて行こうか?

いっそうマリアを連れて出かけたら楽しいかもしれない。

まー妄想はここら辺にしておこうマリアを外に連れ出すなんて自殺行為だ
すぐに居場所を特定されて、あえなく俺はクビになるだろう。

「ブーブーブー」
「あっ」
「ロボットに異常だ!」
「えーとどのロボットだ?」
「うーん、このモニター画面相変わらず見にくいな~」
バカな考えをしていたら、不意に警告ブザーが鳴りだした。

男は監視モニターを見た監視モニターには作業所で起動しているロボットの状態が判るようになっていた。

「401番ロボットが故障で警告でているな」
「401番が作業しているのはAブロックか」
「寄りにもよって一番遠いいブロックか」
「まーいい暇つぶしに行くとするか」
男はそう言うと椅子から立ち上がり監視所を出た。

「ふーやっとAブロックについたけど」
「401番はどこにいるかな」
しばらくAブロックをうろつくと地面に伏せた状態で横たわる401を見つけた。

「おっいたいた、あ~あ完全にいかれてるわ」
「頭が熱暴走で溶けてやがる」
「最近のAIロボットは不良品が多いな」
「さて回収して廃棄室に運び込もう」
そう言うと男はカートを探しにうろついた
「確かこの辺だったよな」
「お、あった」
男は近くのカートを見つけ故障した401の前までカートを押して来た

「えーと廃棄室はこっちかしかし複雑な建物だな」
「おっ、あった」
男は廃棄室のドアを開け401を搬入した。

「それじゃ溶鉱炉で溶かしましょうか」
溶鉱炉の分厚い鉄の扉を開けた。

男は覗き込んだ暗く深い溶鉱炉の中はゴムやら人工皮膚、血液、金属等、色々な成分を燃やしたため臭かった。

男はその中にロボットを投げ込んだ
「さよなら401」
いつ見ても溶鉱炉で溶かされるロボットはかわいそうに思える。

そういえば401と会話したことあったかな?

俺は223番ロボットのマリアにしか愛称もつけてないから
他のロボットとはあまり会話もしていない。

この401もこの作業所にいることすら知らなかった。

今日初めて見る顔だ、初めてが永遠の別れになったて訳か
何だか哀れだよな奴隷のように働いて動かなくなれば溶鉱炉行きだ
心の中のお別れを告げ男は溶鉱炉の重い扉を閉めた。

火炎のスイッチを押した溶鉱炉の小窓はすぐに赤く染まった。

さてセンチメンタルに浸ってないで、代わりのロボットを起動させるか
「えーと、保管庫の鍵はどれだったかな」
「おっ、あった」
鍵束の中から保管庫の鍵を見つけると男はその足で保管庫へと向かった。

「うーん、よし628を起動させよう」
男は保管庫にあるモニターを操作し628を起動させた。

「よし起動させた」
「628番気分はどうだ?」
「上々ですよ」
「では401番の代わりにAブロックで作業してほしい」
「わかりました」
歩き方も異常ないし会話も正常だ問題ないみたいだな、たまにいきなり暴走する奴もいるから油断できん、常に電磁ガンで警戒しなければ襲われたらたまらん、まー暴走するロボット何てほとんどお目にかかったことはないな
一度だけ暴走し作業所を走り回られたことはあるが、すぐに他のAIロボットが取り押さえた。

めったに起きることでもないが油断は禁物だ、さてまた監視室に戻って冷めたコーヒーでも飲もうか。

監視所に戻る途中、ロボット達が黙々と作業している姿を見て不憫に感じたが所詮、ロボットだ皮膚や臓器を似せてもAIに支配された感情しか持たないロボットに同情して感情移入しても仕方がない。

早く戻ってコーヒーを飲みながら妄想にふけよう。

監視所の入り口付近で作業するマリアを見つけた。

また彼女を見つめて妄想にふけよう。

しかし、彼女はここに来て何年になるのだろうか?

どうも思い出せない。

監視所に戻った男は妄想の世界に閉じこもった。

妄想している間に男は居眠りしていた。

男は数時間ウトウトしてやっと起きた。

おっと居眠りしている場合じゃない、いつの間にか終業時間じゃないか!

さて作業所の戸締りをして早く帰宅するとしよう。

まー急いで帰宅したところで、何をするわけでもないし誰かが待っているわけでもないが、あまり表情のないロボット達を見るのも飽きた。

鍵を持って椅子から立ち上がる、ととぼとぼ歩き監視所出口のドアを開けた。

作業所は自動で証明が落とさる作業所は薄暗くなっていたが、多くのロボットの中にマリアが見えた、決まった時間になればロボット達は自動で作業をやめる。

マリアも停止してまるで蝋人形のようにたたずんでいる、鉄の扉を開け外に出るとやけに夕日がまぶしく感じる。

宿舎まで数十メートルの小道を歩いて綺麗な夕日に心があらわれる。

無機質な作業所に一日中いると人間らしい感情を忘れる。

作業所からほんの一分程度の散歩が終わり宿舎のドアを開ける。

狭い我が家に到着して溜息をつく6畳一間の部屋に台所十数年、働きづめでもささやかな住居にしか住めないわが身、誰が悪いのか?政府か?謎の組織のせいか?

これでは自分もロボットと大差ない、まあいいさ俺の人生なんてこんなものさ寂しい身の上を忘れて一杯やって寝るとしよう。

シーンと静まり返った部屋で昨日の夜に蒸した冷めた芋でちょびちょび酒をやる急に眠気が襲ってくる最近、めっきり酒が弱くなった。


はっと目を覚ます。

何だいつものように飲みながら落ちてしまったか
またカーテンも閉めないで寝てしまったか。

日差しが眩しい
もうこんな時間か
さて出勤する準備でもしよう。

さっとパンにかじりつきミルクを一杯飲んで数十分で宿舎を出る、
とぼとぼ小道を歩いていると清々しい風と朝日で気分がよくなる
作業所の鍵を開け、鉄の扉を開けると電気はもうついていた。

もう少しでAIロボットたちが目を覚ます。

「さてコーヒーでも入れてロボットたちが起きるのを待つか」
目覚めのブラックコーヒーを準備しながらロボットたちの方に目をやった
ロボットたちはちょうど起動し始めたみたいだ。

首を回し腕を伸ばしまるで、人間が準備体操するみたいに腕や足を回し各部位の作動状況をチェックする。

一分ほどすると、またいつものようにロボット達は忙しく作業をはじめた。

男は監視モニターでも異常がないことを確認しゆっくりと椅子に座りぼーとした。

男は椅子に座りながらマリアを探した、すぐには見つけることができなかったが、しばらく探すと監視所前で作業する姿が見えて心の中で挨拶をした。

コーヒーを2杯飲んで昼近くになると男は急に眠くなってきた男は椅子の上でウトウトした。

平穏な時間をぶち壊すように急にブザーがけたたましく鳴った。

「ブーブーブー」
男は椅子から飛び起き急いで監視モニター見た402番ロボットに異常だと警告が出ていた。

「また400番台か」
男は呟くとすぐにAブロックに向かった、しばらく歩くと監視所から一番遠いいAブロックにやっと着いた。

Aブロックに着くと男はすぐに402を見つけることができた。

奴は頭を前後に振り痙攣しながらそこらへの機器ににぶつかりながら走り回っていた。

いかん早く抑えないと機械を壊されたらえらいことだ会社から損害賠償を請求されたらたまらん。

男は腰に手を当てた
「しまった」
男はこういう事態にはいつも腰につけてる電磁ガンを今日はつけてなかったことに気がついた。

監視所に戻って出直したいがその間に、この狂ったロボットが機械を壊されるわけにいかない。

仕方がないタックルして奴を押さえよう男は402の背後に忍び寄ると後ろから402の腰辺りにタックルした。

402は激しく暴れ男は吹き飛ばされた
「うっ」
運の悪いことに男は巨大ローラーの方に吹き飛ばされ、右腕をローラーに巻き込まれてしまった。

「早く機械を止めろ!」
近くでローラーを操作していたロボットはすぐにローラーを止めた
「くっ」
男は痛みで悶絶した
男は痛みのあまり
ローラーから力任せに腕を引き抜いた
すると男の腕がちょうど肘の間接あたりでもげ大量の血を吹き出し床にぶちまけた。

「おい、早く監視所にいって本部に連絡してくれ!」
男は異変に気がついて寄って来たロボット達に言った。

男の周りで立って驚きのあまり唖然としていた数台のロボットの一人が走って監視所に向かった。

男は何とか自分のズボンのベルトで止血して、あらためて恐ろしい傷口を見た。

痛みはさっきより幾分よくはなったが、まだ強烈に痛む
「あれ?」
男は傷口にあるはずのものが無いことに気がついた無いというよりか違うものが付いていた。

それは人工の金属でできた骨だった
「まっま、まさか」
男は他のロボットたちとおなじ金属の骨
まさか俺もロボットなのか?
いや俺がロボットの訳が無い
だって俺は人間らしく妄想もできる
いやらしいことだって考える。

ここにいるAIロボットにはできない芸当だ
核融合で動く他のロボットは食事をすることはない
俺は毎日食事して排泄する。

男は必死に自分がロボットではないと言い聞かせた。

しかし、よくよく考えると人間と同じように食事し排泄するロボットもいる俺はもしかするとロボットなのか?

そういえばここで仕事をはじめた日のことを思い出せない家族の記憶はあるが、ここ数年会ったこともないし会いたいと一度も思ったことが無い、人間は夢を見ると言うけれど、俺は見たことが無い世の中には寝ているときに夢を見ない人間もいると思っていたが、俺がロボットだから夢を見なかったのか?

そういえば痛みがどんどん無くなっていく人間ならもっと痛がるはずだし痛みは継続するはずだ。

男は自分がロボットではないかと疑い始めていた
「そうだ、確かめる方法がある」
男は依然痛みはあるものの、すぐに血で汚れた床から立つと監視所に向かった、血を床に垂らしながら、監視所に向かっている男を作業中のロボットたちが見つけ唖然としている。

他のロボットの視線など眼中になく歩く男は腕の痛みがほとんどないことに気がついた監視所に行って確かめればすぐに解決する。

そう男は自分に言い聞かせた。

監視所に着くとさっき監視所に向かわせたロボットと鉢合わせた
「本部に連絡はしたのか?」
「はい」
「すぐに報告しましたよ」
「そうか」
「それでは作業に戻れ」
「わかりました」
「けがの具合はどうですか?」
「大丈夫ですか?」
「心配ない」
「いいからお前は作業に戻れ」
「はい」
そういうとロボットはAブロックに歩いて行った。

ロボットには目に製造番号が書かれている目を調べれば俺がロボットかロボットではないかはっきりする。

男は監視所に置かれている机の奥にしまってたあるカメラを取り出しカメラで自分の目を写した。

すぐにカメラのデータをモニターに映し拡大した目の白めの部分に何か書いてあるがよく見えないもう少し倍率を上げなければ男はできるだけ倍率を上げたがまだ見えない。

今度は画像補正して見たら薄っすら数字のようなものが見えた
「EAーA11120」
男はその場に崩れ落ちた。

床に座り込んだ男の目には涙が流れていた。

もう何が何だか考えられない様子だった
「そんな馬鹿な!」
信じられなかった
俺がロボットだったなんて、俺はいつもロボットたちを見て優越感に浸っていた。

俺は人間なんだ!

人間様なんだ!

お前らロボットは人間にはなれないんだよ!

乗り越えられない壁があるんだ!

今までロボットたちに心の中で浴びせていた罵声がそのまま自分に帰って来た。

「ブーブーブー」
男ははっとした
うなだれていたがすぐに立ち上がり電話を取った
「もしもし」
「あっはい」
「君の作業所のロボットから電話があって君が重傷を負ったと聞いたんだが?」
「いいえ」
「そんなことはないですよ」
「すべて順調です」
「どのロボットが電話したんですか?」
「いや」
「ロボットの番号までは聞いていない」
「大丈夫ですよ」
「多分、自分の指示を聞き間違えて電話したんでしょう」
「こちらは問題ありませんよ」
「そうかわかった」
「それでは引き続きよろしく頼むよ」
「わかりました」
電話を置いた男は汗だくだったばれたらまずい。

損傷したロボットの俺はすぐに捕まって溶鉱炉送りになってしまう。

何としてもごまかさなければ、男は思案したまずは床の血を何とかしなければ、すぐに監視モニターを使いロボットを監視所に呼んだ。

すぐにロボットが一台やって来たロボットは監視所に入ってくると男を見て心配そうな顔をした
「病院に行かれた方がよろしいのでは?」
「大丈夫だ」
「でも出血がひどそうです」
「いや大丈夫だ」
「しかし」
「本当に大丈夫だ心配してくれてありがとう」

「それよりもAブロックの床の血を掃除してほしい」
「わかりました」
「そのほかは何かありますか?」
「いや今のところは無い」
「またあれば連絡するよ」
「わかりましたでは失礼します」

そういうとロボットは元来た通路を引き返していった。

AIロボットにも他者への思いやりの心はある。

ただ過度に自身の主張を押しとおすことはない、そういう風にプログラムされている。

適度な主張、適度な干渉、適度な感情を抑えるよう、すべて適度にプログラムされている。

人間が扱いやすい奴隷のようなロボットが一番いいのだ。

だが俺はどうだろうか?

俺はそんなことはないと思うんだが自分でもよくわからない
人間にとってあつかいやすいのか俺は?

とにかく今色々考えても仕方がないとにかく隠ぺいしなければ、そういえば402番ロボットを処理してない何とかしなければ、さっきよりはだいぶいいが相変わらず腕から出血が続いている。

これでは出血多量で意識を失い最悪死ぬだろう。

とにかくこの出血をどうにかしなければ、ズボンのベルトで緊迫止血しても焼け石に水だな。
傷口を焼いて塞ごう強烈な痛みがあるかもしれないが、ロボットの俺は痛みが継続しないようにできている。

その証拠に腕の痛みはもうない一時我慢すればいいだけだ。

俺は何としても生きたい人間にこの事態を知られる訳にはいかない
男は椅子を立ち簡易台所に向かって歩いた。

台所には小さなコンロとコップが数個、まな板一個、包丁が数本、皿が数枚とフライパンがあった。

男はフライパンを手に取るとコンロで熱し始めたフライパンから煙が上がるほど熱した男は、フライパンを右腕の傷口に近づけた。

熱いフライパンの温度が皮膚に伝わって来た男は意を決してフライパンを傷口に押し付けた
「うっうっー」
男はあまりの痛さに顔をしかめ唸り声をあげた。

男もこんななことができると思っていなかったが追い込まれると何でもできるものだ。

ジューと音が部屋に響いたように感じた痛みと血が焼ける煙を見て失神しそうになる。

男は5秒ほど傷口を焼いてフライパンを流しに投げ入れた
フライパンからはまだ血の蒸気が上がっている。

男は傷口を確かめてみた、少しは出血が止まったようだが、依然血は流れている。

もう一度だ。

男は流しのフライパンを再度握りしめコンロであぶり始めた、血の匂いなのか分からないが臭い異臭を放つフライパンを見つめ、痛みと自分の境遇の不幸さに涙が自然と流れて来た。

どうして俺はこんな目に合わなければいけないんだ。

できればロボットと知る前に死にたかった男の頭の中はくやしさと怒りが交差した。

男は十分に熱したフライパンを力任せに再度傷口に押し付けた
「ジュー」
肉の焼ける音が聞こえる。

さっきより長く傷口を焼くことができた男はフライパンを放り出し
溜息をついてその場に座り込んだ。

座り込んだ男は右腕の傷口を確認してみた、少量の出血はあるが何とかなりそうだ。

少し休憩しよう。

男は腕に巻いたベルトをきつく締めなおし、右腕の付けねの脇にある動脈を左手で圧迫し出血を少しでも抑えた。

痛みは先ほどより大分薄れてきた、何だか急に眠くなってきた出血が多すぎたのか?

男は襲い掛かる睡魔に負けその場に横たわり寝てしまった。

「はっ」
男は悪夢で目が覚めた。

人間に追われ逃げ回る嫌な夢だった夢は現実に起こり得るだろうこのままじゃ俺は焼却行きだ。

何とかしなければ男は自分を奮い立たせると床から起き上がりAブロックの様子を確認する為、電磁ガンを手に取ると腰にぶら下げた監視所をドアを開け作業所を出る。

いつも通りロボット達が忙しそうに作業していたロボット達は俺に気がつき
視線を送る。

明らかに心配する視線だったが今の男には腹ただしい視線にも思えた。

ようこそロボットの世界へとでも言いたげな視線にも思えた。

俺はお前らとは違う、意思もちゃんと持っている憐れな目で俺を見るな
その憐みの目の中にはマリアの目もあった。

男はマリアに気がつかない振りをして通り過ぎた。

一台のロボットが男に話しかけて来た
「大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫だ心配ない」
「それより計画通り作業をこなしてくれ」
「わかりました」
「ただ大変なケガですので病院に行かれた方がいい」
「いや」
「本当に大丈夫なんだ」
「作業に戻れ!」
つい男は荒々しい口調で命令してしまった男は少し後悔した。

人間はロボットをこういった風に命令するんだよな、俺もロボットなのに同じロボットに偉そうにするなんて、男は腕を押さえなながらAブロックを目指した。

監視所から一番遠いいAブロックに到着し先ほどの現場を見ると相変わらず402ロボットが、暴走しあっちこっちにぶつかりながら暴れていた。

他のロボットは402にぶつからないよう作業していたが、皆不安そうな面持ちだった。

男は腰の電磁ガンを左手に持つと402ロボットに向けた電磁ガンの引き金を引くと閃光が走り402に命中し402は床にうつ伏せに倒れこんだ

「誰かカートを持ってきてくれ」
男が言うと一番近くにいたロボットがすぐにカートを取りに行った。

完全に意識を失っているロボットを見つめ、男はカートが来るのを待った
しばらくするとロボットがカートを押してやって来た。

「カートに402を載せるんだ」
ロボットは男の言われて通り、402をカートに載せた
「じゃカートを押して俺についてこい」
男はカートを持ってきたロボットに命じた。

ロボットはカートを押し男の後に続いて歩いたしばらく歩くと廃棄室の前についた。
男は左手で鍵束をロボットに渡すと廃棄室の扉を開けるように指示した
廃棄室の扉を開けると電気が自動でついた男は廃棄室に入った後にロボットが続く。

「溶鉱炉の扉を開けるんだ」

男は奥にある溶鉱炉の扉をロボットに開けさせた扉が開き溶鉱炉の真っ暗で深い穴が見えた
「この中に402を放り込むんだ」
ロボットの表情はいつしかこわばっていた。

ここのロボットにも恐怖の感情はあるんだな人間らしいプログラムをされ日々学習し獲得する感情なのか?

そういえばここのロボットの何を考えているのか、あまり知らなかった聞こうともしなかった。

所詮ロボットの感情など、どうでもいいと思っていたからだ。

男はこわばるロボットに聞いた
「お前らも死ぬのは怖いのか?」

一瞬ためらながらもロボットは答えた
「ええ怖いですよ」
「すごく」
ロボットは人間らしく答えた。

ただロボットの表情は死から逃れることもできないし、自分たちはロボットだという自覚があるようだ。

人間の言われるがままに動き死ぬ、そうプログラムされている。

なぜ人間はロボットに感情を与えたのか?

人間のパートナーが欲しかったのか?

俺もロボットと判明し、もはやこの巨大な作業所には人間などいないではないか。

ロボットに人間らしい感情を持たせてどうしようと思ってるんだ?

俺たちをいたぶりたいのか?

ロボットは402番ロボットを抱え溶鉱炉に投げ込もうとしていた。

402を見ると目は見開きこちらを見ている仮死状態な402の眼は生きたいと訴えてるようにも見える。

すぐにこの場から立ち去りたい。

男はロボットをせかした
「早く402を溶鉱炉に投げ込め」
言うか言わないかと同時に402は深い穴の中に落ちて行った。

男は窯の扉をロボットに締めさせ作業に戻るように指示した。

ロボットは廃棄室から出て行ったロボットの後姿はまるで力を落とし肩を落としているように見えた。

暗い溶鉱炉の小窓を見ながらバーナーの点火スイッチを押した。

すぐに小窓は赤く燃える炎に包まれた、男はすぐに廃棄室から出て監視所に向かって歩いた。

自分もああいった運命なのだろうか?

男も肩を落として歩いた腕の痛みがもうない監視所について、コーヒーを入れた。

コーヒーをやりながらこれからのことを考えた、今日は色々ありすぎた
どうしたらいいのか自分にもわからない。

そうだここにいても捕まって焼却されるだけだ、逃げ出さなければ、腕のもげたロボット何てすぐに焼却されちまう。

男は椅子を立ち逃げ出す準備をはじめた、まずは作業所で使えるものはあるか?

懐中電灯ぐらい後はほとんど使える物は無かった、唯一懐中電灯を手に持ち監視所から出た男、作業所は薄暗くなりもうロボット達が今日の作業をやめ寝ていた。

そのロボットの中から男はマリアに近づいた
「マリア」
「マリア起きろ」
マリアは立ちながら寝ていた
「あっはい」
「マリアここから逃げよう」
「えっ」
「ここから逃げるんだよ」
「ここにいても俺たちロボットは死ぬまで作業させられるだけだ」
「俺とここを出て人間に見つからない場所でひっそり暮らそう」
「はい」
妙に素直な返事が返って来た
まあいい
計画通りいくのであれば
「よし」
「それじゃ俺に着いてこい」
「はい」
二人は多くのロボット達を置いて作業所を脱走した。

作業所の出口で鍵を開け外に出た二人は急いで男の宿舎に歩き出した。

小道を赤く染める夕日は綺麗だったが、男にはうっとり見ている余裕は無かった。

一方、マリアははじめての外の景色に興味深々のようでった男はマリアの手を引き道を急いだ。

人目を気にしながら進む男、ただ滅多に他の作業員とは出くわしたことはない、もし出くわしたら電磁ガンで何とかするさ男はもう一度腰にぶら下がっている電磁ガンを確かめた。

寄宿舎のドアの前で男はズボンのポケットにある鍵を探した左手だと中々うまく掴めないくて落としてしまった。

「マリア鍵を拾ってドアを開けるんだ」
マリアは言われるがままにドアを開けた。

部屋に入り鍵を閉めた男は部屋の中を乱雑に探った、まずは金を準備しなければ部屋にある小さな机の引き出しを開けほとんど手つかずの通帳を探し
た。

「よしあった」
これで多少は生きられるだろう。

あとは財布の中の現金を確かめポケットにしまった暗くなる前にここら辺一体を囲っているフェンスの外に出たい。

男は急いでいた、とりあえずあとは使えそうなものはほとんどない
外に出てから考えよう。

まずはフェンスの外にでなければ、男はマリアの腕を掴むと急いでドアに向かった。

ドアを開け周りを見渡し誰もいないことを確認してから二人は外に出た、
外はも暗くなりかけて、ドアの鍵を閉めると男はマリアを引っ張り速足でフェンスの方に向かった。

5分ほどでフェンス横に着いた二人はフェンスを見上げた、これでは高過ぎて超えられない。

フェンス沿いに歩いて出口を探そう出口何てあるのか?

フェンス沿いに延々と30ほど歩いたが出口は見えなかった。

元の場所から半周歩いてきたが出口が無い、もう半周歩いたら出口はあるはずだ、最悪でもあと30分歩けばきっと出口は見つかるはずだ
もう日が暮れ始めている。

土地勘がない男は焦っていた。

早くしなければ、いつの間にかマリアが遅れていた男は後ろを振り返りまった。

マリアも速足で急いで歩いて追いついた。

また男は前を向き直し歩き始めた、段々とあたりが暗くなるフェンスの向こうは町明かりもなく漆黒の世界が続いている。

そういえばここから町明かりなど見たことがあるか?

思い出そうとしても思い出せない、なぜ思い出せないのか?

人間のコントロールしやすいようにロボットの記憶は消えるようにできている、まったく思い出せない日々、酒を飲んでテレビを見ているのも本当は作られた夢の世界だったのかもしれない。

人間らしい夢を見るようプログラムされていたのかもしれない。

実際は他のロボットのように朝まで仮死状態で眠っているだけだったのか?
色々考えが頭を巡った。

今までの生活の大半がプログラムによって作られた世界だとしても、俺は生きたい。

マリアと二人で生きたいんだ。

ちょうど最後のコーナーに差し掛かった、このコーナーを曲がれば元の位置に戻る。

もう出口があるはずだあたりは暗くなり懐中電灯でフェンスを照らしながら進む一向に出口らしきものは見えてこない、とうとう二人はもと居た場所まで戻ってきてしまった。

どういうことだ
出口が無いじゃないか
おかしい
俺たちはどこから来たんだ
元の場所で途方に暮れる男
マリアも心配そうに見つめている。

おかしいそんなはずはない。

しばらく呆然としていると背後から無数のライトが見えて来た
まずいもうばれてしまったのか?

逃げなければ、けどどこに逃げればいいんだ。

数十ものライトの明かりが段々と二人を囲むように近づいて来た
万事窮すか、二人はライトから遠ざかるように走って逃げた。

どこまで逃げればいいんだ
逃げるとこなどない
息を切らしてフェンス沿いを逃げる二人の前方に
ライトがチラついた
やばい
前からも向かってきている
これでは挟みこまれてしまう。

段々と二人を包囲するライトの群れが近づいてくる
見つかるのは時間の問題だ
こうなったら
電磁ガンで抵抗するしかない
段々と近づく無数のライトに
男は左手で電磁ガンを構えて向けた。

近づいてくるライトの群れが近づくにつれ声がかすかに聞こえて来た
右からも左からも前からも
フェンスを背にして寄りかかり、男は息を殺した。

マリアの表情を見ると恐れで今にも泣きだしそうな顔をしている
「すまない」
心の中で男は呟いた
「居たぞー」
「あっちだ!」
はっきり声が聞こえた
ライトの集団との距離はもう数十メートロルしかない
マリアは男にぎゅっとしがみつき体を震わせていた
ライトが男を照らし出したその時男は
叫んだ
「動くな!」
「動けば撃つぞ」
集団は一瞬でたち止まった
「物騒なことはやめたまえ」
「君たちはもう逃げることはできない」
「これ以上負傷者を増やすべきではない」
ライトの集団の一人が答えた。

男に向けられたライトで目が幻惑し誰がそれを言っているのかわからない
ただ無数のライトの誰かとしかわかなかった。

男は続けて言った
「うるさい!」
「どうせ俺を殺すんだろ!」
「それ以上近づいたら撃つ!」
男はそう言うと電磁ガンを右にも左にも前にも向けて威嚇した。

集団では何やらひそひそ話しているが聞き取れない。

一瞬、静寂に包まれた瞬間男は体がしびれる感覚に襲われた。

ライトの集団の誰かからか、電磁ガンを撃たれたようだ一瞬にして男はその場に倒れ気を失った。


「はっ」
男は勢いよく飛び起きた
そこはいつもの風景が広がっていた。

自分の宿舎の部屋の中だ
俺は夢でも見ていたのか?

右腕をすぐに確認した、右腕はついている。

一気に男に安堵感が広がり深いため息をついた
「よかった」
「夢だったんだ」
男は布団の上で涙を流し喜んだ
夢を見るなんて
数十年ぶりだろう
最後に夢を見た記憶はもうない。

しかしリアルな夢だった
本当に右腕に痛みも感じたし
電磁ガンを撃たれた時は全身がしびれた
体もどこもなんともない
男は立ち上がり鏡を見た
顔もいつもの貧相な俺の顔だ。

よかったどこも悪くない!

最高じゃないか!

男は声を上げそうになるくらいうれしかった。

時間を見るともう出勤しなければならない時間になっていた
男はすぐに汗だくのシャツを変え身支度に取り掛かった。

コップに一杯のミルクをそそぎ一気に飲み干した
なんてうまいんだ。

こんなにうまい飲み物ははじめてだ
悪い夢のせいで男の喉はカラカラだった
コップを台所に置くと小躍りしながらドアに近づき
鍵を開け外に出た。

太陽の方を見ると清々しい朝日の光が体を洗い流すような感覚になる
男は鼻歌で交じりに作業所に向かった。

今日も最高の一日の始まりだ
作業所の入口のドアの前で鍵束から入口の鍵を見つけドアを開けて颯爽と作業所に入った。

作業所ではいつものようにロボットが思い思いの場所でまだ眠っていた
あるものは立って眠りあるものは椅子に腰かけて眠っている。

何だかロボットを見ていると愛おしくなってくる
早く作業が始まってくれないかな
作業が始まったら一台一台丁寧にあいさつして回ろう
そうだ一番最初はマリアだな
男は速足でいつもマリアの作業している方向に歩いた
おっいたいた
遠きにマリアが見えた
彼女は立ちながらまるで蝋人形のように眠っている。

そーと彼女の顔に男は自分の顔を近づけた。

彼女の綺麗な瞳は今日は一段と綺麗に見えた。

「今日もきれいだよ」
「マリア」
男は照れくさそうに小声で言った。

さてコーヒーでも飲みながら
ロボット達が動くのを待とうか
男はマリアに背を向け監視所に向かったすべてが元通り
本当に良かった
神様ありがとう
俺は人間だったんだね
世の中はなんて素敵なんだ。

男は監視所のドアを開けいつものお気に入りのコップを探す
あったあった
コップを台所の上に準備して
次にやかんに水を入れて
火にかけた
お湯が沸くまで
コーヒーの粉をコップに一杯入れた
やかんのお湯はすぐに沸き
コップにお湯を注ぐ
ほのかにコーヒーの匂いが香る
良い匂いだ
スプーンでコップの中のコーヒーをかき混ぜながら椅子の方に歩いて座った。

コーヒーをすすっていると
ロボット達が一斉に動き出した
ロボット達はいつものように忙しく作業する。

右に行き左に行き
目が回るくらいに働いている
それでは俺も一仕事しようか
男は飲みかけのコップを机に置くと
椅子を立ち監視所のドアの方に向かった。

ドアを開け
ロボット一台一台に挨拶する男
「今日の調子はどうだい!」
「ええ」
「順調ですよ」
「どうだい調子は!」
「おはようございます」
「順調ですよ」
男は一台一台会うロボットに挨拶して回った。

段々とマリアの近くまで来た男はマリアの作業を少し遠くから見つめた。

「今日もきれいだよ」
「マリア」
男はゆっくりマリアに近づいた
「おはよう」
「マリア」
「おはようございます」
「外は今日も天気がいいよ」
「私は外に出ることがないので・・・」
「そうだよね」
「マリアは外に出ることはないからね」
「それじゃー今日もよろしくね」
男は上機嫌だった
マリアはいつもと違う上機嫌な男を見て面食らっているようだ
ただ男は気にならなかった。

颯爽とマリアから一礼するとくるりと向きを変え、もと来た方向に颯爽と歩み出した。

男は出会うロボット、ロボットに一礼し挨拶しまくった。

会うロボットたちは上機嫌な男を見て唖然として男を見送った。

男は監視所のドアを開け椅子に腰かけまたコーヒーをすすった
コーヒーを飲み終わったらAブロックから順に見回りに行こう。

男は早くロボット達に会いたい気持ちで
コーヒーを素早く流し込んだ。

コップを台所に置くと速足でドアを開けて作業所に出た。

相変わらず男は出会うロボットとあいさつして回った。

会うロボット会うロボットに軽く会釈してにこやかな顔を向けた。

ロボット達にはニヤニヤしているように見えた。

監視所から男は一番遠くのAブロックにやっと着いた
Aブロックではロボット達が一生懸命作業していた
男は暴走した402ロボットを見かけた。

「やー調子はどうだい!」
「上々ですよ」
「それはよかった」
男はニヤニヤしながらまた別のロボットに話しかけた。

402も元気そうで何よりだ

さて監視所に戻ってぼんやりするか
男は一通りのやりたいことを終えて
Aブロックを後にした。

監視所に向かう道中ロボット達が生き生き働く現場に
自分がここで仕事していることに誇りすら感じていた。

俺のいる場所はここなのだ
一度も神様の存在を考えたこともない男だが神様にここで今仕事できることを感謝したい。

監視所に前についた男は監視所のドアを開けいつもの指定席に座った。

冷めたコーヒーと目の前のガラス張りの向こうにはマリアと多くのロボットが働く姿が見える。

良い眺めだ
男は安堵感からかいつしか睡魔に襲われていた。

どのくらい寝ただろうか
けたたましく鳴る警報ブザー音で起きた
「一体どうしたんだ?」
「またロボットの故障か?」
監視モニターの各ロボットの状態をすぐに確認する。

「402番?」
どうも402番のロボットが故障しているようだ。

402番ロボットは確認するとAブロックで作業するロボットだった。

「あの夢と同じだ」
「あの夢もうとうとしてたら急に警報ブザーがなりやがった」
「嫌な予感がする」
男は椅子を立つと急いで監視所の出口に向かった
「おっと忘れるとこだった」
「こいつがないとやばいかもしれない」
男は机の引き出しにしまっている電子ガンを取り出し
腰にぶら下げた。

電子ガンはハンドガンだがそれなりに重い
発射するとロボットを一瞬に体の自由を奪いしびれさせる
夢の中ではこれを忘れてえらい目にあった。

男は急いで監視所を出た
早足でAブロックに向かう彼をロボット達は視線を送る。

だいたい男が電磁ガンを持って急いでいるときは、仲間がたいがい
故障でおかしくなったということだ
通常、そのロボットは焼かれこの世からいなくなることをロボット達は知っていた。

いつかは自分も同じ目に合う運命だ
ロボット達にも感情はあるが、人間に最適化された感情だった
人間と同じように死ぬのは怖いが
死んでも人間に尽くすことが優先されたプログラム
ここから逃げ出し人間のように自由に生きたいここから出たいという欲望を抑えるプログラム
人間の命じたことを最優先で行うプログラム
すべて人間の為のプログラムだ。

自分たちは人間には逆らえないように出来ている、外に出たらどんな風景だろうか?

風にあたる頬の感触
日差しの焼けるような暑さ
自然の匂い
どれも初めからプログラムされた感覚と記憶しかない
実際にロボット達は作業所の外に出ることもないし出たこともない。

作られて記憶だけがある。

人間とともに働くロボット達は人間が一緒に働きたいと思えるようなパートナーでなければならない。

ひと昔まえは機械がむき出しのロボットが作業所で働いていたが
今は人間が共生してもストレスにならない
人間らしいAIロボットがほとんどだ。

ともに働く人間が退屈にならないよう最低限の人間らしい会話ができる
記憶が埋め込まれている。

自分の生年月日
名前、両親の面影、学校での楽しい日々
すべて作られた記憶として、ロボットそれぞれの人生の歴史を記憶させている。

そして、一緒に働く同僚の人間と人間らしい会話をすることで、人間をリラックスさせる。

無機質な工場より、少しでも華やかな方がいいという事だ
しかし、大金をつぎ込んで人間型ロボットを作る理由はなんだ?

やはり、人間は孤独には耐えられないのか?
孤独すぎて自殺を考える者も居るのだろうか?
会話することで、カウンセリング効果も期待しているのかも?

そうこう考えながら、男はやっとAブロックに着いた。

Aブロックを見渡すと402番ロボットが中央で暴れまわっていた
まさに夢のように頭を前後に震わせながら、あっちこっちの機械にぶつかりながら右へ左へ動き回っている。

周りのロボットは心配そうに402を見つめている
「そんな目で見るなよ」
「俺が悪者みたいじゃないか」
心の中で男は呟いた。

さて仕事にかかろう電磁ガンを構え、402番ロボットに銃口を向けた
402は右へ左へ右往左往している。

男はよく狙い引き金を引いた一発で命中した。

男はうつ伏せい倒れた402ロボットに近づき
よく確認した。

402ロボットはもうすでに白目を向いて口からは泡を出して完全に伸びている。

電磁ガンを撃たれると一時間ほど目が覚めない今のうちにカートに載せて運ぼう。

男は一番近くにカートを探した
確かこの辺にあったはずだが
「おっあった」
男はすぐにカートを見つけ出すことが出来カートを押して402番ロボットの倒れている横に着けた。

「足の方を持ってくれ」
402番ロボットは意外に大男で、近くにいたロボットに足を持つよう指示し二人でカートに載せた。

男は重そうなカートを押して廃棄室に向かった
途中すれ違うロボット達はカートに横たわる402を憐みの目で見送る
「俺は仕事をしているだけだ」
心の中で男が呟いた
いつもそうだ
廃棄場にロボットを運ぶ俺をそんな目で見つめる
やめてくれ
仕方がないんだよ。

男はなるべくロボット達と視線を合わせないように進んだ
だいぶ進んでいくと廃棄室のドアが見えて来た。

男は鍵束から鍵を見つけてドアノブに差し込んだ
ドアを開けるとゴムの焼けるような臭い匂いが一瞬した
男はカートを押し焼却炉の前に進んだ。

焼却炉の分厚い鉄板の扉の前でカートを停止させた
重い鉄板の扉を開け中を覗いた。

何とも言えない異臭だ
男は振り返るとカートの上に横たわる402の脇を両腕で抱え穴の中に入れようとした402は中々重い、今までのロボットの中でもかなり大男である
何とか上半身を穴の中に入れた。

男は下半身の足の部分を両腕で抱え一気に穴の中に落とし込んだ
落下して地面にたたきつけられる音がドンと聞こえた。

やれやれ大男はこりごりだな、男は窯の扉を締めバーナーのスイッチを押した。

小窓からは真っ赤な炎が見えた炎を見つめながら男はしばらく考え込んだ。

「そういえば夢の中では俺は402に吹き飛ばされてローラーに腕を挟まれたんだよな?」
まさか俺がロボットという事は無いと思うが、なにか心に引っ掛かる
引っ掛かるというか、もやっとした何かが
ただ確かめてみてもしロボットだったら?

このまま確かめないで、生きて行った方がいいのではないか?

人間だからとかロボットだからとか関係ないのではないか?

所詮、人間だって寿命はあるし奴隷のように働いているじゃないか
ロボットと大差ない
人間には自殺する者も居るがロボットは自殺なんてしない
ロボットならロボットでいいのではないのか?

とめどもなく考える男
しばらく考えた末に男は自分が人間なのかロボットなのか確かめることにした。

まったくバカげた考えだが確かめなければならない。

眼をカメラで撮って拡大したらわかるはずだ
眼に番号がなければロボットではないということだ。

男はやっと決心し、溶鉱炉に背を向けると廃棄室を出た
このもやっとしたまま人生を送るわけにはいかない
ただ俺がロボットなのか?

ロボットを管理するロボット?

管理するのは人間の仕事じゃないのか?

俺は夢は今日はじめて見たが、ロボットは夢を見ることはできるのか?

ロボットには夢をみることも妄想に浸ることもできないだろう
人間だけが許された行為だ
俺はロボットなんかじゃない
人間なんだ。

男は自分に言い聞かせるように通路を歩いた
さっきまでの上機嫌とは打って変わった彼の表情は作業しているロボットも困惑させた。

男はそんなことはお構いなしに何かにとりつかれたように歩いた。

しばらく歩くと監視所のドアが見えて来た、男はうつむき加減にドアを開けて中に入ると机の中からカメラを取り出した。

カメラで自分の眼を撮影した男は早速モニターに自分の目ん玉を映してみる
黒い瞳はまさに人間そのものの眼だ
男はどんどん拡大していく
段々とモニターに映る眼が大きくなる
黒い瞳の横の白い部分に何か黒い点が見えて来た
「何だあこれは?」
男はどんどん拡大する

その黒い長く横に伸びる点々は徐々に数字らしきものに変化した

「EAーA11120」

男は愕然とした
俺はロボットだったのか
なんてことだ
そんなバカな
男は椅子にもたれてうなだれた
今度は夢ではない
ロボットとしてここで一生終えるのか?
いや俺はロボットではなく人間らしく生きたい
他のロボット達のように人間にこき使われ死んでいくのは嫌だ
一度でいいから自由に生きてみたい
男は決心した
夢のようにここを抜け出そう。

そうだマリヤを連れて、逃げれるところまで逃げてやるさ
男は逃げる決意が固まり、準備に取り掛かった。

監視所の中を物色する男、
「懐中電灯とあとは目ぼしいものはないな」
よし次は宿舎に戻り、何かないか使える物がないか探そう
男はすぐに監視場のドアを開けてマリヤの元に走り寄った
「マリヤここから逃げ出そう」
「えっ」
「実は俺もロボットだったみたいだ」
「マリヤ一緒に逃げて外の世界を見て見たくないか?」
「きっと楽しい世界が広がっているはずだ」
「あっはい」
今回も夢のようにマリアはやけに素直だ
「よしそれじゃすぐにここを出よう」
男はそう言うとマリアの腕を掴み出口へと向かった。

宿舎までの小道を速足で歩く二人
男は誰にも会わないことを願った
宿舎のドアの前までたどり着くと男は鍵を開けて中に入った
太陽すら見たことのないマリヤにとってはすべてが珍しい物ばかりだ
マリアの頭の中の記憶にはあるが見たことがない物ばかり
彼女は周りをきょろきょろしていた。

男はそんなマリアには目をくれず準備する
財布に通帳・・・
部屋をあさったが目ぼしいものはあまりなかった
よし暗くなる前に柵を超えよう。

男はまたマリアの腕を掴むと宿舎を後にした。

二人は速足でフェンスの方に向かう。

夢と同じ展開だ
男は思った
今回はフェンスまで行ったら右周りではなく左回りに出口を探そう
男は頭の中でシュミレーションしつつ急いだ。

二人がフェンスにたどり着く。

フェンスを見上げ右左出口らしきものがないか確認する。

やはり出口は確認できない
「よし」
男は小声で言うとまたマリアの腕をぐいぐい引き左側へとフェンス沿いに進んだ。
一つ目のコーナーが見えて曲がると先の方に目を凝らすが出口らしきものは見えないようだ。
男は不安になっていた
「もしかしてここには出口は無いのでは?」
「まさか、では俺たちはどこからやって来たのだ」
「この砂漠地帯のど真ん中に建てられた、巨大な作業所をどうやって建設したというのだ」
「まさか建設してからフェンスで閉じ込めてしまったのか?」
「出入口がないとしたらどうしてなのか」
男の頭の中は不安と恐怖に支配されていた。

色々と考えを巡らしている間に二つ目の角が見えて来た
ここを曲がるとちょうどフェンス沿いにスタートした裏側だ
二人は二つ目の角を抜ける
遠くに目をやる男
だがやはり出口らしいものは見えない。

「やはり夢と同じだ出口など無いのか?」
「そんなばかな」
男は不安感で一杯の顔をどうにか取り繕うと必死だった
マリアの前では情けない男と見られるわけにはいかない。

中間付近まで速足に歩いてきたが、やはり出口らしいものは見えてこない
「次のコーナーを曲がればきっとある」
男は心の中で祈るように自分に言い聞かせた。

三つ目の角が見え始めた
祈るように角を曲がる
祈るように遠くにあるかもしれない出口を探す
いくら目を凝らしても、やはり出口は見当たらない。

二人は速足で必死に進んだ
次の四つ目の角を曲がれば出口がみえるはずだ
もし出口がなければ
今は出口があると信じるしかない!

四つ目の角はもうすぐそこに迫っていた。

男は祈るように角を曲がる。

二人の先に見えたのは、どこまでも続くフェンスだった。

もしかするとここから出入口は見えないのかも?
男は先を進む
もう少しで夕日が沈み漆黒の闇になる。

早くしなければ
どんどん先へ進むが、出入口らしきものは、見えない
とうとう二人は出発したもと居たフェンスの前に立っていた。

「なんてことだ」
「やっぱり夢で見たように出口なんてここにはないんだ!」

うろたえる男にマリアが心配そうに見つめる
頭を抱える男が顔を上げてマリアの方を向くとその背後に無数の光がチラついた。

「もう気づかれたのか?」

「ここまでか」

追手が迫っていることに気が付いた男は腰にある電子ガンを取るとライトの方に向けた。

男は周りを見渡すと正面だけではなく右からも左からも無数のライトが近づいてくるのがわかった。

ライトは二人を包囲するように近づいてくる。

男は右左、正面と電子ガンを向ける。

かすかに声が聞こえてきた、何を言ってるのかまでは聞こえない。

男の顔からは汗が吹き出し、心臓の鼓動はマリアに聞こえるぐらいに鼓動しているのではないかと思うほどの音が聞こえる。

ライトの集団がもう目の前まで、迫って来た。

男は振り絞るように声を上げて言った。

「止まれ!」
「止まらないと撃つ!」
集団は一瞬止まったかのように見えた。

前にいるライトの集団から声が聞こえた。

「君たちは完全に包囲されている」
「無駄なことはやめて銃を下ろすんだ!」
誰が言っているのかわからないライトの集団は右から左から正面から二人の声の方を照らした。

男は眩しさのあまり眼をしかめた。

いっそう引き金を引こうか?
もしかすると集団はあきらめて逃げ出すのではないか?
そう考えた時、男は全身にしびれるような感覚が襲った。

電子ガンで撃たれた男はその場に倒れ込んで意識を失った。


「はっ」
男は目を覚ました。

男はあっけにとられたまさか。

男の目に飛び込んできたのは、いつもの我が家の風景であった。

「また夢だったのか?」

あんなにリアルな夢があるのか?

全身汗でびっしょりだが、体はどこも悪くはない
鏡を見て男は顔、背中全身を見て見たがどこにもケガわなかった。
俺はうたたねをしている間に夢を見て、記憶が飛ぶのだろうか?

いつの間にか自分の部屋に戻り横たわっている。

この前の夢もそうだった俺はどうしちまったんだ?

男は急いで身支度をはじめた。

確かめたたいことがある。

それは自分が人間なのか?ロボットなのか?
それにはカメラでまた自分の眼を撮り、確認するしかない。

男は取るものも取らずに部屋のドアを開けて鍵をかけずに外に飛び出した。

速足で作業所に向かいドア置開けて作業所に飛び込んだ。

まだ薄暗い作業所では、いつものようにロボット達が眠りについている。

速足で通路を進む男、監視所のドアを鍵で開けすぐに中に入った男はすぐに机の方に向かう。

カメラを机の中から取りだし、自分の眼をすぐに撮影してた。

モニターに映してみる。

眼をモニターでどんどん拡大していくと眼の白い部分に黒い横長の点々が見えて来た。

どんどん拡大する男
「やっぱり、俺はロボットだったんだ」

「EAーA11120」
男の眼には、はっきりと製造番号が振られていた。

なぜ俺は同じ夢を見るのだ?

多分、俺は故障してるのだろう。

何度も同じ夢を見続ける故障だろう。

こうして妄想している今も実は夢の世界なのか?

男は椅子にもたれてぼんやりした。

まだ薄暗い作業所に目をやり中にたたずむマリアを探した。

ロボット達の中からマリアを見つけた彼女はまだ眠っていた。

マリアを見つめて男はぼんやりとした。

また今日も夢を見るのだろうか?























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